第百一話 応援団“部”結成?
今年ラストです。
拍手&コメントありがとうございました。
季節がずれたまま話が続きますが
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
「みんなーご苦労様!! 最高に格好良かったよ!」
「おおおおおっす」
やっぱり練習は大変だったのでしょう。
終わってホッとしたのか、数人いる女子が泣いていました。
「水崎さん」
耳元で低い声がして思わず「ひっ」と言ってしまいます。
振り返ると白組団長様。
いつの間に後ろに!
「どうだった?」
「み、皆さんカッコ良かったですよ」
「僕は?」
「うっ」
「ねえ、僕は?」
聞かざるはもう使えないので、その場を逃げようとしました。
「あ、水崎さん」
「は、はい?」
甲田先輩がニコニコと近寄ってきます。
「泉都門ってさ、部活に入っていても研究会とか同好会に入れたよね?」
「はい」
「今、結城先輩にも話したんだけど、応援団を同好会みたいにできないかなって」
「あぁ。書類を提出していただければ、大丈夫かと。でも、人数多いですよね」
「うーん、部活になっちゃうかな? 全員ではないんだけどさ。十名以上はいるかも」
「初めて作る部なので、どうなるかわからないです。そもそも応援“団”ですよね」
「うん、一応書類貰ってもいいかな」
「わかりました。修斗先輩にお願いして甲田先輩に
渡してもらいますね」
「頼むね」
「新しい部を作るための注意事項が書かれた書類も一緒に渡されると思うので、きちんと読んでくださいね。二度手間になりますから」
「了解。ってことは読まずに提出する人が多いんだ?」
「半々でしょうか。却下された部もありますよ」
同好会研究会は結構申請が多いですが、意味の分からないものが結構あって、ほとんどが却下されます。一つの部活が二つに分かれて作られたりする場合もあって、そういう場合は話し合いをもうけることになっています。
「水崎さん?」
また耳元で囁かれて振り返ろうとしたとき、日向先輩の顎が私の肩に乗りました。
「ひ、日向先輩!?」
「更科のこと、下の名前で呼んでるの?」
「えっ? は、はい。修斗先輩だけではなくてですね、全員ですよ全員」
「ふうん」
「あの、顎どけていただけると嬉しいのですけど」
「そんなに体重かけてないよ」
「いえ、重いのではなくてですね」
「重くないならいいでしょう」
「あの…」
「じゃあ、抱きしめていい?」
「だめですっ!」
私が慌てて逃げると、顎が肩からはずれた先輩が少し体制を崩して「おっとっと」となっていました。
「今度は逃げられたね」
「一分ですか」
「そ。もう少し遅かったら…」
「ぐっ」
思わず拳を握って肩を怒らせていると、甲田先輩のため息が聞こえました。
「イチャイチャするなら、よそでやってくれないかな」
「イチャイチャなんてしてません! 私、生徒会の仕事があるので戻りますね。皆さん、お疲れ様でした!」
龍矢さんに電話をして、今日家に来て貰いましょう。そして新しい技を教えてもらうことにします。
何としてもその技を習得しないと!
急いで靴を履いてテントへと戻りました。
「お帰り陽向ちゃん。もうそろそろ借り物競走に出場する生徒に呼び出しがかかる時間だよ」
「えっ、もうそんな時間ですか?」
慌ててメールを書いて龍矢さんに送信した後、電源を切って鞄に入れました。
「それじゃ、行ってきます」
「がんばってねー」
静先輩と貴雅先輩はリレーに出るそうです。
真琴は八百メートルで二位、真由ちゃんが二人三脚で三位でした。
晃先輩は私と同じ借り物競争とリレー、スプーンレースです。
泉都門のスプーンレースは卵やピンポン玉ではなく、ビー玉です。
芹先輩はといいますと、大玉ころがしだそうで…。
最初、聞いたときは「大玉ころがし!?」と叫んでしまいました。
「高等部でっていうのは珍しいですね。どちらかというと運動会のイメージが強いのですが」
「それがねえ。泉都門の大玉ころがしは、トラックを走るんだよ」
「はあ?」
「それでね、扱いを間違えると生徒がいるところへぶつかっていくわけ」
「柔らかい素材でできているが、障害物も置かれるのでアッチコッチへ行ってゴールするまで大変なんだ」
芹先輩と静先輩がため息をついて言うので、相当大変そうですね。
お互いの玉をぶつけたりして、余計にとんでもない方向へ飛ばしてしまったりと、見物している生徒たちもノンビリとは見られない競技になっているそうです。
誰ですか、発案者は。
絶対参加しないようにしましょう。