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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百五十一話 会長と呼ばれれば



「康子が来るの待ってたら遅くなるぞ」

「どうする?」

 皆さんで唸り始めていますけど。

 時計を見ると午後二時半です。

「康子さんがいらっしゃるまでに、どれくらいかかるのでしょうか」

「あー。早く見積もっても40分かな」

 三時過ぎますね。

「あいつんちが一番遠いんだって。なのにいつも待ち合わせ時間まで寝てるんだよな」

 深いため息を皆さんが同時について、うなだれます。

「そのくせ、先に遊んでると怒るし…」

「まったくわがままにもほどがあるよな」

 そういいながらも、本気で怒らないところを見ますと、仲が良いんですね。

「もしかして幼なじみとかでしょうか」

「あ、正解。俺たちと、康子ともう一人いるんだけど、幼なじみなんだ。小さい頃から家が近くてさ」

「そうなんですか、良いですね」

「陽向ちゃんには幼なじみいないの?」

「そうですね。小さい頃は結構引っ越しが多かったですし。友人はいますけど、幼なじみと呼べる人はいませんね」

 友達になる前に、父と親御さんのもめ事になってしまうケースが多々ありましたので。はい。

「康子さんも同い年ですか?」

「いや、一個下だから、四月から高一」

 なるほどなるほど。

 一人で納得してしまいました。

「お姫さまなんですねぇ」

「え?」

 全員がこちらをみたので、もう一度言うことにしました。

「皆さんのお姫様なんでしょう?」

 赤くなる人二名。

 ふむ、なるほど。

「えーと、ここで待ってるのも時間もったいないし。公園行こうか?」

 江本君が小さく笑って言いましたが、二人は頷きませんでした。

「俺たちは待ってるよ。二人で行ってきたら?」

「年末にも見に行ったしな。案内してこいよ」

「そうか? それじゃ康子が来たら連絡くれ」

「「了解」」


 この時期公園のトイレは寒いと聞いたのでお店のところで済ませてからお店を出て、二分くらいのところに小さな公園がありました。

 噴水らしきものがありましたが、さすがに冬だと凍ってしまうらしく水が止められてカバーが掛けられていました。

「夏だとさ、小さいなりにライトアップとかして綺麗なんだよ」

「そうなんですか」

「んで、こっちが氷のライト」

 昼間なのでロウソクに火を灯していませんでしたが、氷で作られた中にありました。

「バケツに水を入れて一晩かな。気温によるんだけどさ。そうすると、外側が凍って氷の器みたいなのができるわけ。それをひっくり返してキャンドルライトのできあがり」

「なるほど。寒冷地ならではですね」

 夜だと綺麗でしょうね。

「昼間だから情緒も何もないけどね」

「まあ、その辺は想像するということで」

 私がそういうと、江本君は楽しそうに笑ってくれました。


 公園なので子供が遊んでいます。

 寒いのに元気ですね。

 何組かいる家族の中に、雪だるまを作っている人たちがいました。

「あ、れ? 会長!」

 会長と聞いてドキッとしました。

 いえ、さすがに静先輩がここにいるとは思ってません。

 聞き慣れた言葉で思い出す顔はやはり静先輩ですよね。四月からは芹先輩が会長になるわけですけど。

 顔をこちらに向けた人が嬉しそうに駆け寄ってきました。

「よぉ。デートか? 見かけない顔だな」

「でっ、いやあの。祖母の隣んちに来てた親戚の子らしいんですけど、明日帰っちゃうってんで。その…」

「へえ。お前の親戚?」

「違う違う、お隣さんの親戚です。内地の人ですよ」

「そうか。こんにちは。三宅真二みやけしんじ。江本と同じ高校の生徒会長やってます。通称タクマ」

 雪の上に名前を書いてくれました。

 なるほど、真ん中の文字を取って“タクマ”なんですね。知らない人が聞いたら名前かと思います。

「水崎陽向です。よろしくお願いします」

 頭を下げると、ご丁寧にと声がかかりました。


「妹さんと遊びに来たんすか」

「あぁ。三学期に入ったらまた忙しいからな」

 振り返った先には小学生らしき女の子が雪だるまに口や目を付けていました。

 江本君の話し方からして、どうやら先輩ですね。

「あっちから来たなら雪は珍しいかな。どう一緒に雪だるま作らない?」

「え、良いんですか?」

「妹も喜ぶから」

 嬉しかったのですが、手袋を持っていないことに気づきました。

 さっきのお店で買えば良かったですね。

 まぁ、素手でもなんとかなるでしょう。

 と思っていましたら、江本君がポケットから袋を私の前に出しました。



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