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私は急に止まれない。  作者: 桜 夜幾
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第百四話 体育祭が終わりました



 全ての競技が終わりポイントを集計した結果。


 白組が勝ちました!

 本当に僅差だったのですけど、何とか白組勝利で終わることができました。


 外用の椅子を片づけるのは、体育委員です。私たちはテントを解体したりゴミ拾いをして終わります。

 ついさっきまで賑やかだったグラウンドが、一気に寂しくなりましたね。

 落とし物なども回収して、私たちは生徒会室に戻りました。

 今日の反省会をして生徒会室をでる頃には、他の生徒の皆さんも帰寮か下校しています。

 晃先輩と話をするはずだったのですが、急用が入ってできなくなってしまいました。後日連絡するとは言われましたが、どうやらこれから県外へとでなくてはいけないようでした。

 挨拶をして生徒会室を出た後、生徒玄関で靴を履き替えて外へ出ると、日向先輩が立っていました。

「遅かったね」

「…っ。反省会がありましたので」

「へえ。意外に真面目なんだね生徒会って」

「真面目ですよ。仕事はきちんとしています」

 少しむっとして言い返すと、日向先輩は笑いました。

「そっか。それは失礼した。ところでこれから帰るところだよね?」

「そうですが」

「じゃあ一緒に帰ろう」

「は?」

「は? じゃなくて一緒に帰ろう…ね?」

 そういえば日向先輩も外部生でした。

「一人で帰れます」

 私は駐輪場の方へと急ぎました。

 日向先輩はその後を付いてきます。

 自転車の鍵を外して振り返ると、ニッコリ笑って待っているのです。

「そもそも帰り道が同じかどうかわからないじゃないですか」

「うん、そうだね。で、どっち?」

「……」

「別に遠回りして帰ってもいいんだ。ただもう少し一緒にいたいだけ」

 自転車を押して門のところまで行きました。

 駐輪場から乗っても良かったのですが、なんとなく気が引けたといいますか。

 門を出れば自転車に乗って置いていくつもりでした。

 守衛さんに挨拶をして、門を一緒に出ると壁に寄りかかっていた人がこちらに声をかけてきました。

「陽向」

「あ、龍矢さん?」

 守衛さんが顔を出して警戒したので、私の伯父だということを伝えて戻ってもらいました。

「どうしました?」

「新しいのを教えて欲しいなんてメールが来たから、華が心配していた」

「あ、すみません」

 まさか隣に立っている人のせいですとは言えませんよね。言った方がいいでしょうか。

「陽向」

「はい」

「そいつは誰だ?」

「あ、ええと」

「日向凛樹です。初めまして。今のところただの先輩です」

 今のところって何ですか!?

「そうか。俺は陽向の伯父だ。一番最初の壁だと思ってくれていい」

「なるほど」

 壁!? 何の壁ですか!?

「陽向、行くぞ」

「あ、はい」

「また明日ね、水崎さん」

「さ、さようなら」

 頭を下げて龍矢さんの隣に行くと、珍しく龍矢さんが笑いました。

「龍矢さん?」

「おもしろい」

「え?」

「いや、すまない。笑ったことは華には言わないでくれ」

「はあ」

「何だかんだ言って、華も心配性だからな」

「そうですねぇ」

「あいつか? あいつに会ったから新しいのを覚えたいのか?」

「新しいのもそうですけど、もう少し訓練をしっかりとしようかとおもいまして。油断して逃げられなかったので」

「逃げたいのか」

「だって」

「俺に視線を合わせてあんなことを言う奴は他にいないと思うぞ」

「それは龍矢さんが睨むからですよ」

「俺の睨みで怯むような奴に、陽向は渡せないな」

「龍矢さんの睨みに怯まない人なんていないんじゃ?」

「さっきの奴は怯まなかったがな」

「うっ」

 思わず立ち止まると、龍矢さんが振り返りました。

「学と華が、体育祭の話を楽しみにしているから。早く帰ろう」

「…はい」

 自転車を押して歩き出すと龍矢さんが並んで歩きます。

「さっきの奴とはいつ出会った?」

「…はっきりと認識したのは今日ですよ」

「……。今日?」

「はい」

「今日出会ってすぐ?」

「はい」

 さすがに龍矢さんも驚いたようでした。

「そうか」

「出会ってすぐって信じられないというか…」

「あぁ…しかし、それについては俺は何も言えないな」

「え?」

「俺も華に一目惚れしたからな」

「えっ!?」

 それは初めて聞きました。

「そういえば、お二人の馴れ初めって聞いたことないですね」

「そうだったか? まぁでも華に一目惚れしたのは俺一人ではなかったし、アプローチしたのも俺だけじゃなかったから」

「そうでしょうねぇ」

 結婚した今でも、求婚される華さん。

 今でも買い物に行く時は龍矢さんがいないと、まっすぐ帰ってこれないのです。

 私を妹だと勘違いする人もいるくらい、華さんは若い!

「一応、帰ったら教えてもらえますか?」

「それはかまわないが…華には自分で話すように」

「ううう、はい」


 龍矢さんはまた笑って私の頭をなでてくれました。



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