表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
145/203

第百四十話 理事長宅のリビングにてです



 次に理事長に案内されて来たのは芹先輩と修斗先輩でした。

 ニコニコして入ってきたお二人は父をみて動きを止めます。


 父の顔を見ると笑顔でした。


「初めまして君たちが生徒会の人なんですね? 陽向がお世話になっています。父の学です」

 抱きしめんばかりに近づいて行ったため、修斗先輩が一瞬警戒したくらいです。

 芹先輩の手を握ってニコリと笑えば、数回瞬きをした後、芹先輩が小さく咳をしてから笑顔をつくりました。

 さすが、芹先輩です。

 立ち直りが早い。


「初めまして、一条 芹と言います。お会いできて光栄です」

 芹先輩が振り返って修斗先輩を見ると、修斗先輩は小さくうなずいて父と握手をしました。

「更科 修斗です」

「君が修斗君か! 色々ありがとう。芹君もいつも助けてくれてありがとう」

 ぶんぶんと音がなりそうな程の握手で芹先輩が苦笑しています。

「お父さん、芹先輩と修斗先輩をいつまでたたせておくつもりですか」

「あぁ…これはすまない」

 ようやく手を放してソファに座ると、晃先輩がお茶を運んできました。

「あ、すみません晃先輩」

 立ち上がりかけた私を制してカップを置きました。

「お客様だからな。座っていてくれ。飯塚の二人から少し遅れると連絡があった。来るまでくつろいでくれ」

「ありがとうございます」

 皆さんご自宅に帰ってからの集合なので、時間がかかりますよね。

「クリスマスのパーティは夜ですか?」

 皆さん今日か明日、クリスマスのパーティに出席されるそうで忙しそうですね。

「うちではやらないな。泉都門学園の忘年会も兼ねてやるからホテルだ」

 学園という括りでしたら、確かに職員は相当な人数ですもんね。

「陽向の家は?」

「私の家は、家族だけですね。華さんがケーキを焼いてくれます」

 そして明日から北海道です。

 そうです、ご褒美の北海道ですよ!

 生徒会の皆さんから、それぞれクリスマスパーティのご招待が来ましたが、それ以前に予定が決まっていたのでお断りしました。

 何だか豪華そうなパーティのイメージですけど、少し覗いてみたいなと思ったり。

 え、それはもちろん参加ではなく、見たいだけです。

 

 そういう会場のバイトなんか面白そうだなって思ったこともありましたが、龍矢さんいわく「そんな暇はない」とのことでした。

 まぁ、本職ならまだしもバイトにそういう余裕なんかできませんよねと返しますと「いや、本職だってそれどころじゃない」と言われました。

 龍矢さんは護衛などの仕事をしていましたから、裏側を見ていますからねえ。

「陽向」

「はい? 何でしょうお父さん」

「楽しそうで何より」

「お父さんも楽しそうですよ」

「こうしてお友達の家に招待されるのは陽向が小学生の時以来だからね」

「あぁ…そうでしたね」

 二人で笑いあっていると、芹先輩が私の向かい側に座りなおしました。

「騒動になったという?」

「陽向から聞いていましたか」

「はい。半信半疑なところがあったのですが、今日お会いしてよくわかりました」

 父は苦笑して紅茶を飲みます。

「それはぜひお聞きしたい」

 理事長がリビングに入って来てフフフと笑いました。

「親父」

 晃先輩が窘めるようにいいましたが、父が何でもないように微笑んだので引き下がります。

 お気遣いありがとうございます。晃先輩。

「簡単に言いますと、私が小学生の時にお友達の家にお呼ばれしまして。家族も一緒にということで父と行きました。そこでお友達のご両親たちが結構きてまして、その…お母様方がですね」

「あぁ…なるほど」

 理事長がその先を察してくれたのでしょう、頷いてくれました。

「家に押しかけてくる方もいたりして凄かったんです」

「あれは大変だったねぇ。鍵を変えたり、そうそう龍矢がすすめるセキュリティに入ったり防犯カメラつけたり」

「不法侵入だったので、警察が来たりと色々ありました…」

 あれから複製が難しいという鍵に変えたりしましたねえ。

「学校に相談もしたんですけど、担任の先生が女性で…」

「「「「あぁぁ」」」」

 父と私以外の、そこにいた全員が思わずと言ったように声を出しました。

 旦那さんが血相を変えて乗り込んで来たりもしましたし、ストーカーもいましたし。

「そういう意味では、陽向ちゃんは学さんの子供だねぇ」

「似たくありませんけど」

「えっ、似ているの嫌なのかい?」

 父がさっと表情を変えて私の肩をガッとつかみます。

 あぁ、面倒なスイッチが入りましたよ。

「落ち着いてください、お父さん」

「誰が似ていないと言おうと、陽向は僕の娘だからねっ。可愛い可愛い僕のスイートハー…うぐぅ」

「そういうのは恋人にいうことでしょう!」

 最後を言わせないように両手で口を塞ぐと、もごもごとまだ何かを言っています。

「ここは理事長のお宅のリビングですよ、わかってます? 他人のお宅のリ・ビ・ン・グ!」

 コクコクと頷くので手を放すと、しょぼんとしてソファに沈み込みました。


 いえ、そこまで落ち込まなくても…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