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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百六十一話 伝統と新しいものです



 ブラスバンド部に真由ちゃんと行きますと、銀音先輩が来ていました。何故かまだチャイナ服で。

「銀音先輩…ミスコンのためじゃなかったんですか」

「うん、なんか楽しくなっちゃってさ」

 今日のチャイナ服は光沢のあるエメラルドグリーンです。

 裾の方に花の刺繍がされていました。

「水崎さん、一応これが予定の曲なんだけど。何か指定とかある?」

 楢島さんから部長を引き継いだ、財津先輩が私に紙を渡しました。

「えーと。この“graduation ceremony”が卒業生の入場曲なんですよね?」

 初期泉都門学園の卒業生が書いたと言われる一曲です。

「代々これだからねぇ。あと、こっちが退場曲」

 財津さんが指したところに書かれていたのは、メジャーな曲でした。しかも意外と最近の。

「退場する曲はリクエスト取ってるからね。これになったわけ」

「なるほど」

 卒業証書の時に流れる曲はブラスバンドではなく、放送部の方で流すクラシック曲になるそうです。

 それはそうですよね。

 泉都門では全卒業生が校長から卒業証書を受け取りますから、その間弾いているのは大変なことになりますもんね。

 その曲は毎年同じだそうで、それで何も言われなかったのですか。

「色々話し合うんだけど、結局いつものになるらしいよ」

 そういうものかもしれません。

「そういえばさ、理事長から曲が指示されてきたんだけど、これどうする?」

 理事長も出席されるのは知っていましたけど、校長だけじゃなく理事長も壇上にあがるようです。

 その時の登場の曲として“威風堂々”を指定する手紙がブラスバンドに届いていました。


「…却下で」


「うん。わかってた」

 体育祭を思い出してため息が出ました。

 放送部にも一応聞いておいた方が良いかもしれませんね。

 理事長の曲を許可すると校長も、とか来賓の方も…とかなりそうなので、全却下としておきましょう。

 来賓の方は卒業生が多いので。

 言いだしかねないのです。

「送辞と答辞の間は?」

 真由ちゃんが空白の場所を指します。

「毎年何も流していないと思うけど」

「静かな方がいいのかな」

「生徒会としても、やっぱり毎年同じっては嫌なもん?」

 財津さんが面白そうに言いました。

「どうなんでしょうね。私たちは一年生なので何とも言えませんけど」

 静かな方が良いのではないかと思います。

 小学生の時は、卒業生を送る歌とか会ったような気もしますけど。

 さすがに高等部でそれは…ね。

「中等部では卒業生が歌うよね、卒業の歌みたいなの」

「そうですね」

 真由ちゃんと財津さんが頷いています。

「高等部は校歌ですね」

 新しいこと…と考えるとなかなか難しいものなんですね。


「あー、あと一ヶ月ちょっとで卒業式かぁ…」

 財津さんがそういうと、しんみりした空気になりました。

「ま、ほとんどが大学部だから」

 銀音先輩がそういって、空気を台無しにします。

「それはそうですけど…」

「そういうのは卒業するときにたっぷり味わえるから。ほらほら、君たちは練習。二人は聞いていく?」

「聞いていきたいんだけれど、忙しいの」

 真由ちゃんが残念そうに銀音先輩に言いました。

「そっか。生徒会は忙しいもんな」

 真由ちゃんの頭を撫でると銀音先輩はタクトを取り出しました。

「さぁ。始めようか」

「それじゃ、私たちは失礼します」

「うん、またね」

 音合わせを始めた音楽室を真由ちゃんと出ます。

 来賓の方の控え室に出すお茶とお菓子をどうするのかを職員室で教頭先生に聞いて、帰りに生徒会への差し入れをもらって帰りました。

 先生のふるさとの名産の煎餅だそうです。

 ストレス発散にはなりそうですね。

「帰ったら緑茶を淹れようね」

「うん」

 煎餅にはやはり緑茶です。

 抹茶ラテも意外と合いますね。

 甘党な方におすすめです。  


 伝統と新しいもの。

 どちらも味わい深いもののようです。



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