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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百七十七話 捕獲作戦決行日



 今日もクラスに行ってみましたが日向先輩は見あたらず。

 日向先輩のクラスの方が苦笑していました。


 放課後にしっかりとお話しなくては。


 甲田先輩のクラスに顔を出して修斗先輩と三人で少しの雑談をした後、学食へと一緒に向かいました。

 修斗先輩と生徒会専用の個室へ入って最後の調整です。

 すでに生徒会全員プラス晃先輩が来ていましたが、まさか静先輩と貴雅先輩まで来ているとは思いませんでした。

「あれ、今日三年生の登校日でしたか?」

「いや、晃に話を聞いてな。少しでも力になれるかと思って来てみた」

「お忙しいのに申し訳ないです」

「きちんとしたいんだろう?」

「はい」

「いくらでも協力する」

「ありがとうございます。静先輩も何かありましたら、いつでも言ってくださいね、微力ながらお手伝いさせていただきます」

「その時はお願いしよう」

 静先輩は笑って頷いてくれました。


 放課後まではメールで甲田先輩と連絡を取り、今日の授業を終えて…いよいよ決行するときが来ました。


 私の行く先は応援団部室。


 

 軽くノックをすると、甲田先輩がすでに来ていてドアを開けてくれました。

 頷きあって中へ入ります。


 奥の椅子を勧められてドキドキしながら座りました。

「大丈夫?」

「はい。まだ来ていないんですよね?」

 部室棟に日向先輩が入ったら連絡がくるようになっております。

 まだ連絡がないので、まだ教室でしょうか。

「来ますか」

「来ると思うよ」

 甲田先輩は緊張している様子もなく、私の前にお茶のペットボトルを置きました。

「温かいものじゃなくて悪いけど、ま、どうぞ」

「いただきます」

 蓋を開けて一口飲みます。

「応援団はどうですか」

「んー、まあまあかな。新人戦が始まると忙しくなるかもね。練習はしてるよ」

「外部に応援に行く用の学ランが欲しいとのことでしたが」

「うん、一応僕が団長だけど、白の長ランでしょう。それに表の裾に刺繍入っちゃってるし」

「格好いいと思いますよ」

「僕らより戦っている彼らに注目してもらわないといけないでしょ」

「ああ、そうでした」

「体育祭みたいなのとは違って純粋に応援に行くんだからね」

「はい」

「あっ、と…メール来た」

「は、はい」

 途端に緊張します。

 ドキドキドキドキと鼓動が速くなって、手が震えました。

 始める合図は決めてあります。

 甲田先輩の右手がグーからピースに変わったら開始となります。

 甲田先輩の携帯の着信を知らせるライトが点滅して。

 グーからピースになりました。

 いよいよ始まります。


「“陽向ちゃんが大好きなんだ”」

 これセリフですよね。

「“嬉しいです晴来先輩”」

「“だから…キスしても良いよね?”」

「は…はい?」

 甲田先輩がゆっくりと近づいてきました。

「あ、あの」

 とても危ない雰囲気ですよ。

 あの、日向先輩。できれば早めに来てください。

「“もう、我慢できない”」

「ひゃっ」

 頬を撫でられて悲鳴を上げたところで、日向先輩が血相を変えて中へと飛び込んで来ました。

 そして凄い速さで甲田先輩の胸ぐらを掴みました。

「おまえっ…」

「苦しいっ」

 すぐに隠れていた先輩たちが中へと入ってきました。

 あれ…外で待機じゃなかったですか?


「手を離せ日向」

 ハッとして手を離した日向先輩が目をやったのは窓。

「窓の外に応援団員を配置している。さすがのおまえも十人相手は辛いだろう」

 晃先輩の言葉に日向先輩は舌打ちをされました。

「ちなみに、ボクらを倒して出ようと試みるのは勝手だけど、ドアの外で真由ちゃんと真琴くんがピッタリと張り付いて立っているからドアを開けたら勢いによっては弾き飛ばされるかもね。そうしたら怪我するかもしれないよね」

 

「そこまでするか…」


「お前が逃げるからだ」

 晃先輩が日向先輩に近づいて、そばにあった椅子に無理矢理座らせました。

「あんただって逃げたいだろうに」

「そうだな…だが俺様は逃げない」

「陽向の父親から伝言だ。“逃げ回るような男に可愛い陽向はやれん”だそうだ」

 お父さん、口出ししないでくださいって言ったのに。

 静先輩もそんな伝言聞かないでください。

 過保護すぎます。

「日向先輩」

「聞かない」

 両手で耳をふさいでしまいました。

 ですから、私は以前自分がされたように。

 小指を引っ張って日向先輩が聞こえるように隙間を作りました。

「陽向…」

「すみません、おつき合いはできません」

 ぎゅっと目をつぶって…日向先輩は息を飲みました。

「愛…してるんだ」

「…ありがとうございます。でも」

「うん…わかってる。きちんと聞いた」

 周りの先輩たちが、ホッと息をついた時。

 日向先輩は、潤んだ瞳で私を見上げました。


「それでも君に好きな人ができるまでは諦めたくない」



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