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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百三十一話 期末テスト一日目です


 しばらく鳴りを潜めていた、華さんの頬ずり攻撃が昨日施行されました。

 頬ずりではないです。頬ずり攻撃です。

 ただの頬ずりと違いますよ。

 連続攻撃です。

 これが施行されると、ご飯中だろうがテスト勉強中であろうが、頬ずりされます。

 

 つまりは華さんのお膝の上です。


 こういう時、父と姉弟なんだなぁとしみじみ実感するわけです。

 小さい頃からなので、集中できないということはありませんけど。

 私を捕られた父は口をとがらせて拗ねていましたが、無理矢理に奪うことはありませんでした。

 たまにあるんです、取り合いが。


 私、これでも高校生なんですがね?


 父と華さんにしてみれば、ずっと子供なんでしょうか。

 うーん。

 でもこれ、他の人に見せられないですよね。


 華さんの膝の上で勉強をしたせいか、どうかは分かりませんが、一日目のテストは自分でも良くできたと思います。

 確認する時間があったくらいですし。

 

 テストが終わると他の生徒は帰寮帰宅ですが、私たち生徒会は仕事があるので学食で昼食を取るのです。

 しかし一日目は二教科なのでお昼にはまだ少し時間がありました。

 それなら、めったに私たちは使わないのですが談話室に行ってみようということになったのです。


 可動式の隔壁パーティションが幾つもあって人数によって変えられる仕組みになっています。

 三人しかいないので四人掛けのテーブルに座って、取り留めもなく話をしました。

 談話室のルールは備え付けの自動販売機の飲み物以外は持ち込まないというだけで、何をしようと自由です。大声で叫んだりする人はさすがに注意されるでしょうけど。

 一部畳の小上がりみたいな場所がありまして、たまに仮眠している人がいるそうです。

 今日はさすがに人が少ないですね。

 私たちが入っていくと珍しそうな顔をされました。

 いつも生徒会室にいますからね。

 でも、たまには学園の設備を使うようにと言われているのです。

 自分たちで見てみないと分からないこともありますから。

 芹先輩たちが頻繁にいないのはそういうことらしいです。

 一年生はまず、仕事と学園の構造に慣れてからということで、最近やっと指示がでました。

 色々広すぎますからね。


 芹先輩は三年生のお姉さま方に追いかけられることが多々あるので、他の先輩よりは少ないようです。


 お昼が近づいたところで、談話室をでました。

 一時間くらいはいたでしょうか。

 いつももっと賑やかなんでしょうね。


 階段を降りて一階へ行き、学食へ向かおうとした時、後ろから声がかかりました。

「あんたが、水崎陽向?」

 私を真っ直ぐ見ているので、はいと頷きました。

「何かご用ですか」

「用がなきゃ、話しかけてないわよ」

 はぁ、そうですけど。

 どこかで見たことがあるような、ないような。

 そんな顔ですが、はて? 誰だったでしょう。

 

「えーと、どちら様でしょうか」

「へーえ。本当に似てないんだね」

「は?」

「あんたファザコンなんだって? いい加減親離れしたら?」

 何で知らない人にこんなこと言われないといけないのでしょう。

 ふむ。

 しかし、これは父関係ということがわかりました。

 でも高校生に手を出すような父ではありませんので、娘さんか妹さんといったところでしょうか。


 父に振り向いてもらえないからといって、私のところに来ても意味がないのですが。

 私は父の恋愛に関して特に言うことはありませんし。マイペースな父のことなので、私が言っても聞きませんよ。


 それにしても、大抵そういう方の第一声は「似てない」なんですよね。

 もう聞き飽きましたよ。


「苦情は本人へどうぞ」


 私はため息をついて学食へ入りました。


「ちょっと、待ちなさいよ」

 待てと言われて待つ義理もありませんし。

 お腹が減ってきました。

 今日は何を食べましょうね。


「無視するつもり!?」

「お話は終わりましたよ」

「終わってないわよ」


 今、気づきました。


 昨日会った宍戸さんに似ているんです。

 ああ、なるほど。


 一人納得。



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