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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百四十三話 北海道です



 やって来ました北海道!!


 しばらくぶりなので嬉しいです。

 龍矢さんの祖母宅ですから、親戚の家ということになるのでしょうか。

 空港からバスだと父と華さんがいると大変なのでレンタカーで向かいます。迎えに来てくれると言ってくれましたが、何しろ空港から三時間くらいかかってしまうので往復六時間弱です。龍矢さんが自分で行くときっぱりと言いました。

 北海道なので雪がいっぱいかと思いきや、牧草地は雪が積もっていましたが道路に雪はありませんでした。

「いらっしゃい、久しぶりだね」

 玄関で出迎えてくれた途端、抱きしめられました。

「寒かったでしょう。ささ、早くあがって」

 四人で中へ入ると、コタツに入るよう勧められました。

 お茶とお菓子が出てきて、何故かフルーツも出てきました。

「食べて食べて」

 ニコニコと笑ってもてなしてくれます。

香矢こうやさん、そわそわしてないで貴方もコタツに入ったら?」

 龍矢さんの祖母である千歌ちかさんが笑いながら旦那さんである香矢さんに言うと、香矢さんは少し顔を赤くしてコタツに入りました。

「昨日からそわそわしちゃって大変だったんだから。遠足に行く子供みたいで」

 クスクス笑って千歌さんが香矢さんの前に湯飲みを置きました。

 ほうじ茶の香り。

 はい、我が家でほうじ茶を飲むようになったのは香矢さんと千歌さんの影響です。

 私たちには緑茶が出されていますが、二杯目からはほうじ茶にしてもらいます。

「千歌さん、雪あまり積もってないんですね」

「今年は少ないわね。雪かきが少なくて助かるわ」

 玄関に雪かきが置いてありました。

 普段あまり目にしないので写真を撮ってしまいましたけど。

「雪だるま作りたかった?」

「少し」

 素直に答えると香矢さんと千歌さんが笑いました。

 お二人が住む場所は比較的雪が少ない地域だそうで、カマクラが作れるほど雪が降ることはあまりないそうです。

 滞在期間中に雪が積もった場合は、もちろんみんなで手伝いますよ。

 庭はすでに雪かきがすんでいて、うっすらと残っているだけでした。

「千歌」

「はい?」

「あれを出しても良いだろうか」

「あれ…あぁ、そうね」

 千歌さんの了承を得た香矢さんがいそいそと仏間に行ったかと思うと、可愛く包装された箱を持ってきました。

「はい、陽向ちゃんに」

「えっ」

「クリスマスプレゼントよ」

「開けてごらん」

 二人がニコニコしていて、父も華さんも龍矢さんも、知っていたようでした。

 包装をはずして見るとウェブカメラ付きの端末機械です。

「えっ?」

 驚いて顔を上げると香矢さんの手にも同じものがありました。

「香矢さん」

「陽向ちゃんが来るまで勉強していたんだよ。これでいつでも顔が見られると思うと勉強するのも楽しかった」

 今まで香矢さんの家にはインターネットが引かれていませんでした。

 つまりは最近引いたということです。

 嬉しくて千歌さんに抱きつきました。

「嬉しいです!」

 ギュッと抱きつくと千歌さんも抱きしめてくれます。

「側にいられたらと思うけど、内地に行くにはもうここに慣れてしまいすぎてねぇ。ごめんね、陽向ちゃん」

 温かい言葉と千歌さんの温もりに涙が出てきました。

 側にいて欲しいと思うのは私の勝手な願いです。

 それをこんな風に叶えてくれるなんて…。


 背中を撫でられて、嗚咽が漏れてしまいます。

「買い物一緒に行きましょうねぇ。今夜はお寿司にしましょうか」


 何も言えずに頷くだけで、隣にいた香矢さんが頭を撫でてくれました。



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