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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百四十八話 七草粥にはまだ早い



 三学期が八日から始まるのですが、龍矢さんの仕事の都合上四日に帰ることになっています。

 長期休暇だったので、これから忙しくなっちゃうみたいです。

 

 帰るという前日。

 雪かきの後、キッチンの手伝いに入るとボールの中に細かくなった葉っぱがたくさん。

 え? まさか七草じゃないですよね。

 と、のぞき込んでいると千歌さんが別なボールにそれを入れてかき混ぜ始めました。

「千歌さん、それなんですか?」

「あぁ、これはタネ」

「いえ、あの。パンケーキなのはわかるんですが、中身です」

「あぁ、これ? ほうれん草とか小松菜。後、ふふふ。これなーんだ」

 袋の中にいろんな草。

 あれ? やっぱり七草?

「毎年七草がお友達から届くんだけど、お粥だけじゃ減らなくてね。こうして色々考えて使うわけです」

「なるほど」

「ちょっと苦みがあるけど、パンケーキに入れたり、後はねーハンバーグにも入れちゃう」

「美味しそうですね」

「今晩、七草ハンバーグにしましょうか?」

 香矢さんは、あっさり鶏肉ハンバーグがお好きだそうです。草の緑色も映えるので白っぽくなる鶏の挽き肉でハンバーグを作るのだとか。

「普通のハンバーグも好きだけど。葉っぱを使うときは鶏肉が多いかもしれないわね」

 今日はたくさん食べるだろうからと挽き肉を買いに行くことになりました。

 実は以前作った鶏団子のシチューは千歌さん直伝だったりするのです。 

 

 今日のお買い物は千歌さんと私。


 男性陣は駅伝を見てます。

 華さんは付け合わせの下拵えのためお留守番です。

 帰る途中でコンビニに寄って、千歌さんがあんまん、私がピザまんを食べたことは二人の秘密にしましょう。

「ハンバーグの中にチーズを入れましょうか。陽向ちゃん、チーズ好きだものね」

「はい、大好きです」

 実は父と華さんもチーズ好きです。

 お昼ご飯に思いを馳せながら、車を降りて荷物を出していると、お隣さんも帰って来たところのなのか、声が聞こえました。

「あら、榊さん。こんにちは」

「こんにちは」

 目があったので私も挨拶しました。

「こんにちは」

 お隣さんの車から私と同い年くらいの男の子が降りてきて目が合うとびっくりしたような顔をされました。

「お孫さん?」

「ええ、そうなの。えーと、確か陽向ちゃんだったかしら親戚の子よね?」

「はい、水崎陽向です」

「そうそう、そうだった。この子は孫の江本進」

 進君がペコリと頭を下げました。

「ふふふ、陽向ちゃんが可愛いのでこの子緊張してるみたい」

祖母ばあちゃん!」

 進君は真っ赤になって荷物を持って家の中へと入って行ってしまいました。

「可愛いわねぇ」

「あら、榊さんのお孫さんはカッコいいじゃない」

「昔は表情に乏しくてねぇ。あんな風に真っ赤になったりしてくれなかったわ」

 確かに、真っ赤になる龍矢さんは想像できませんね。

「陽向ちゃん、沿岸のスケートリンク行った?」

「いえ、行っていませんけど」

「スケート楽しいわよ、三が日はお休みだけど。明日からならやってるんじゃないかしら」

「そうなんですか。明日、帰るので残念です」

「あらあら、そうなの」

 残念ねぇとつぶやいた時、玄関から進君が顔を出しました。

「祖母ちゃん、お昼になっちゃうよ」

「あら、ごめんなさい。それじゃ」

「ふふふ、またね」

 

 荷物を持って家の中に入ると、何故か男性陣はぐうぐう寝ていました。

 雪かきの疲れですかね?


「お帰り」

「ただいま帰りました」

 華さんが出迎えてくれて、チーズの話をすると飛び上がらんばかりに喜びました。


 子供みたいで可愛い華さんです。



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