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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある魔法少女の人生

作者: うんこマン

残酷な描写、及び虐めなど、不健全な描写あり。

あとうんこも。

そういうの嫌な人はブラウザバックして欲しいと思うんこ。

 ☆登場! 魔法少女ぷりぷりボトン!



「いけない、遅刻しちゃう!」


 食パンを咥えながら器用に喋り、その上走ると言う派手なアクションまで同時にこなすは私、八木(はこ)()

 公立ぽっとん中学に通う、普通の女の子……でした。昔は。


 いいえ、昔、なんて言い方は私みたいな若造に許される言葉遣いではないでしょう。

 生まれてからの年月が15年にすら届かない若輩者が懐かしむ昔などあるものか。

 でも、昔と言いたい。


 だって今の私には、あの頃の生活はあまりにも遠い過去だから。

 そう、今は……ん?


「きゃー!」


 遠くで悲鳴が聞こえる。

 それに、悲鳴の直前に感じた波動。

 こ、これは?


『ハコネ! 滅菌獣の気配だクソ!』


 まさか、と思った時には私の鞄からピョコリとピンク色の体色の妖精、私のパートナーのウンチョスが出てきて叫びだした。

 ウンチョスの気配察知能力は私の比ではないから、私の疑念は確定となったと言っていい。

 ピンクで巻き巻きしたデザインの妖精ウンチョス、その体臭はデザインに酷く似合ったものだけど、自分の敵に対する気配察知能力だけは本当にすごいものだから。


「ウンチョス、わかったから風上に浮くのはやめて」


 私は鼻を抑えながらもそう言うしかなかった。



 ウンチョスはこの世界から近くて遠い、重なった別次元にあるというクソバッカ王国からやって来た妖精なんだって。

 今から2ヶ月前、ゲーセンの帰りにお腹を下して友達と別行動でコンビニのトイレを借りたのが運の尽き、というのかしら。

 私は、偶然そこに転移したウンチョスが最初に出合った現地人、という事でウンチョスのパートナーに択ばれてしまったの。




 この世界は複数の魔の手に狙われている。

 宇宙人、地底人、異世界人、怪獣、超獣、悪魔超人、神、魔物、モヒカン。

 さまざまな勢力が入り乱れる世界であるがゆえに、一度本格的な戦いが始まれば被害は想像するのも憚られる程の物になるだろう。

 それが理由か、この世界を狙う者たちには不思議な暗黙の了解がある。

 どの勢力からも、この世界に一度に出せる勢力は単一の個人化かグループだけ、尚且つ一つの縄張りに入れる勢力は二つまでで、他の縄張りに手を出して地上での勢力を拡大させたいのであれば、まずは同じ縄張りに居るライバル勢力を倒さなければならないと言う不思議な取り決め。


 例えば、ある地域を足がかりに世界征服を企む組織Aが有ったとして、その組織は最初にその地域を手に入れる為にその地域に居るヒーローを倒す必要がある。

 そして、そのヒーローは隣の地域の住民が悪の組織Bによって虐げられていても、悪の組織Aを倒すまでは隣の地域の人たちの助けを呼ぶ声に応えることも出来ずに見殺しにすることしか出来ない。

 だいたいそんな感じ。

 ちなみに悪の組織同士が同じエリアでしのぎを削る事も、無くはないけどかなり少ないし、同じ悪でも方向性の違いから現地住民に親しまれやすい悪はヒーロー扱いになったりもするけど、それはここでは関係ないお話。


 とはいえ、この世界は広い。

 日本は狭いとか大阪は日本一狭いとか言われちゃ居るけど、とても広い。

 そして沢山のエリアに分かれているので、意外と『悪の組織とそれと戦うヒーロー』と言うのが揃っていない土地も沢山あって、私の住んでる土地もその一つだった。


 そう、『だった』、つまり過去形。


 私がウンチョスとであったその日に前後して、この町にも世界を蝕む悪がやって来たの。


 不思議な事に、どこの地域でも正義と悪に分かれたりするんだけど、侵略者というのは不思議なもので、もう一つ反発する物があって。

 それは一種の主張。


 例えば、悪の組織Aは科学の力で世界を征服したいと言えば正義のヒーローAは大自然の力、ナチュラルボーンパワーで悪をタコ殴りにしたがるように。

 例えば、悪の組織Bがバイオサイボーグで獣と人を融合させたようなモンスター女で女の子を襲いたがるケモレズ軍団なら、正義ヒーローbはサイボーグボディでチキチキキュウンとデータで快感をやり取りするのが好きなメカレズ軍団として悪の組織を邪魔したがるように。


