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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百二十一話 ご自宅訪問



 二年生が修学旅行へ行ってから二日後。


 生徒会の三年生と一年生は晃先輩のお宅へと遊びに来ていました。


 パンプキンパイを食べるために。


 全員で作って、お昼頃にできるようにするようです。


 晃先輩と理事長が出迎えてくれまして。

 案内されたキッチンは、どこのお店ですか? っていうくらい大きなものでした。


「こっちはパーティ用のキッチンだ」


 別に家族用のキッチンがあるそうです。

 すごいですね。


 パーティがある日はシェフを雇って、ここで作ってもらうそうです。


「オーブンがね。こっちの方がいっぺんに焼けるし、広いから良いかなと思って」

 理事長がそれこそシェフみたいな格好で言います。

「形から入るほうでね」


 パイ生地の用意はすでにされているそうで、大きな冷蔵庫から出してくれました。


 大きなパイを焼くのではなく小さいパイをパンプキンだけじゃなく、色々なものを乗せて焼くのだそうです。

「ミートパイも美味しいよ」

「俺様はグラタンパイが好みだ」

 あぁ、どちらも美味しいですよね。

「でもソースを今から作るのですか?」

 そういうと理事長が晃先輩のようにニヤリと笑って冷蔵庫から四角い銀色の容器を二つ取り出しました。「もちろん用意はしてあるよ」

 片方がミートソース、もう片方がグラタンソースでした。

 残り物のカレーを使うときもあるそうです。

 

 理事長。

 女子力というか主婦力高すぎです。


「親父ほどじゃないが、俺様も作るぞ」

「えっ」

「えっ、とは何だ」

 できあがるのを不適な笑みで待っているイメージが……勝手な考えでした。すみません。

「菓子は作らんがな」

 そういいながらパイを手際よく作っていきます。

 理事長が別な容器を持ってきて、そこには甘く煮たアップルなどが用意されていました。

 もちろんパンプキンもあります。


 全員で小さなパイを作って、温めていたオーブンへと入れます。

 確かにこれだといっぺんに焼けますね。


「パイシートが今はお店で売っているし、それを使えば簡単に作れるよ。それこそ残り物のカレーやシチューを使ったりね」


 はい。今度家でも作ってみたいと思います。


「そうそう。二年生が帰ってきたら、今度はピザパーティしようか。パイみたいに色んなのを作って食べよう」


 楽しそうですね。

「陽向ちゃんのお父さんもお呼びしようか」

「えっ」

「ぜひ一度お会いしたい。ご家族全員でも構わないよ」

 華さんをつれてくるのは、きっと龍矢さんが許さないかと思われます。男性ばかりですし。

「一応父に聞いてみます」

「うん、こちらからも正式に招待状を送らせてもらうよ」

 にっこり微笑んだ理事長は私たちに飲み物を用意してくれた後、少し電話をかけてくるからとキッチンから離れました。


 焼けるのを待ちながら談笑していると、理事長が戻ってきてアルバムを見せてくれました。


「「「うわ~! 晃先輩かわいい~!」」」

 女子三人で声を上げると、慌てた晃先輩がアルバムを取り上げようとします。

「親父!」

「良いじゃないか。ほら、これは初めてアイスクリームを食べた時だよ」

「うわわわ~良い笑顔!」

「かわいい」

 真っ赤になって晃先輩はそっぽを向いていました。

「ほら、これが小学校」

「他の子より背が大きいですね」

「この頃からすでにグングン伸びてたねえ」

「こっちが中等部に入った頃だね」

 他の生徒より頭一つ抜きんでています。

 はにかんだ顔で“泉都門中等部大門前にて”と書かれていました。

「アルバム作ってるんですね」

「まぁデジタルでも残してあるけど。こうしていつでも見れるからね」

 アルバムを見ている理事長の目はとても優しげです。

「中等部の二年生あたりからかなあ。こっちをみてくれなくなったの」

 確かに視線がこちらを向いていない写真が多くなっていました。

「親父が女を連れてくるからだ!」

 真っ赤になったまま晃先輩がアルバムを取り上げて持って行ってしまいます。

 あぁ、彼女連れで息子の入学式とか…さすがにそれはちょっと。

「あれ、一気に評価が下がってるような気がするな。あ、焼けたみたいだね」

 オーブンのピーピーという音がして、理事長が苦笑しながら立ち上がりました。


 時計を見るとお昼過ぎでした。



拍手いつもありがとうござます。

くじけそうになりながら、頑張っております。

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