第十三話 御対面です
ゴクリと唾を飲み込んで辺りを見回しますと、入ってすぐにソファセットでした。二人掛けのソファが四つ、テーブルを囲むように置いてあります。
それを囲むように役員の机が置いてありました。
重役さんの仕事場か、書斎にあるような机です。
奥にある上座のソファにの真ん中に座っているのは生徒会長でした。
向かって左のソファに東雲先輩。向かって右のソファに一条先輩が座っています。
更科先輩は私の横に立ったままでした。
「いらっしゃい、陽向ちゃん」
天使の微笑みで副会長一条先輩が言います。
来たくありませんでしたという言葉は飲み込んで頷くと、手前のソファに座るよう勧められました。
早く帰りたかったのでご辞退申し上げまして、立ったまま話を聞くことにします。
「水崎陽向だな」
生徒会長が私の目をしっかりと見ながらいました。
「はい。あの時はすみませんでした」
「いや、俺も桜を見ながら歩いていたから同罪だろう。気にするな。俺は生徒会長の如月 静だ」
「さっき名乗ったけど、改めまして、ボクは副会長の一条 芹だよ」
「このあいだはどうも。僕は書記の東雲貴雅」
「会計の更科修斗」
現生徒会の役員全員のご紹介にあずかりました。
「あの・・・私が呼ばれた理由を聞かせてください」
「あ、その前にもう一人来るから待ってくれる?」
一条先輩が可愛らしく言いました。
生徒会役員はこれで全員なはずです。
他に誰が来るのだろうと思っていたら、ココンコンとノックの音が聞こえました。
更科先輩がさっと開けるとブレザーの生徒が入ってきたのです。
ブレザーということは、やはり生徒会の役員ではありませんよね。
裾を見ると金のラインなので三年生でした。
「悪い、待たせたか?」
「いや水崎は、今、来たばかりだ」
「そうか」
なんというかこれまた背の高い先輩です。
生徒会室のドアの上に頭がぶつかりそうな高さです。
「これが水崎か?」
「女の子に『これ』とか言わないでくださいよ」
東雲先輩が苦笑しながら、入ってきた先輩に言いました。
スポーツをやっているのでしょうか、生徒会長と同じようにガッシリとした体型で、シャツの胸元をはだけていましたので胸板が見えました。
ずいぶんと鍛えられているようです。
「水崎陽向です」
「あぁ、俺様は風紀委員長の和泉 晃だ」
まさか実際に「俺様」なんて一人称を使う方に会うとは思っていませんでした。
いえこの場合、セオリーでいくと本当は生徒会長が「俺様」のはずですよね。
そして風紀委員長自ら風紀を乱す姿というのはどうでしょう。
唖然とした顔をしていたのに気づいたのでしょう。
和泉先輩はニヤリと笑って私の肩に手を置きました。
「何だ? 俺に惚れると火傷するぜ」
そう言いながら私の肩を押して手前のソファに誘導した後、その隣に和泉先輩も座りました。
思わずそのまま座ってしまいます。
惚れていませんよ。ほぼ呆れていますとは言えませんね。
更科先輩がドアに鍵をかけた後、一条先輩の隣に座りました。
「これで全員だね。さて君を呼んだ説明をする前に、一つ確認したいことがあるんだけど、良いかな?」
一条先輩がニコッと笑って言います。
「何でしょうか」
こちらも聞きたいことがあるのですが、早く帰りたいので飲み込みます。
「ボクたちをみて、どう思う?」
「は?」
「ボクたち全員・・・風紀委員長も含めて。どう見える?」
一条先輩が意外にも真面目な顔で言ったので、冗談で聞かれていないことはわかりました。
はて、どう答えたら正解なのでしょうか?
「ええと、とてもカッコいいと思います・・・」
無難に答えてみました。
事実カッコいいですし、それ以外に答えようがないです。
こう言う時、自分のボキャブラリーのなさにガッカリしてしまいます。
「えーと、確認ってそれだけですか?」
私がそう言うと、隣に座っていた和泉先輩がいきなり私の肩を引き寄せて耳元で「もっとこっちに寄れよ」と囁きました。
何ですか、囁くのが流行ってるんですか?
「放してください!」
「本当に何も?」
「それ以外に何を言えば良いんですか!?」
キッと和泉先輩を睨むと、驚いた様な顔をされました。
いいから放してください。
「へぇ・・・なるほどね。これは面白い。了解了解、俺様は異存ないぜ」
「そうか、ならば全員賛成だな。ということで、水崎陽向。お前を生徒会会長補佐に任命する」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」