第百二十四話 買い方って性格がでます
今日はシチューですが、買うものは決まっています。
野菜はあるので、お肉です。
いつもは普通のお肉で作るのですが、今日は鶏の挽き肉で鶏肉団子を作ってさらに、ジャガイモの代わりにサツマイモを入れて甘いシチューですよ。
日向先輩に一応聞きましたら、甘いシチューでも良いとのことでした。
ですから、現在お肉売場に向かっております。
鶏の挽き肉発見です。
さぁ、帰りましょう。
「ちょ、ちょっと待って陽向」
「はい?」
「買い物に来たんだよね?」
「はい、そうですよ」
ちらりとカゴを見る日向先輩は、何故か驚いた顔をしています。
「えっと…買い物ってさ。もっとこう…」
「必要なのは挽き肉だけです。野菜は家にあるので足りますし、他に買うものはありませんよ」
日向先輩がカゴを持つというので、持ってもらいましたが実際鶏肉だけなので、いらなかったんです。
「いつも…こんな感じ?」
「んー。私だけで来るとそうかもしれませんね」
日向先輩は、華さんが私に渡した金額を知っているので、もっと買うと思ったのでしょう。
好きなものを買っても何も言われませんが、特に欲しいものは現在ありません。
なのでお肉売場からレジへと直行です。
「何ていうか男らしい買い物で」
「そうですか? 必要なものがこれだけだったからだと思いますけど」
「そう。ふふふ、そんなところまで僕好みじゃなくてもいいのに」
よく聞き取れなかったので振り返ると、日向先輩の後ろに見知った顔を発見してしまいました。
「あれ? 甲田先輩?」
日向先輩が驚いて振り返ります。
「あれ? 日向に、水崎さん?」
「甲田? 何でここに」
「何でってバイト中だけど」
「甲田先輩ここでバイトしてたんですか? えっ、泉都門ってバイト禁止のはずでは」
「きちんと許可もらってるよ。バイトっていうか家の手伝いってことで、半分黙認って感じ」
家の手伝いっていうことは…。
「もしかして…」
「うん。シャレた名前ついてるけど、昔は甲田商店」
結構な規模のスーパーですよ。
驚きました。
「っていうか、俺は君たちが二人で買い物していることの方に驚いてるんだけど。どうなってるの?」
「あ、ええとですね」
「しかも、なんで挽き肉一パック?」
「それはですね」
「晴来くん、そっちの段ボール……あら、お友達?」
「あ、すみません。すぐ片づけます」
甲田先輩が頭を下げている時に、私の携帯が震えました。
「もしもし?」
〔もしもし陽向? まだ会計すんでないわよね?〕
「はい、まだですけど」
〔二リットルの水買ってきてもらえる?〕
「わかりました」
「誰と電話?」
「華さんです」
〔陽向、今の声誰?〕
「あ、ええと先輩の甲田さんです」
「華さんって誰?」
〔あら、それなら甲田君も連れてらっしゃいよ〕
「は?」
「甲田、電話中に話しかけるな」
日向先輩が睨みますが甲田先輩はどこ吹く風です。
「あの、でもバイト中らしいですから」
「バイトなら、もう終わるけど?」
「甲田!」
〔学がさっき電話をくれて、急いで帰ってくるっていうから。大丈夫よ。連れてきてね、それじゃ〕
「あっ、華さん!」
通話が切れてしまいました。もう、華さん強引なんだから。
ちらっと甲田先輩を見ると期待にきらきらした目でこちらを見ています。
「華さんが…甲田先輩も一緒に夕食どうですかと」
「わぉ、行く行く! 絶対行く」
「おまえ…」
日向先輩が呆れた目で見てますよ。
「で、華さんって誰?」
「後で説明します」
一旦、甲田先輩と別れてレジへと行きました。
持参したバッグに入れて外へ出ると、着替えてきた甲田先輩が走ってこちらへとやってきます。
「お待たせー」
「来なくていいのに」
「ふふん、世の中そんなに甘くないのだよ日向君」
ニヤニヤと笑いながら甲田先輩が私の肩に手を乗せて引き寄せようとしました。
「ちょっ」
「甲田!」
日向先輩がその手を弾いてくれたので、引き寄せられる前に逃げられましたが。
「おー怖い怖い。ところで、晩御飯何?」
「…私が作るシチューです」
「へぇ、水崎さんの手作り食べれるんだ? ラッキー」
私を挟んで睨み合いながら歩くのやめてもらえませんか、先輩方。