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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百七十三話 追走中です


 現在、逃げられております。


 誰に?

 それはもちろん日向先輩にです。


 晃先輩にはきちんとお話したい旨を伝えましたら了承を得られましたのに、日向先輩のクラスに行きましたら、私を見るなり逃走されました。


 追走するものの、コンパスの差、体力的なこともありまして、あっさりと逃げられました。

 クラス前にて待ち伏せするも、始業の音が鳴るまで戻ってこなかったので、お話する時間がありません。

 メールの返信もありませんし電話をかけても留守電に切り替わりますので、クラスに行くか生徒玄関で待つしかないのです。

 甲田先輩にお願いするしかないでしょうか。


 応援団の部室にも行ってみましたが、来ていないと言われました。


 怪しい。匿ってませんか。


 視線で私の気持ちに気づいたのか、甲田先輩は笑って中を見せてくれました。

 本当にいなかったので、素直に謝りました。

 ごめんなさい。

「あいつも往生際が悪いよなあ」

 こうも捕まらないとなると、晃先輩から先にお話しなくてはならないようです。

 順番的に日向先輩からと思っていたのですが仕方ないですね。


「日向先輩とお話したいのですけど、どうしたら良いでしょうね」

「うーん、そうだなぁ。色よい返事をする雰囲気を出すと良いかも?」

「難しいことを言いますね」

「あ、やっぱり返事はそっちなのか。うーん、分かっているんだろうから捕まえるのは難しいかな。あいつ、体術やってるみたいだから、そんじょそこらの男じゃ捕まえられないだろうし」

 まさか龍矢さんにお願いするわけにはいきませんし、どうしましょう。

「拘束でもしないとだめかもね」

「……できなくもないですが、ちょっと学校では」

「…できなくもないんだ? 陽向ちゃんのイメージを少し変更しておくね」

「どんなイメージだったんですか」

「ははは、えーと。ところで生徒会のお仕事中?」

「いえ、体調不良で何度もお休みしてしまったので、これ以上生徒会に迷惑はかけられません。下校する前に来ました」

「そうなんだ。それじゃあさ、俺とカフェに行かない?」

「は? 学園のですか?」

「うん、一緒にお茶でも飲もうよ」

「脈絡がないのですが」

「俺と仲良くしているところを見たら、近寄ってくるかもっていうお話」

「…そこで拘束ですか? 道具がないのですが」

「学園内ではやらないんじゃないの? ……さらに変更しておくね」

 どんなイメージになってるのか少々怖いですが、お話ができるかもしれないという可能性にかける事にしました。

「わかりました、今日は夕飯の当番なので少ししかご一緒できませんけど、よろしいですか」

「うん、良いよ。これから毎日やってみようか。都合もあるだろうから、アドレス教えて?」

「良いですけど」

 赤外線通信で交換して甲田先輩の名前を登録しました。

「うん、陽向ちゃんじゃなくて、こっちに来そうだけど。まあいいや。これ自慢しておくからさ、暇な時には俺のところにおいでよ。日向がいるはずだから」

「日向先輩も知っていますから自慢にならないと思いますけど」

「大丈夫大丈夫。ちなみに、俺が日向から逃げている場合もあるから、その時は電話するね」

「電話ですか」

「うん、俺の逃走先は応援団の部室にしておくから」

「なるほど、分かりました」

 甲田先輩もなかなか用意周到ですね。

「さて、それじゃカフェに行こうか」

「はい」

「今日は少し寒いからホットがいいね」

「甲田先輩はコーヒー派ですか紅茶派ですか」

「ふふふふふふ、ウーロン茶派!」

「あぁ、ウーロン茶も良いですね」

「緑茶も好きだよ」

「私も好きです」

「ほうじ茶も好きなんだっけ? カフェに無いのは残念だね」

「お茶全般好きなんです。今度申請してみましょうか」

「うんうん。好みが合うのはいいよね」

「そうですね?」

 隣で歩いている甲田先輩を見上げると、ニッコリ笑った顔がそこにありました。

 上機嫌のご様子です。

 

 カフェに着くと、さすがにこれから夕飯なのでサンドイッチを半分こすることになりました。

 長方形のサンドイッチを半分にした形なんですが、それぞれ中身が違って四種あります。

 季節によって中身が変わるので、楽しみなメニューの一つなのです。

「玉子もらっていい? ハムチーズは陽向ちゃんね」

「ありがとうございます。あ、今日はカツサンドが入っているんですね、運が良いです」

 人気のカツサンドは滅多にこうして他のに混ざって出てくることはありません。

 とってもラッキーな日ですね。

「それじゃ、これも陽向ちゃんね。残りは俺」

 分け合って食べるのも楽しいなと思っていたら、視線を感じました。

「甲田先輩、視線を感じるのですが」

「気にしない気にしない。今日は様子見もかねてるから、平常心で食べましょう」

「はぁ」

 甲田先輩はウーロン茶、私は紅茶でサンドイッチを食べ終わって、結局日向先輩を見ることなく下校となりました。


 楽しかったのは良いんですけど。

 これで本当に日向先輩に会えるのでしょうか疑問です。



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