第百四十二話 これ持って来たのは誰ですか
真由ちゃんと真琴が落ち着いたところでキッチンに向かいました。
冷蔵庫に入っていた材料を取り出すと、明らかにピザの材料じゃないのもあります。
誰ですか、手羽先持ってきたのは! 食べづらくなるじゃないですか。
何でヤシの実があるんですか!
何で鮭が丸ごと一匹あるんです?
どうしてバナナが房であるんですか? シャンデリアのようになってますよ。
はぁ…とため息をつくと冷蔵庫から取り出してくれた理事長は笑いながらバナナを一本食べました。
「うん、美味しい」
「これは日本で作ってる希少なバナナで」
静先輩が得意そうに言いますけど。
こんなに必要ないですよ。
再びため息をついた私をみて芹先輩が笑いました。
「僕のは無難にベーコンとサラミだよ」
張られているシールが外国語なので輸入されたものですか?
高そうで怖いです。
「それじゃ、生地は作ってあるから好きなの載せて焼こうか。ソースはこっちね」
ピザソースだけじゃなくてスイーツ系ように甘いのもあるんですね。
私は無難にサラミなどを使います。
周りが定番ではないものを作ろうとしているからです。
一人くらい定番がいたって良いでしょう?
父が理事長と何か話していたので何だろうと思って見ていましたら、父がピザを回し始めました。
よくテレビでやる、手で回すやり方です。
おおおと声が上がりましたが、遊んでないで作ってください。
皆さん夕方からクリスマスパーティなのでしょう?
まったくもう。
理事長が大きめのを一枚。私たちが小さいのをそれぞれ一枚ずつ作ったのですが。
何しろ全員で十人なので結構な量です。
焼いている間はリビングでお茶を飲んで雑談をしながら待ちました。
それぞれ食べ比べなんてしましたが、一番美味しかったのは理事長のピザでしたね。
和風のキノコ尽くしピザでした。
私のもそこそこでしたでしょうか。
静先輩と芹先輩はパスタを載せたピザで、晃先輩がドリア風。
父がベーコンと白菜のピザで、真琴がフルーツピザ。
修斗先輩はお好み焼き風ピザ。
真由ちゃんのは何と生ハムメロンでした。
これが意外に美味しい、侮れない生ハムメロン。くっ。
一番ある意味すごかったのは、貴雅先輩のスイーツ系のピザでした。
どんな味と説明できないくらいの複雑な味で、甘いなーと思ったら途中で苦みがきて、えっ?辛い?と思ったら激甘になるという。
何を使ったのか聞きたくない味でした。
計画性をもってピザを作ることをお勧めします。
「陽向、あーん」
父が私にピザを食べさせようとそう言ったので、全員の注目を浴びました。
「一人で食べれます」
「えー、手がふさがってるからさ」
「お皿に置いておいてもらえば、食べますから」
「重なっちゃうでしょう、はい。あーん」
「お父さん」
「何?」
「置いてください」
「…はい」
「いつものことじゃありませんからね」
ニッコリ笑顔で皆さんに告げると、慌てたようにピザを租借していらっしゃいますけど。
そんな攻防をしつつ。
皆さんペロリと平らげました。
夕方のパーティ大丈夫なんでしょうか。
遅い昼食ですけど。
後片付けをお手伝いした後、それぞれ用意があるとのことで解散となりました。
「陽向ちゃん、これお土産」
理事長が四角いピザを数枚箱に入れて持たせてくれました。
いつの間に作ってたんですか。
「ご家族にどうぞ」
「「ありがとうございます」」
父と声をそろえて言うと、理事長は楽しそうに笑いました。
「また何かで集まれると良いですね」
「そうですね、楽しかったです」
理事長と晃先輩に見送られて外へ出ると雪がちらついていました。
「あ、初雪」
「ホワイトクリスマスだね」
「陽向」
「はい?」
「寒いから手を繋いで帰ろうよ」
「嫌です」
「えー。お父さん手袋忘れてきちゃったからさー」
「ポケットに入ってますよ」
「あれ、いつの間に」
「はいはい、帰りましょう」
途中まで歩いたところで、そういえば使ってない食材をそのままにして帰ってきたことに気づきました。
理事長への日ごろのお礼ってことで…良いですよね?
ピザは作者の想像なので美味しいかどうかは謎です
作ってみたけど美味しくないなどという
苦情はいっさい受け付けません
あしからず…(;´▽`A``