 私の町のヒーローと悪の組織もまた、正義と悪、そしてもう一つの相反する主張をぶつけ合って戦う運命にあるのだった」

『運命にあるのだった、じゃないクソ! ハコネ! とっとと変身してクソったれな滅菌獣とそれを操る無菌共和国のクソにクソをクソほど食わせてクソにしてやるクソ! クソァ!』


 どうやら途中から私のモノローグは声に出ていたらしい。

 でもそれは責められる事じゃないと思う。

 そのくらい、私の状況は酷いもの。


「……ち、遅刻しそうだから学校に行っていい?」

『良いわけ無いクソォォォオオオ! クソッ! クソッ! クソァァアア嗚呼!! ハコネッ! このクソ野郎! いや、女だからクソ女! クソ! 女! クソの女クソ! 世界を狙う悪の組織と戦う使命と学校に行くの、どっちが大事かも分からないクソクソ? ハコネの脳味噌はクソだクソ! いや、クソの方がマシクソ! クソ詰め込んでクソだけ食ってクソに倣うクソ! クソが! いいクソ? ハコネがクソみたいな学校に行くのを優先したらこの町が清潔になりすぎて、人は綺麗なトイレじゃ申し訳ない気分でクソも出来なくなるクソ! クソができない人間なんてクソ以下だクソ! 世界からクソがなくなったら人はケツの穴から何を出せば良いクソ! そうならないためにも、ハコネはクソの力でクソ以下のカスにクソを食らわせてクソにしてやらなきゃ駄目なんだクソ! クソミソテクニックでクソを味噌にしてお茶の間にお届けクソ! クソァ!』


 私のパートナーのこのウンチョス、下品である。

 声もでかい。


 あの日、私が出合ったパートナーとなるウンチョスはクソバッカ王国からやって来た妖精で、世界を悪の手から救う使命を持っている正義サイドの存在。

 正義サイドの存在にも幾つかの種類があって、他のタイプの説明はめんどいから勝手に想像してもらうしかないけど、ウンチョスはいわゆる『魔法少女タイプ』に当たるんだって。

 魔法少女タイプ、とは言うけど別に少女じゃなくて少年や人妻がパートナーに選ばれる事も有るけどあくまで大別なだけで、少女って言葉には意味はないけど。

 で、その魔法少女タイプとは、異世界から来た妖精は基本的に本人に戦闘能力が無かったり、あるいはこの次元で存在するための体では戦闘が出来ないとかの言い訳を盾に、パートナーとなる存在を変質させて戦わせるタイプのヒーローだったりする。


 ウンチョスのパートナーである私もまた、魔法少女となって戦う事を運命付けられてしまって……泣ける。


 この町は、異世界にある無菌共和国なる国に狙われているんだって聞いた。

 無菌共和国は、クソバッカ王国と同じ次元世界にある国で、清潔第一、この世にあるあらゆる菌を許しませんと言う存在。

 それだけ聞けば清潔でいいじゃんって思うけど、何事もやりすぎは良くなく、体内の細菌に至るまであらゆる菌とつく物を滅ぼすのが使命と言うカルト集団だそうで。

 それと対立するクソバッカ王国は、下品で汚く、自分たちの世界で戦えばいいのに何を血迷ったか、私達の住むこの世界を代理戦争の場として択んじゃったんだって。

 良い迷惑だわ。

 無論、無菌共和国の狙いはこの町だけに留まらず、この町を制圧したら周りのエリアにも手を広げ最終目標は世界から菌を消滅させて滅ぼすというものだったりするので、放っておくわけには行かない。

 だから私は戦わなければならない運命にある。


 ここまで聞けば、だったら黙って言う事聞いて戦えばいいじゃない、って思うよね。

 でも、私が魔法少女として戦うのがイヤになる要素が有るのもわかってほしい。


『クソ発見ぇぇぇぇぇんっ! だクソ! 猫のクソっぽいクソ! 湯気のたち具合からして新鮮うんこクソ! 別にクソの状態に影響されるモノはないけど幸先良いクソォ! ハコネッ! 勇気の人差し指だクソ!』

「ぅぅ……や、やらなきゃ駄目なの?」

『駄目に決まってるクソ! さぁ、やるんだクソ!』


 ウンチョスがやかましいせいで、周りの人たちがメチャ注目してる……散ってほしい。

 とっとと散って欲しいよ。


『ハコネッ! やるんだクソ!』

「わかった! もう、やるよ! やるわよ! やれば良いんでしょ! だからもう名前を連呼するのやめてよ!」


 周りの人たちの「何だあれ」「パフォーマンスか?」「いやいや、あれってアレだよ」「あぁ、アレ」「ふーん、ハコネって言うんだ。思ったより普通の子だな」という声がイヤでも聞こえる。

