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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百十九話 カボチャの夢



「いつも差し入れありがとうございます」

「いやいや、食べてくれてこちらそありがとう。素人の手作りでごめんね」

 いえ、もはやプロ級です。


 生徒会でおいしいと言われたスイーツは、理事長に会いに来るお客様に出されることになるそうで。

 もしかして責任重大!?


「次はね。この前、友人からカボチャが大量に届いたので、パンプキンパイを作ろうと思っているんだ」

 聞いているだけでよだれが出そうです。

「パンプキンのシフォンケーキもいいかなぁ」

 あぁ、魅惑のふわふわケーキ。

「パンプキンのスコーンも捨てがたいね」

 ぜひパンプキンシードを入れて欲しい。

「あとは…パンプキンプリンなんか、どうかな?」

 はぁぁぁぁ、パンプキンプリン!

「あぁ…プリン…」 

 思わずつぶやいてうっとりしました。


「…なた……ひなた、陽向!」

「はっ、はひ」


 うっとりしすぎてぼんやりしていた様です。


「すみません。つい、想像して」

 理事長はそんな私を見てうれしそうに微笑みました。

「プリンが好きなのかな?」

「はい、大好きです」

「そうか、それじゃ陽向ちゃんのリクエストにお答えしてパンプキンプリンを作ろうか。月曜日には晃に持たせるから、楽しみにしていてね」

「はい、有り難うございます」

 思わず大声で言ってしまって、全員に笑われました。

 だって、大好きなプリン。しかも理事長の手作り。 月曜日が待ち遠しいです!


「もしかして胃袋つかむ方が早道?」


 ぼそりと誰かが呟きましたが、ほとんど聞こえなかったので振り返りました。結局誰だったのかわからないまま理事長が帰っていきました。


「晃先輩はいいんですか?」

「俺様は休憩中だ」


 ドカリとソファに座って残っていたカップケーキの一つをを二口ふたくちで食べてしまいました。

 もっと味わって食べてください。

「陽向、お茶」

「あ、はい」

 ポットの紅茶は冷めてしまったので、ティーバッグの紅茶を淹れました。

「どうぞ」

「ん」

 そこそこ熱い紅茶をこともなげに飲んでいます。

 私は猫舌なのでうらやましいですね。


「そうだ、陽向」

「はい?」

「パイは冷めてもうまいが熱々もなかなかだぞ」

「そうなんですか、良いですね」

「だから、今度うちにこい」

「…はい?」

「うちにくれば、熱々を食べれるぞ」

 そ、それは。

 なんと甘美なお誘い!

「パンケーキみたいに生クリームかアイスを添えようか」

「よ、涎が出ちゃいます、晃先輩」

 私の言葉に晃先輩はニヤリと笑いました。

「今週は忙しいが、来週なら親父も家にいるだろうし」

 来週という言葉に芹先輩が急に不機嫌になりました。

「ちょっと、晃さん。それわざと? 来週はボクたち修学旅行でいないじゃん」

 普段“晃さん”なんて言わないのに。珍しいですね。

「十一月に入って少ししたら親父も忙しくなるんだよ。後は十二月までスケジュールがびっしりだ。それに二人家族だからな、カボチャを大量においておく冷暗室などない。さっさと減らさんと、一生カボチャを見たくなくなる可能性があるんだ。俺様の身にもなれ。毎日三食、学園で食べるお昼以外はカボチャだぞ。そりゃ同じメニューではないしうまいが、それでもカボチャづくしだ。想像して見ろ。いくらカボチャが好きでもさすがにうんざりする」

 知り合いの方におすそわけしてでさえ大量に残ったカボチャに困っているのだそうです。

「そういえば、うちにもカボチャ来てた」

 貴雅先輩が思いだしたように手のひらをポンと叩きました。

「あぁ。静のところにも送った」

「それで昨日はやたらとカボチャだったのか…」

 よほど困っているのでしょう、うちと飯塚家ももらうことにしました。


「昨日なんか、カボチャに押しつぶされる夢をみて目が覚めたんだ」


 相当大変なようです。

 

 そんなわけで来週二年生をのぞいた生徒会全員で遊びに行くことになりました。


 あれ? そういえば何か途中でずれたような気がします。

 気のせいでしょうか。



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