第二十七話 王子様にも種類がありますよね
モグモグ。
今日も個室で昼食です。
今日のメニューはあんかけ焼きそばですよ。
デザートに桃のゼリーがでました。
生徒会の全員にですけど。
今日は放課後、7月に行われる他校の生徒会との親睦会その名も「納涼祭」のために会議があります。
今年は泉都門学園が行う年だそうです。
「親睦会とは言ってもほとんどお祭りだよ。屋台が出るからね」
「屋台ですか」
「そう、毎年楽しみなんだ。焼きそばとかチョコバナナとか、普段は食べれないし」
はいはい。
庶民とは違うんですよね。
でも、屋台で食べる焼きそばはまた違いますよね。
「またシェフとか呼ぶのかと思ってました」
「んー、さすがに公立の子もくるし。あまり堅苦しくない方が良いでしょう。和気藹々って感じにしたいし、あまりかけ離れた感じでも来年当番の学校が困るでしょ」
確かに泉都門学園と比べられるのは辛いかもしれません。
「校庭やグラウンドを使う学校もあるが、我が泉都門学園はホールを使うことになっている。色々と便利だしな」
如月会長がコーヒーを飲みながら言いました。
確かに水回りもありますし、ホールのドアを開け放せば開放感もありますね。
さすがに火を使う屋台は外になります。
新入生歓迎会の時も、バーベキューは外で焼かれていました。
色んな行事の為なのか、そういう場所もきちんとあるんです。
上靴で行けるようになっているんですよ。
「近隣の高校の生徒会ですか」
「うん。前に陽向ちゃんが言ってた女子校の生徒会も来ると思うよ」
なるほど。
それならば、後で聞いておいた方が良さそうですね。
「例の友達も生徒会にいるんでしょ?」
「はい」
例の応援団のお友達です。
「真琴が騎士なら、彼女は王子様ってとこでしょうか」
「王子様?」
「はい、庶民ですけどね。黙って立ってれば王子様です」
そう、何も言わずに微笑んでいる姿は素敵なのです。
「そういう子って陽向ちゃんはあまり近づかないんじゃ?」
「まぁ、はっきり言ってしまえばそうですけど」
「向こうから声をかけられたの?」
「ええ。『君みたいなお嬢さんとペアが組めるなんて嬉しいな』って言われまして。単なる科学の実験のペアですよ?」
「中学生だよな?」
「そうですよ如月会長。キラキラを纏いながら言われて一気に寒気が走りました。呆れた顔をしていたら、何だか気に入られたみたいで」
話してみると気さくも気さく。気さくどころか砕けすぎな人でした。
「周りから『様』付きで呼ばれてましたし、人気がありましたけどね。私からしてみれば、エロ王子です」
ぶっと飲み物を吹きだした如月会長に更科先輩がハンカチを渡して、一条先輩が仕方なさそうにテーブルを拭いています。
「とてもここじゃ言えないことを、たくさん聞かされましたねぇ。まぁそういうことを平気で言える人が私くらいしかいなかったのでしょう」
「…よく友達でいられたね」
「んー。そういうこと以外ではとっても良い友達なんですよ。ちょっと、真由ちゃんは近づけたくない感じではありますけど」
真由ちゃんがビクッと肩を震わせました。
大丈夫ですよ。守りますからね。
「あぁ、ええとそうじゃなくて。嫌がらせとかなかったの?」
「あぁ。そういえば彼女のことで嫌がらせされたことは一度もありませんでしたね」
首を傾げていると、東雲先輩がニッコリと笑いました。
「会うのが楽しみだね」
「あー。東雲先輩だと敵視されるかもしれません」
「へぇ?」
「王子様系の人は敵視する傾向がありますよ」
「僕が王子様…ねぇ?」
「え、だって白馬とか似合いそうじゃありません?」
同意を求めて如月会長を始め、他の役員を見ると一条先輩が口を押さえて笑い出しました。
「は、白馬の王子様っ」
「一条…」
「くっ、似合いすぎっ。今度乗ってもらっちゃおうかな」
「やめてくれ…」
泉都門に確か乗馬クラブがあったはずです。白馬とかいそうですね。
「一条先輩なら王子様に入るかもしれませんけど、かわいいので除外されるかもしれませんね。後は真琴がどう思われるか」
可愛い系ではないことは分かっていると彼女は自分で言ってましたからね。
真琴が不思議そうに私を見ています。
「泉都門では騎士と呼ばれているとはいっても、真琴だって十分王子様みたいですし」
「さっきも言ってたけど、ナイトって何のこと?」
「あれ? 真琴は知らなかった?」
真琴は頷いています。
「真由ちゃんは知ってました?」
真由ちゃんは首を横に振りました。
「あれー? 先輩たちは知ってましたよね」
「まぁ一応ね」
「ナイトって騎士のナイト?」
「うん、そう呼ばれてるって教えてもらったんだけど」
真琴はキョトンとした顔で座っていました。
緘口令でもしかれていたのでしょうか?
「まぁ、当日。彼女の制御はおまかせください。久しぶりにハリセンの出番ですね」
「ハリセン?」
彼女の行動にツッコミを入れるため、ハリセンを厚紙で作ったのです。場が深刻にならないためでもありました。
「小さいハリセンがあるんです、うちに。もちろん彼女専用ですけどね。結構良い音でますよ」
皆さん、しばらくの間が開いたかと思うと笑い出しました。
そこウケるとこですか?