第百九十七話 また会う日まで
「晃先輩、風紀委員の方は良いんですか?」
「あぁ。今日は忙しいからな、一昨日卒業祝いをもらった」
「謝恩会はクラスごとに違う場所ですよね? どこなんですか?」
私が言うと、三年生が顔を見合わせました。
「親も来るからな。警備の都合上、学園中央にある建物だ」
「えっ」
運命棟・宿命棟・天命棟の三つの扇形の高い建物が学園内の敷地中央にあります。
どれかが理事長のいる棟で、他の二つの使い道がわからなかったのですが、謝恩会会場だったとは知りませんでした。
「毎年、数クラスが使うんだがな。今年は全クラスが使うようだ。入り口が混雑しそうだが、まぁ何とかなるだろう」
各クラス違う階の会場だそうです。
ちなみに、どの棟かは教えてもらえませんでした。
「俺たちもどの棟かわからん」
何でも入り口が複雑で、三つの棟のどれに入ったのか分からないそうです。
外の景色を見ればわかるのでは? と思ったのですが、晃先輩が笑って首を振ったところを見ると、何かしかけがありそうですね。
屋上にヘリポートがあることだけは教えてもらえました。
ヘリポートですか。
学園敷地内なら、結構降りられる場所はあると思うのですが。三つの棟が一番高くて目立つので、降りやすいのでしょうか?
まだまだ謎がありますね。
「陽向たちが三年になって卒業する時に、もしかしたら入れるかもしれないな」
そうなったら、是非とも会場をそこにするよう押すことにしましょう。
「さて、そろそろ俺たちは会場へ行かないといけないな」
「あぁ」
「そうだね」
時計を見て、三人が頷きました。
いよいよ…です。
「また、会おう」
静先輩のその言葉に、私たち一年生は泣いてしまいました。
「元気でね」
貴雅先輩が私たちの頭をなでてくれます。
「俺は入学式をみにくるぞ」
「「ずるい」」
理事長権限行使ですか?
それはずるいですね。
全員にずるいと言われて、そして全員で笑いました。
私たちは泣き笑いになりましたけど。
「「「「今まで…ありがとうございました」」」」
廊下で先輩たちが角を曲がるまで見送りました。
生徒玄関まで行くと、風紀委員が大変になりますから。ここで我慢です。
角を曲がる瞬間、先輩たちが私たちに手を振ってくれました。
三人が見えなくなって。
生徒玄関の方で騒ぎが始まる音が聞こえました。
「先輩たち、棟まで無傷でたどり着けるかな」
「風紀委員がいるから大丈夫だろう」
物騒な話はやめてくださいね、芹先輩修斗先輩。
「来年は、芹先輩たちですよ」
「それを言われるとね。ちょっと怖いかも」
ふふふと笑って芹先輩は生徒会長の席に座りました。
「さて諸君。新しい生徒会の始まりであります。春休みに後輩が来るし、北海道から交流の生徒会が来るからね。忙しくなるよ」
春休みはまだ参加できないので、私は黙って立っていました。
「陽向ちゃんはきちんと休むこと。いいね」
「はい」
「新学期が始まったら、お仕事頼むからね」
「はい、誠心誠意頑張らせていただきます」
「うん、その辺は…少し肩の力抜いてね」
頑張りすぎは良くないよと困った顔で言われてしまいました。
「えーと。適度に頑張ります」
「うん、よろしく。さて、仕事を始める前に、一年生は顔を洗いましょう」
私たちは顔を見合わせて笑いました。
涙でぐしゃぐしゃです。
「陽向ちゃんは、その後帰宅ね。学園内はどこもごちゃごちゃしてるから、車に乗って帰るように」
「ありがとうございます」
今朝も迎えに来てもらったのです。
お仕事を休んでいるのでと断ったのですが、朝、玄関をでるとすでに車が来ていました。
「それじゃ、新学期に。また会おう」
「はい」
四月には必ず戻ってきます。
そう心の中で呟いて。
一礼をして、私は生徒会室を出ました。
これにて第一部完結とします。
少しお休みをいただきまして、第二部は新規小説として作る予定です。
タイトルはそのまま「私は急に止まれない。2」となります。
投稿する時には、こちらと活動報告にてお知らせします。
約半年、お付き合いありがとうございました。
まだまだ未熟ではありますが、陽向と一緒に成長できたらいいなとおもっております。
次回作にもお付き合いいただけると嬉しいです。