第百九十話 泣き笑いです
数日入院した後、カウンセリングにもう少し通うことになりました。
すべての問題が解決できたわけではなく、何か小さな問題が起きると精神が疲弊して、また倒れる可能性がなきにしもあらず…といったところでしょうか。
春休みいっぱい、生徒会の仕事は休むことになりました。
後輩の二人に会えるのを楽しみにしていたのですが、仕方ありません。
え、他校との交流?
……そ、そうでしたね。
とにかく、休養とカウンセリングです。
でも、卒業式には間に合いました。
生徒会の仕事はしませんが、卒業式に出席することは許可されましたので。
芹先輩たちに負担をかけてしまいますね。
復帰できたら、バリバリ働かせていただきます。
父と華さんは、私が生徒会に戻ることを渋っています。
私としましては、生徒会に戻りたいなと思っているのですが、春休みに今年一年になる二人が来るので、もしかして私はもう戦力外通告されるのでは…と戦戦恐々としています。
学年末試験もクリアしないといけませんし。
色々問題は山積みです。
そういえば、退院前に一度、生徒会の皆がお見舞いに来てくれました。
真由ちゃんは私に抱きついて泣いてしまいましたし、真琴も涙ぐみながら「もっと頼ってよ」と口をとがらせながら言いました。
色々とごめんなさい。
もう少し落ち着いたら和香も呼んで、色々お話しようと思います。
まだ疲れることが多いので、短時間でしたが皆の顔を見れてとても嬉しかったです。
芹先輩が私の頭を撫でながらグシャグシャにして、修斗先輩が櫛で直してくれました。
「心配したんだからね」
芹先輩の一言が胸にしみます。
震えるといいますか、涙が出そうになりました。
色々受け止めきれない感情がまだあって、どれだけ自分が他の人の言葉を上滑りで聞いていたのかと、ショックです。
それをきちんと受け止めるのも、先へ進む第一歩だと先生が笑って言っていました。
「陽向ちゃん、幸せって色々な形があるでしょう? だからね、器なんていらないと思うんだよ。陽向ちゃんが感じた幸せは無限にいつも側に置けるんじゃないかな。だって、同じ数幸せが皆に起こるのなら、同じように皆幸せなはずだよね? でも、感じ方はそれぞれ違うんだ。だから、幸せは陽向ちゃんがそう感じたら、感じただけ側に…ある」
なんてね…と先生は笑って少し赤くなりました。
「他の人に、僕がこんなこと言ったなんて言わないでね」
と口止めされましたが。
看護師さんも少し呆れているようでした。
他の先生はこんなにお話をしないのでしょうか?
「逃げないで戦えと言う人も大勢いるよ、でもね逃げることも必要な時があると思うんだ。だけど、逃げる前に思い出して欲しいんだよ。陽向ちゃんの周りに、君を助けたいって思ってる人がいるんだってことを」
心配してくれた人たちが大勢いました。
「月並みな言葉になっちゃうけどね。君は、独りじゃない…でしょ?」
「はい…」
独りで頑張っているつもりでも、大勢の人に支えられていました。
先生がハンカチを渡してくれて、私はくしゃりと笑って涙を拭きました。
まずは第一歩。
「涙はね、ストレスを軽減してくれるんだよ。だからいっぱい泣いていいんだからね」
「急に医学的ですね」
「うん? あれ? そうかな」
「ありがとうございます、新しいのを買ってお返ししますね」
「えっ、いいよ。自分で洗濯するし…ん、待てよ、また会える口実になるかな?」
先生の言葉に驚いて目を見開くと、看護師さんがプッと吹き出しました。
「あ、からかいました?」
「ふふふ、笑うことも脳にはいいんだよー。いっぱい笑ってね」
おかしな先生ですね。
でも、誰かが笑うと一緒に笑ってしまうの法則で、いっぱい笑いました。
笑いました。