第百話 白組の応援です
紅組の応援が終わって、今度は白組の応援が始まります。
白組団長がこちらに視線を向けましたが、目が合う前に私は違うところをみました。
ドオオオオン。
太鼓の音が響いて、白組の応援団が位置に着きました。
「一同、礼!」
キャーーーーと声があがります。
「白組のぉーーーーーっ、勝利を願ってーーーーっ、さんっさんななびょおおおおおおおおしっ!」
うおおおおおおおおおと声が上がると太鼓の音と共にキビキビと動く応援団。
思わず、じっと見てしまいました。
結城先輩から、事前に音楽は使わないと聞かされていたので、どんな応援になるのかと思っていました。
「古き良き応援団を目指してみたの。どう?」
いつの間にか近くに来ていた結城先輩が耳元で言ったのでびっくりして顔を上げると、また「うふふふふふふふふ」と笑ったので、思わず顔をひきつらせてしまいました。
「水崎さん、日向君に見とれちゃってた?」
「ちっ、ちがっ…」
「来年以降も続けて欲しいわあ。それにしても、私の作戦大成功よね」
「作戦?」
「そう。外部生にだってイケメンはいるのよ。生徒会ばかりモテさせるにはもったいない隠れている逸材をもっともっと発掘するわよ」
「はあ」
「生徒会にあなたが入ったことで、外部生の二、三年生が結構衝撃を受けたの知ってる?」
「衝撃ですか?」
「そう。内部生ならともかく外部生の子が生徒会に、それもワザワザ役職を作ってまでなんて。今までだったらあり得ない。だから、これからどんどん変わっていくのかもしれないわ。そのきっかけの一端を担いたいわけ」
瞳が輝いています。
いいですね。
好きなことを頑張れるのって。
私もそういうの見つけられるのでしょうか。
「あ、ほら。こっち見たわよ」
「うっ」
最後の演舞で、ちらっとこちらを見た白組団長は最後の最後、その場でバク転をしました。
「ひゃああああ。やってくれるじゃないの日向君!」
どうやら予定には無かったようです。
紅組団長の甲田先輩が苦笑いしていました。
両方の応援団に盛大な拍手が送られました。
「はぁぁ」
うっとりと結城先輩がため息をついて何故か私に抱きつきました。
「結城先輩?」
「終わっちゃったー!」
時間をかけて作り上げた集大成が終わってしまい、感極まったようです。
「皆さんホールに戻るのでしょう? 結城先輩も一緒に戻って何か声をかけては?」
「うん、そうだね」
そう言って私を放してはくれたものの、何故か腕をつかんで引っ張りました。
「結城先輩?」
「もちろん水崎さんもよねっ」
「私は生徒会の仕事が!」
「どうしたの陽向ちゃん?」
「芹先輩! あのっ!」
「一条くーん。水崎さん借りるねー」
「あ、はい」
「そんなあああぁぁぁぁぁ」
何度も逃げようとしたのに、腕をがっしり捕まれて逃げられません。
一度手を捻って腕を逃れようとしたら、とても痛がったので力を抜いてしまい、そのまま連行されました。