第百三十四話 テスト三日目
さすがに今日は特に聞かれることもなく、テストが終わりました。
テストは少し悩んだ箇所があったので、心配ですね。
生徒会では購買に入荷して欲しい物のリクエストが結構届いていまして、カテゴリーに分けた後、検討をするのですが。
大抵は敷地内にあるお店に売っているものだったりするので却下されます。
寮に届けてもらうこともできるそうなので、何が不満ですかと言いたいです。
あれくらいの距離歩いてくださいよ。
「片道七百メートルくらいあるよね」
ジムに行くくらいなら、この道歩けばいいじゃないですか。まったく。
ぶつぶつ言いながらパソコンをシャットダウンさせると、ソファへ行ってペットボトルの水を飲みました。
この後、学食へ行くのですが風紀委員の園田さんは帰ってしまったので修斗先輩待ちです。
芹先輩と中等部に行っているので、もう少し待たないといけませんね。
お茶でも入れましょうかと立ち上がると、珍しく真由ちゃんが教科書を見ながら唸っていました。
「どうしたの? 真由ちゃん」
「これ、私の教科書じゃない」
「え?」
覗いてみると、歴史上の人物の顔にいたずらがされています。
高校生でもするんですね…じゃなくて、確かに真由ちゃんの教科書じゃないみたいです。
真由ちゃんは一度読んだら覚えちゃうんですから、こんなイタズラ書きすることなんてありませんよね。
「何かいつもと違うなって思って開いたら、これだったの」
「なるほど」
誰かが間違えた?
でも、間違えようもないですよね。
鞄か机の中しかないですし。
特に今日は鞄にしか入っていなかったはずです。
「他に何かおかしいことは?」
「うーん、しおりが挟まってた」
見せてもらったしおりは、綺麗な花の絵が描かれていました。縁取りが赤と緑でクリスマスっぽいですね。
真琴と私は顔を見合わせてお互い頷きあいます。
「これは…もしかして、もしかする?」
「でも、なんで教書…手紙の方が良いと思うけど」
「鞄を開けて、わざわざ交換したってことだよね?」
「うん、ちょっと怖いな」
「あ、違う。たぶん休み時間だと思う」
「休み時間?」
「教科書の後ろに名前が乗ってるでしょう。その名前が面白いって言い出した子がいて。私そこまで見なかったから、鞄から出して見てみたの」
たぶん編集者とかの名前ですよね。
っていいますか、テスト前に余裕ですね二組の皆さん。
「名前を見て皆で笑った後、しまおうとしたら隣の人とぶつかって教科書を落としてしまって」
「あぁ、それじゃ故意にというわけじゃないのかな」
「お隣の席の人って女子?」
「ううん、男子」
花のしおりの持ち主は男子でしたか。
「次の授業まで、気づかないかも?」
「そうだねえ」
「寮生?」
「うん」
それなら返しやすいですね。
なんて思っていましたら。
次の日。テスト最終日。
テストが終わって生徒会室に集まると、真由ちゃんが困った顔をしていました。
「どうしたの?」
「それがね。教科書は確かにそうだけど、しおりは知らないって言われたの」
イタズラ書きから持ち主は判明したけれど、しおりの持ち主は違う…と。
「ん? しおりだけ?」
「うん」
クラスの人に聞いても見たけれど、誰の物でもなかったとか。
「いったいどこで教科書に入ったんだろう」
私たちはしおりをひっくり返したりして見ましたが、花のイラスト以外何も書かれていません。
「これじゃ持ち主わからないね」
「生徒会のホームページに載せる? 写真撮ろうか」
しおりの写真を撮って載せたところ、すぐ次の日に連絡がありました。
三人から。
「えー?」