第百三十三話 隣にいるということ
次の日。
裏サイトで、私が父と血が繋がっていないとの噂が出たそうで。
うん、皆さんこういうの好きなんですね?
まぁ、別に良いですけど。
テストが始まる前に、直接聞きに来る方がいるとは思いませんでした。
「で、どっちなの!?」
「さあ」
「さあって!」
「君たち、失礼じゃないか」
真琴が珍しく怒って追い払ってくれました。
「陽向も答えなくていいから」
「うん」
生徒会に行けば、皆さん憤慨しておりまして。
晃先輩が裏サイトを閉鎖に追い込むとかなんとか言って出て行きました。
別に作られるだけだとは思いますけどね。
晃先輩も分かってはいるんでしょうけど。
テスト期間中に、騒ぎになってしまって申し訳ないです。
これ先生に呼び出されたりしますかね?
うーん。
資料を先生に届けるために職員室へ行くのですが、園田さんがついて来てくれます。
「テスト期間中なのに、すみません園田さん」
「いえいえー。風紀委員もテスト期間とかあんまり関係ないし。それに生徒会みたいに何位までーなんていうのないから」
ニコニコと笑って資料を半分持ってくれました。
紙って意外に重いんです。
職員室前まで運んでもらって、中へは私だけが入ります。
先生の机に置いて、メモを残すと職員室を出ました。
「ご苦労さん」
他の先生たちが声をかけてくれました。
職員室を出て園田さんを探しましたが、いません。
ここで待っているからとドアの前にいたはずなのですが。
キョロキョロとしていると、向こうから宍戸さんが現れました。
しかし、私の目の前にたどり着く前に園田さんと、何故か日向先輩が間に入りました。
「残念。風紀委員を舐めないでね」
園田さんは宍戸さんの方を向いているのでどんな顔をしているのかは見えません。
でも宍戸さんが顔を歪めたのがわかりました。
「陽向、帰り送っていくよ」
「どうして…っ、どうしてあんだだけそうやって…」
どうしてはこちらが言いたいくらいです。
「どうしてって、あなたが私に会いにくるからですよね。別に私じゃなくても同じ境遇の人がいたら風紀委員の皆さんは守りますよ。それからついでなんですけど、お姉さんに伝言をお願いします。誰を好きになろうと勝手ですけど父とおつきあいすると大変ですよと。娘の私がいうのもなんですが、やたらとモテるだけじゃなくて大変目立ちます。最初は優越感に浸る方が多いんですよ。でもね、恋人がいても告白してくる方は大勢いますし、たまに猟奇的な方へ傾くかたもいらっしゃるので、心安らぐ暇がありません。娘の私ですらですから、結婚したらどうなるのやらと、他人事ながら心配してしまうくらいなんです。かくいう私も身を守るために護身術などをならっておりますし、結婚される方でしたら、やはり身に着けておくべきスキルだと思われます」
一気に言って、ふぅと息を吐くと宍戸さんがぽかんと口を開けてこちらを見ていました。
「私がいなくなったところで、障害はたくさんありますからねえ。嫉妬は凄いですよ。それでも父が好きだと言えるのなら、どうぞ頑張ってくださいと…お伝えくださいね」
ニッコリ笑って。
宍戸さんの隣を通り過ぎました。
園田さんと日向先輩もついてきましたが、宍戸さんに待ちなさいとは言われませんでした。
「陽向は苦労してるんだね」
日向先輩がしみじみと言うので笑ってしまいました。
生徒会に入っていることで嫉妬されることもたくさんあります。
話しているだけで睨まれることも多々ありますし。
それでもいやがらせは風紀委員の方のおかげでなくなりました。
「皆さん色々ありますでしょう。その立場に立たないと見えないことがあるのもわかっていますよ」
言われて気づくこともありますよね。
「人生経験が少ない私のいうことではないかもしれませんけどね」
「どうかな。経験してもわからない人はいるだろうさ。わかろうとしない人もね」
驚いて日向先輩を見ると、とても優しい目で私を見ていました。
「ほぇー。図書委員長ってそんな顔もするんですね」
あっ、園田さんがいるのを忘れていました、助けてくれたのにごめんなさい。
あえて空気を読まない園田さんです。