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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百十五話 父との遭遇



「陽向。紹介してくれないかな?」

 チャキリとサングラスを外して父が言います。

「は、はい。泉都門学園の一学年上の日向先輩です」

「初めまして。日向凛樹です」

「初めまして。陽向の父の水崎学です。陽向がいつもお世話になっております」

 ゴクリと日向先輩が唾をのみこんだのがわかりました。

「いつも送ってくれているんだってね。華から聞いています、ありがとう」

「いえ、僕が勝手にしていることですので」

 父の視線を受けて、日向先輩は瞬きをした後うつむきました。

「お父さん? 今日は早いんですね」

「うん。陽向と夕食をと思ってね。急いで帰ってきた」

 父がニッコリと微笑むと、道を歩いていた主婦の方の顔が赤くなりました。

 うん、人も増えてきたし行列ができる前に家に帰りましょう。

「お父さん、帰りましょう」

「あ、ああ。彼はいいのかな?」

「先輩、ここまでありがとうございました。父もいるので大丈夫です。失礼します」

「あ、陽向」

 日向先輩が何かを言いかけましたが、ここは逃げるのみです。

「行きましょう、お父さん」

 腕を引いて歩き出しました。

「陽向、本当にいいのかい?」

「良いんです」

「そう」

 少し離れてから「陽向、また明日!」と大きな声が聞こえました。

 振り返って頭を下げると、嬉しそうに日向先輩は微笑んでいました。

 そんな風に笑わないでください。私は何もお返しできません。


 うつむいて、ふと父の手にビニールの袋があるのに気づきました。

「もしかしてプリンですか?」

「うん。新作見つけた」

 無類のプリン好きめ!

「陽向の好きな抹茶プリンあったから買ってきたよ」 

「ありがとうございます!」

 私も何だかんだ言いまして、プリンが好きです。

 父の影響ですよね、これ。



「生徒会の人とは違ったタイプだね」

 家も間近というところで、父が突然そう言いました。

「日向先輩ですか?」

「うん」

「そうですね、とっても強引です。晃先輩も強引だなって思ってましたが、全然違いますね」

「そう」

「図書委員長なんですよ。後、もう少ししたらできる応援団にも入るようです」

「応援団って体育祭の時のかい?」

「はい。正式に申請されましたし、人数にも問題がないのでテストが終わったあたりで発足されるのではないでしょうか」

「そう」

「テストでも上位みたいですよ、生徒会の皆さんもそうですけど、いったいどんな脳みそしてるんでしょうね」

「陽向」

「はい?」

「楽しそうだね」

「え?」

 ふふふと笑って父は私の手を握ります。

「今日はね、すき焼きなんだって。悟も呼ぼうかと思ったんだけど、テスト期間中だから断念するって言ってたよ」

 ということは飲み会ですね。

 父と龍矢さんと華さんが集まってお酒を飲むと、トンデモない量が消えていき、これに悟さんが加わると恐ろしい加速度になります。

「テスト期間中に担任が生徒の家に来ると色々問題がありますからね」

「ああ、そういうことか。それでも飲みたかったんだろうね、唸ってたよ」

 二人で笑って玄関に入ると、華さんが出かけるところでした。

「買い物ですか? 一人で?」

「卵! 卵忘れちゃったの」

「それなら、僕が買いに」

「いえいえいえいえいえいえ、どちらにせよ龍矢さんがいないと危険です。私が行ってきますから」

「陽向を一人で行かせるわけには…」

「二人がスーパーに行くよりは安全です!」

 人が少ないコンビニならまだしも、スーパーは危険です。危険地帯です。

 玄関でそんな言い合いをしていると、折よく龍矢さんから電話がかかってきました。

 なので龍矢さんに卵をお願いすることとなったのです。


 お疲れでしょうに、すみません龍矢さん。

 

 


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