第百五十七話 有名な卒業生?
「卒業生?」
「うん、二十年前くらいの卒業生だって」
マドレーヌを食べながら真由ちゃんが言いました。
「他県で教師をやってる人たちなんだって」
「大勢来てたの?」
「うん、三人来てた」
「もしかして、青の生徒会かな」
聞きなれない言葉が出てきましたよ。
「アオの生徒会?」
「生徒会のあり方を変えたと言われる有名な生徒会なんだ。それまでは今のように生徒会にすべて一任するようなことはなかったんだって」
「この忙しさはその人たちのせいですか」
「まあ…そういうとらえ方もあるね」
芹先輩が笑いました。
「天野、大槻、野津の三人の頭文字をとってアオノ生徒会。その当時の生徒会の制服が青かったことから、転じて青の生徒会と呼ばれるようになったと教えてもらったよ」
「へぇ。すごいんですね」
「スゴいことはスゴいんだけどね」
「何かあるんですか」
「うん、かなりの…」
続きを言おうとした芹先輩が、生徒会のドアが勢いよく開いたため口をつぐんで目を見開きました。
「やあやあ生徒会諸君。青の生徒会参上!」
三人の大人プラス顧問の先生。
「ん? 元気がないぞ」
「落ち着け天野。びっくりして固まっているだけだ」
「これまた可愛い子がそろってるね」
なんと言ってよいやら。
青の生徒会と名付けられたはずの彼らは、何故かヒーローのように色分けされていました。
どうやら天野さんらしき人が赤いセーターを着て、落ち着いた感じの人が青い服。女性なのか男性なのか分からない人が白い服に黄色いスカーフでした。
後、二人足りないとか思ってしまいました。
「ふふふ、驚いたかい? そりゃそうだよね。伝説の生徒会が目の前に居たらそれは驚くよねえ」
いえ、いきなりドアが勢いよく開いたので驚いているのですが。
「自分で伝説のとかいうのやめようよ」
黄色い方は見た目は中性的ですが声を聞くに男性のようです。
「それにしても三年がいないとはいえ少なくないか」
ようやく固まるのをやめた芹先輩が立ち上がったので、私と真由ちゃんもつられるように立ち上がりました。
「初めまして、来期から生徒会長になります一条芹です」
「来期から副会長の水崎陽向です」
「書記の飯塚真由です」
三人で頭を下げると、顧問の先生がため息をつきながら中へ入ってきました。
「ドアが壊れたらどうするですか、とにかく中へ入ってくださいよ先輩」
先輩!?
「先生の先輩なんですか」
「あぁ。僕は生徒会に入っていたわけじゃないけどね。ほらほら、入って入って」
三人の背中を押して生徒会室へと全員が入ると先生が盛大にため息をつきました。
「生徒会は忙しいんですから、全員がそろっているかどうか分かりませんよって言ったじゃないですか」
「そこは揃えておくのがお前の役目だろう」
「先輩聞いてます? 生徒会は忙しいんです。そもそも忙しくさせたの先輩たちのせいなんですからね。君たちも仕事があるならかまわなくていいよ」
先生がそういうと、何故か大人三人が輪になって座り込みました。
「後輩くん冷たくない?」
「伝説の先輩は大事にして欲しいな」
「それより女の子たちとお茶したいな」
全部聞こえてます。
声を潜めているつもりなのでしょうけど、聞こえてます。
「先生」
「分かっている、分かっているが校内見学の許可をきちんと事前に申請してきているから…。そういうとこだけ常識を見せるんだから、この人たちは」
豪快時々常識人ですか?
でも、これどうしろというのでしょう。
私そろそろ放送室に行かなくてはいけないのですけど。