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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第三話 入学式は受験とは違った緊張感があります



 入学式は中等部からの生徒が多いせいもあるのでしょうか。

 在校生はおらず、新入生と教師、そして父兄だけという式でした。

 来賓の方が知事だったのは、なんとなく納得する学園ではあります。

 高等部校長と学園長、来賓の知事のお話を聞いて式は終わりました。

 この御三方は兄弟なんだそうです。誰が兄だとか弟だとかは知りませんが。


 つつがなく式を終えて、生徒は教室へと戻りました。

 私のクラスは、一組です。 

 全部で七組ありまして、それぞれマークがありました。

 一組が太陽、二組は水星。

 三組が金星、四組が地球。

 五組が火星、六組木星で七組が土星です。


 ブレザーとシャツの襟のところに専用のボタン穴みたいなのがありまして、そこに留めるように作られています。

 冬服の時にはブレザーに、夏はシャツに留めるように言われました。

 私は一組なので太陽のマークです。

 学年を知るにはブレザーかシャツの袖を見ます。

 一年が青、二年が赤。三年生はまさかの金です。

 男女ともに白いブレザーなのですが、例外の方が数名いるそうです。


 はい。今頃気づきました。


 毎年制服変わるのですね。

 父が借りて来た制服は金の線が入っていたので、どちらにせよ一年生の私には着れなかったことになります。


 一組の担任は西福にしふく さとる先生でした。

 実は知り合いで、父の友人です。父がこの学園を進めて来た理由の一つでもあります。制服が可愛いというのが一番ではありますが……。

 ちなみに三十五名中男子は三人です。少ないですね。その全員何故か一番前の席でした。

 私は廊下側の一番後ろです。

飯塚真琴いいづか まこと。よろしく」

 ニッと微笑んで隣の席の女子が挨拶をしてくれました。

 ショートヘアですらりとしていてパンツスタイルの制服がとてもよく似あう男前な女子でした。

 この学園はどちらの制服を着ることも可で、規定を守りさえすれば男子もスカートを履けます。今のところ男子がスカートを履いているところを見たことはありませんが、もしかして他の学年にいたりするのでしょうか。

「よろしくお願いします。私は水崎陽向みなさき ひなたです」

「ヒナタ? 可愛い名前だね。一組にピッタリな名前だ。高等部からだよね?」

「はい」

 父が付けてくれた名前なのですが私自身も気に入っていまして、褒めてもらえるのはとても嬉しいです。一組のマークが太陽なのも嬉しいですね。

「このクラスで他校からの受験で入ったのは君だけだよ。分からないことがあったら何でも聞いてね」

「ありがとうございます」

 一拍の間があった後、少し上目づかいで飯塚さんが口を開きました。

「……ぼくの口調変じゃない?」

 飯塚さんは僕っ子でした。

「中学でもいましたから慣れていますよ?」

 友人に……。そうです「うっひょーーーハーレム!」と言った人です。

 彼女は「ハーレムを作ってみせる!」と言って女子高へ行きましたが、そこは端折ることにしましょう。

「そう? 良かった。できれば、普通に話さない? 同い年なんだしさ」

「は……あっと、うん」

「今日このあと用事あるかな?」

「あ、えーと。家族と食事に行きま……行くの」

「あぁ、そうか。…………それじゃ明日一緒にお昼食べない?」

 この学園はお弁当は禁止されています。お昼は全て学食か購買です。

「うん」

「良かった!」

 ほっとしたように笑ったので、少し不思議な感じがしました。

 飯塚さんなら、誰でも喜んで一緒に食事をするのではないでしょうか。

「隣のクラスにいる従姉妹もいいかな?」

「ええ」

「人見知りな子でさ。友達になってくれると嬉しいな」

 私も少し人見知りですが、まったく話ができないというほどでもありません。

 人見知り同士分かることもあるかもしれないので、頷きました。

 入学早々仲良くなれそうな人と知り合えたのは僥倖ぎょうこうです。



 でも、私の思いとは反比例に面倒な事が起こり始めていました。


 その始まりがこの事だったとは、知る由もなかったのです。



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