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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百八話 事件です?



 四時過ぎには仕事を終えてしまい、三人でソファに座ってドーナツを食べていました。

 豆乳で作られたドーナツで、カフェで定番人気のメニューです。


 もぐもぐ他愛無い話をしながら食べているのですが、さすがに先輩たちが来ないので口数が少なくなっていきます。

「さすがにおかしいよね、どうしましょう」

「うーん、メールしてみる?」

「ここまできたら電話の方がいいかも」

 顔を見合わせて私たちは頷きました。


 真琴がまさに今かけようとした時でした。


「うわっ」「きゃっ」「わっ」


 着信の音が鳴って携帯を落としそうになりました。

 三人の携帯にメールが届いたのです。

 開いてみると、静会長からです。

「会長から?」

「うん、真由も?」

「うん」

 件名に一年生へとなっています。

「明るい内に帰るようにって書いてある」

「私は、自転車を置いて車で帰れって書いてある」

「…やっぱり何かあったのかな」

 こういうメールが届いたということは、もう今日は生徒会室には来ないのでしょう。

 仕方なく後片付けをして生徒会室を出ることにしました。

 真琴たちは寮なので玄関で分かれます。

 車でとは言われましたが、まだ明るいので自転車で大丈夫。

 運転手さんがいる詰所に連絡をして車は出さなくてもいいことを伝え駐輪場へと向かいました。


「今、帰り?」

「……日向先輩、待ち伏せじゃないですよね?」

「応援団のことでちょっと遅くなっただけだよ」

「あぁ、すみません。まだ話し合いができてなくって」

「急がないから大丈夫だけど。今日は早いんだね」

「よく分からないのですけど、何かあったみたいです。明るいうちに帰るようにと」

「…そう。それじゃ途中まで送るよ」

「いえ大丈夫です」

「陽向、如月会長が何もないのに君たちに早く帰れとは言わないだろう。心配だから送る」

「でも」

「ストーカーみたいに僕が後ろから着いていって嬉しい?」

「……わかりました、お願いします」

 駐輪場に結構生徒が集まってきているところをみると、生徒全員への通達だったようです。

 部活も途中で切り上げて下校させているのですね。

 やはり、何かあったようです。


「行こうか」

「はい」


 門を出て自転車を押しながら歩き、応援団や本の話をします。

 いつも通りの帰り道なのに、そわそわしてしまいました。

 家の前までついたのでお礼を言って自転車を物置にしまって出ると、まだ立っていました。

「陽向、明日の朝迎えに来るから」

「は?」

「危険は下校途中とは限らないからね」

「いえ、大丈夫です」

「僕と登校するのが嫌だったら、車に迎えに来てもらうんだ」

「ですから…」

「陽向」

 真剣な目に動けなくなった私を日向先輩は抱きしめました。

「なっ、日向先輩離して」

「お前は、俺が守る」

「…っ」

 俺…という言葉に驚いて顔を上げると、額にキスをされました。

「ちょっ、なっ」

「ここで見ているから、早く中へ入れ」

「命令されなくても入ります」

 なんですか急に言葉遣いが変わっちゃって!

「入りますから、放して」

「もうちょっと」

「もうちょっとじゃないです、はーなーしーてー!」

 ご近所さんの目というものがあるのですよ! それでなくとも、まだ明るいのに!

 そんなに強い力じゃないのに、逃げられないんです。

 腕を捻ろうにも背中に回されちゃってますし、足の先を踏もうにも私の足を挟むようにして立ってますし、最後の手段で顎に頭突きをかまそうかと思ったのですが覚られてしまい頭をホールドされました。

 くううう。

 龍矢さんに習ったことが使えない!


 そんな体勢で数分抱きしめられた後、ようやく放してもらえたのは良いのですが。

 お隣の家の方とばっちり目があってしまいました。


 なんたる失態。



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