第百二十三話 おかえりなさい
一週間って、意外とあっという間ですよね。
二年生が修学旅行から帰ってきました。
金曜日に帰ってきたので、登校は月曜日ですけど。
寮には日曜日に戻ってくるそうです。
現在土曜日の午後。
何故か日向先輩と我が家でお茶を飲んでいます。
テーブルの上にはお土産が並んでます。
別に月曜日に渡してくれればいいじゃないですか。
なのに笑顔でデジカメとお土産を持って、我が家へとやってきました。
「陽向の家のテレビって結構大きいでしょう。デジカメを繋いで観たら、迫力が違うかなって思って」
ケーブルも持ってきたようで、我が家のテレビと繋いでいます。
映し出された映像は確かに写真で観るより迫力がありました。
お城もとっても素敵です。
画質が良い設定で撮ってきたそうです。
大画面なのに、荒く見えません。
動画もあって、思わず楽しんじゃいました。
行ってみたいですドイツ。
先輩たちが止まったお城はホテルになっていて、天蓋付きのベッドかと思いきや、普通のベッドだったそうです。
写真を見せてもらいましたが、確かにホテルですね。
自由行動の日には、修斗先輩と芹先輩、甲田先輩に会ったそうです。修斗先輩と甲田先輩は同じクラスですからわかりますが、もしかして芹先輩と常に行動しているのは修学旅行でも同じだったのでしょうか。
「お土産が彼らとかぶっている可能性もあるから、先に渡すために来たんだ」
ニヤリと笑ってお茶を飲みました。
「抜け駆け?」
「華さん人聞きの悪いこと言わないでください。そもそも争ってませんからね」
「まあ、表面上はそうかもしれないけど」
日向先輩と華さんがそう話をしている中、私はぼんやりとテレビに映る写真を見ていました。
「陽向?」
「え? あ、はい?」
「聞いていなかったの?」
「すみません、ぼんやりしていました」
「僕がいない間に何かあった?」
「特にありませんよ。晃先輩の家に遊びに行ったくらいでそしょうか」
ゴトとコップをテーブルにおいて、日向先輩が眉を寄せます。
「何をしに」
低い声になったので驚いていると、華さんが楽しそうに笑いました。
「二年生をのぞく生徒会全員でお呼ばれしたようよ」
全員と言う言葉に、ホッと息をついた日向先輩は私の顔を見て「良かった」と呟きました。
「陽向だけ行ったのかと思った」
私だけ行ったところでパイを消費できないかと思います。
「そうだ、今日は陽向が晩ご飯を作る日だから、日向君食べて行ったら?」
「えっ、華さん何を言ってるんですか!」
「本当ですか? 嬉しいな」
日向先輩はニコニコと笑ってテーブルに出されていたクッキーを食べました。
「確かシチューだったよね?」
「楽しみだな、買い物につきあうよ」
明日残ったシチューを使ってパイを焼いてみようと思っていたのです。
くぅ…残るでしょうか。
いえ、その前になぜ日向先輩が晩ご飯を食べることが決定されているのですか。
「ご家族の方にご迷惑がかかりますよ」
「ん? 僕一人暮らしだし」
「えっ?」
「泉都門に通うために一人暮らし中。今度遊びに来てね」
「謹んでお断りいたします」
私の答えに何故か破顔して頭を撫でられました。
何ですか、断ったのに笑うなんて。
「これでも自炊派なんだ。手伝うよ」
今日は龍矢さんが夜勤なので買い物は私が行くことになっていました。
最近しつこく華さんに話しかけてくる男性がいるので、なるべく女子だけでは行かないようにと言われているのです。
まぁ華さんは私より強いので、もしもの時はねじ伏せてしまうでしょうけど。
それでも龍矢さんは心配のようです。
私一人が買い物に行くことも心配なので、なるべくは龍矢さんと行くのですけど。
今日は急にシフトが変わったそうで。仕方ないですよね。
「日向君がついていってくれるなら、私も安心するわ」
華さんが少しホッとしたように言ったので、一緒に買い物に行くのは断れなくなってしまいました。
「荷物もちとして、存分に使って」
結局。
近くのスーパーへ日向先輩と、しかも明るいうちに行くことになったのでした。




