第百七十四話 違う人が引っかかりました
生徒会の仕事も今日は少なくて、一時間ほどで終わりましたし、家族で外食予定なため晩ご飯を作らなくて良いので放課後に時間ができました。
なので現在、甲田先輩とカフェでお茶を飲んでいます。
日向先輩を誘き出す…予定なのですが、その前に違う人が来てしまいました。
「陽向」
「晃先輩?」
晃先輩の後ろに修斗先輩もいました。
修斗先輩、芹先輩をほっておいて大丈夫ですか。
「修斗先輩まで、どうしたんですか」
「今日も…甲田とカフェにいると聞いたんでな」
晃先輩が甲田先輩をちらっと見ましたが、甲田先輩はニコニコ笑ってお茶を飲んでいます。
慣れた営業スマイルってやつですね。
「同席しても良いか」
修斗先輩が無表情で言ったので、びっくりして二度頷いてしまいました。
あまり感情を出さない先輩ですが、だからといっていつも無表情なわけではありません。
でも、今日は強ばっているような感じでした。
もともとテラスの四人掛けのテーブルに二人で座っていたので丁度座れます。
三人の先輩と同じテーブルについていますと、何でしょう…面接を受けているような気分になるのですけど。
どうしましょう。
「陽向。最近甲田とカフェに来ている理由を聞いてもいいだろうか」
「あ、はい。日向先輩誘き出し作戦のためです」
「…は?」
晃先輩と修斗先輩の目が点になりました。
「おびき…って、クラスに行けば会えるんじゃ?」
「それがですね、逃げられるのです」
今までの経緯をお二人に説明しますと、ため息をつかれました。
「理由は分かったが…別に甲田とじゃなくても…」
甲田先輩はどこ吹く風でお茶を飲みました。
「ま、俺だから引っかかりやすいといいますか。お二人だと当たり前な風景ですからね」
焦らせる為の手段ですと甲田先輩がニヤリと笑いながらいいます。
「頻繁に陽向ちゃんと会う事で日向を焦らせて、俺のところへ来たところを」
「捕獲しようと…いう計画です」
甲田先輩と二人で言うと、お二人は苦虫を噛み潰したような顔をしました。
「日向先輩は体術を習っているそうなので、それなりに鍛えている方じゃないと捕まえられそうもないので」
電話に出てもらえないので話せないですし、メールだと読んでいないと言われそうなので、はっきりと日向先輩に会ってお答えしたいのです。
「修斗ならどうだ」
晃先輩が修斗先輩をちらりと見ますと、修斗先輩は首を傾げました。
「多少手間はかかるかも…しれません」
「そうか」
「速さだと自分の方が速いと思いますが、力はあちらが勝つかと」
「三人がかりではどうだ」
「場所によります」
「俺たちの計画では応援団の部室の予定なんですが」
「団員を使えばできるかもしれんな。協力をあおげるか」
「まぁ、一応」
甲田先輩が頷くと、晃先輩がふと後ろを見ました。
「何の用だ」
晃先輩の後ろにはいつの間にか茶髪のお兄さんが立っていたのです。
「あ、あのー、皆さんが怖がって近寄らないので、できれば中へ移動していただけると嬉しいのですが」
ハッとして周りを見ますと、遠巻きに生徒が複数こちらを見ていました。
うん、確かに威圧感ハンパなかったですもんね。
「店内奥のテーブルをご用意しますので」
晃先輩が鷹揚に頷くと、ホッとしたのか笑顔でお兄さんが案内してくれました。
ご迷惑をおかけします。
営業妨害してしまってすみませんでした。