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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百十七話 楽しいことは良いことです


 先輩たちの様子をみていた真由ちゃんが、突然お腹を抱えて笑い出しました。


 あれ? そんなに笑える要素がありました?


「真由ちゃん?」

「ごめ…っ」

 そう言いつつも笑っています。

 張り出された順位表を見に来ていた三年生や、通り過ぎようとしていた三年生が驚いたように立ち止まって真由ちゃんを見ています。

「うくっ…」

 笑いを抑えようとして口から可笑しな声が漏れました。

 ぶふっと結局噴出して、あははははははははははと三年生フロアの廊下に真由ちゃんの笑い声が響きわたっていますよ。

 その笑いに興をそがれたのか、三人が一度は唖然としたものの苦笑いしてその様子を見ていました。

「真由ちゃん、大丈夫?」

「お、お腹…痛いっ、ふふふふ」

 ふふふと笑った後に笑い出すものですから、“ふぁっはっはっは”となって、どこの黄門様ですかと聞きたくなる笑いになっており、とうとう私たちもつられて笑ってしまいました。

 笑いって、つられますよね?

 何故か他の三年生も巻き込んで、廊下で笑いが起き。

 経緯を知らない生徒たちが何事かと三年生の廊下を覗いたため、大変な賑わいになってしまいました。

「何をやっているんだ、お前たちは」

 後から来た静先輩に呆れられましたが、何しろ笑いが止まらず少し納まったものの、あちこちで「くくく」という声が聞こえています。

「晃、お前風紀委員の仕事はいいのか」

「今から…くっ…行く…くくくっ」

 貴雅先輩もすっかり元気になったようで、ニコニコと笑っています。

 真由ちゃん効果ですね。

 良かった良かった。

「真由ちゃん、もう大丈夫?」

「うん…何とかっ」

「それじゃ、生徒会室に行こうか」

「うん」

 真琴も涙目で頷きました。


 その日の生徒会へ三年生の先輩(匿名)からメールが届いていて、何故かお礼の言葉が書いてありました。

 十位以内に入れなかったことに暗澹たる気持ちでいたところ、あの笑いに巻き込まれて笑ってしまったのだそうです。

 なんだかスッキリしたと書かれていました。

 

 笑いってすごいですね。


 その他にも笑って楽になったというメールや、楽しかったというメールが複数寄せられて。

 真由ちゃんが驚いていました。


 さらに驚いたことに。


 その一週間後には“笑い部”という部活の申請がありました。

 意外に三年生の名前が多くて驚いたのですが、二年生や一年生の名前もありましたし人数も問題ありません。

 三年生、引退しているはずの時期なのですが。

 三年生の人数を差し引いても“部”として成り立つ人数なので許可することになりました。

 落語研究会とコラボするとか話が進んでいるようです。

 それなら落研に入ればいいんじゃない? という声も上がりましたが。

 いろいろな笑いをテーマにするそうで、ものすごい枚数のレポートが静会長のもとに届けられていました。


「ぜひ来てくださいね!」


 許可の知らせを受けて二年生の部長さんが真由ちゃんと握手をして、それは素晴らしい笑顔で去って行かれました。

「楽しそう」

 うん、本当に楽しそうです。


 同じ日に許可の知らせを受けた応援団団長甲田先輩が「そっちの方が良かったかなぁ」と冗談交じりに言ってました。


 はい。

 話し合いの結果“応援団”という名前になることに決定しました。

 つまり応援団の方は“応援団部員”ではなく“応援団団員”となるわけです。

 長く続くと良いですね。

 

 

 笑い部の方が部室が広い方を宛がわれたので、甲田先輩が多少の文句を言いましたが。ホールなどの使用を優先的にするという約束で折り合いが付きました。

 すみません。

 何しろ応援団団員より、笑い部の方が人数多いんです。

 広いとはいえ、全員が集まったらきっとギュウギュウかと思われます。

 まあ、三年生が抜けることを考えてというのもあるのでしょうけど。



 その部屋いっぱいの生徒が、笑っているところを想像して。


 何となく楽しくなってしまうのは、私だけですか?

 


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