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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百四十四話 甘やかされ中です?


 ゴロゴロ、ゴロゴロ。


 雷やお腹の音ではありません。

 コタツでゴロゴロ中です。

 

 何かをお手伝いしようとすると、止められて。

 またお手伝いをしようとすると、おやつを出されて。

 結局、ゴロゴロ中なのです。


「千歌さん、やっぱり何か手伝わせてください」

 そういうと、ニコニコ笑った千歌さんに頭を撫でられるのです。

「華さーん」

 私が助けを呼ぶと、華さんが笑いながらウィンクをしました。

「千歌さん、女三人で食事に行きませんか?」

 新聞を読んでいた香矢さんが「おや?」という風に眉をぴくりと動かしました。

 龍矢さんが一瞬顔を上げましたが、珍しく難色を示しません。

「あら、いいわね。行きましょう行きましょう」

 手を叩いて小さな女の子の様に喜ぶので、何だか嬉しくなっちゃいます。

「と、いうわけで龍矢と学。香矢さんのお昼はよろしく」

「了解」

「おやおや。これでも一応は料理できるんだよ」

 香矢さんが新聞を畳みながら言うと、華さんが首を横に振りました。

「お世話になっているのに、家主に作らせたりしないわよね?」

 華さんの言葉に龍矢さんと父は苦笑しました。


「華」

「わかっているわよ。それじゃ、行きましょう」

 千歌さんの運転でおでかけしました。

 華さんが個室があるお食事処を調べておいたらしく、そこへ三人で入りました。

 席についてすぐのことでした。

 私の携帯電話が震えます。

「あ」

「個室だから大丈夫よ、出たら?」

「何にするか決めているから、どうぞ」

 二人に言われて携帯電話をポケットから出しました。

「もしもし」

〔もしもし?〕

「芹先輩?」

〔今、時間大丈夫?〕

「少しなら大丈夫ですけど」

〔実は年末、皆で初詣に行こうかって話になって陽向ちゃんの都合を聞くために連絡したんだ〕

「あぁ、そうだったんですか。でも一月五日まで北海道にいるので参加できません、ごめんなさい」

〔北海道!? それは遠いね〕

「はい」

〔残念だけど仕方ないね。それじゃ、三学期に〕

「はい、よいお年を」

〔よいお年を! またね〕

 通話を切ってポケットにしまうと千歌さんの目がキラキラしていました。

「彼氏?」

「先輩です」

「あら、残念」

 レディースランチというのにしようということになりまして、華さんが店員さんを呼ぶボタンを押しました。

「お待たせしまし…」

 最後の「た」が出てこないなと思って顔を上げると、注文を聞きにきた店員さんが華さんを見たままポゥッとなっています。

「レディースランチを三つ、お願いします」

 千歌さんの声にはっとしたらしい店員さんが、慌てたように書き取ります。

「レ、レディースランチ三つですね、かしこまりました」

 ドアが閉められて走り去る足音が聞こえます。

 店内で走ってはいけませんよ。

 次に来たのは別な店員さんです。

「お冷やのおかわりいかがですか」

 さっきもらったばかりですよ。

「あの、お冷やいりますか」

 三人目の人がおずおずと言った様子でドアを半分開けて言います。

 さっきの人から五分もたっていません。

「あのー、お冷や…」

 四人目が来たとき、さすがに千歌さんがため息をついた後「店長さん呼んでください」と言いました。

 それはそうですよね。

 千歌さんの知り合いだったようで、何度も頭を下げて華さんに謝っていました。

 ようやくランチが来ましたが、運んできたのは女性でした。

 ですが、その女性も華さんをみて一瞬固まっていましたね。

「お、お待たせいたしました。レディースランチです」

 これで落ち着いて食べれそうですね。

「あの、お冷や…」

 最後まで言う前に店長さんに連れて行かれていました。

「ごめんね」

「華さんが謝る必要はありませんよ。さぁ食べましょう。出るまではもう来ないでしょうし」

 三人で他愛もない話をしながら食べましたが、時々ドアの外が騒がしかったので、華さんが困ったような顔になっていました。

 これは龍矢さんに迎えに来てもらった方がいいでしょうか。


 後で店長さんに聞いたと千歌さんが教えてくれましたが、店員さんがあまりに来るので芸能人がいるのかとお客さんまで集まっていたのだとか。

 

 華さんを守れるくらいの人になりたいなと改めて思ったのでした。



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