 魔法少女たる私はすでに五感も身体能力も人類の限界を超越しているから、周りの人々のざわめきの声も一つ一つくっきりはっきりと聞こえてしまうのが呪わしい。


「勇気の力でいざゆかん! 悪を倒すはこの一押し! これぞ勇気の人差し指!」


 高らかに叫び(一定以上の音量でなければ駄目らしい)私はピンと立てた人差し指で、ウンチョスが発見した道端に落ちていた猫のうんこに触れる。

 これが、勇気の人差し指。

 うおー、と上がる聞きたくも無いのに聞こえる歓声。

 あんたらそんなに女子中学生が猫のうんこを押すのが楽しいのか。



 途端に猫のうんこは光の粒子に。

 説明は面倒だからしないけど、この光はもう色々ファンタジーな力できちゃなくは無くなるんだそうで。

 金に輝く粒子となったうんこはうんこに非ず、だから私の体にまとわり付いてもなんら不潔じゃない。

 無いったら無い。


 キラキラ輝く粒子の中で、私の衣服はポコンピコンと音を立て消えていくけれど、私自身の体は不思議なモヤがかかった感じでエロさをガード、してくれてるらしい。

 客観的に自分を見れないのでウンチョスを信じるしかないのだけど。

 そして私はクルクル回りながら、手袋やニーソックス、フリルの付いたミニスカートにお腹が露出する裾が短く、リボンやらなんか羽やらの装飾が付いた服を着たりして、両の踵をトンと合わせたらポコンと音がして靴が具現化したりして、まぁよく有る魔法少女的な恥ずかしい服装へと変化していく。

 最後は茶色い3段重ねのベレー帽……うんこにしか見えないソレを頭に引っ掛ける形で、だけど何故か落ちないという不思議な乗せ方をして変身完了。


「生命循環の最終到達点! うんこの力でブリッと解ケツ! ユカイ快便ベンリなヒーロー! 魔法少女ぷりぷりボトン、ただいま参上! 悪い子の食卓には味噌を並べちゃうぞ☆」


 そしてこの口上と、口上に合わせてウィンクしたり小ジャンプしたり横ピースしたりの恥ずかしいアクションである。

 これオート。

 オートじゃなければ5000円積まれたってやらないよ。


「ぶっ!」

「くっ、な、何アレ」

「あ、アホだ、アホがおる」

「毎度毎度よくやるよなぁ、ハコネちゃんも」

「恥ずかしくないのかね」

「近頃の女子中学生は良くわからんね」


 ポーズの硬直が解けるのに3秒、その間に聞こえる数々の嘲笑の声は、何度味わってもなれることは無い。

 ていうか本名バレして覚えられてるし! もうやだよ……


『ボトン! 滅菌獣を殺しに行くんだクソ! 世界を救えるのは君だけだクソ!』

「あー、はいはい! わかったわかった、わかりましたよーだ!」


 もう何もかもがイヤになる。

 だから、せめてもの腹癒せに滅菌獣、そしてそれを操る幹部も近くに居るはずだから、ボコボコにしてやらないと収まらないわ。























 ☆激闘! ぷりぷりボトンVSカビキラー!


「やれぃ! 滅菌獣カビギラーよ! まずはこの辺り一帯のカビを滅菌消毒してしまうのだ!」

「メキメキー!」


 私が駆けつけた悲鳴の上がった現場。

 そこは近所の商店街のアーケード。

 どうやら総菜屋の前で滅菌獣は滅菌作業を開始するらしい。

 知った事じゃないけどね。


「げぇっ! あれはぷりぷりボトン!」

「ていうか2丁目の八木さんの所の娘さんじゃないの」

「恥ずかしくないのかしら、あんなお腹が出た服でミニスカートはいちゃって」


 非難交じりに上がる声はご近所の人たちのもの。

 ていうか深刻なレベルで正体バレしてるよ……もうヤだ。


「むぅ、来たかぷりぷりボトン! 今日と言う今日は貴様を滅菌消毒して清潔にしてくれるわ! やれっ! カビギラー!」

「メキメキー!」


 そんなギャラリーとは違い気合の入ったたわ言を言うのは、無菌共和国からやってきた悪の幹部、聖・ケーツ。

 爽やかな細面で長い髪を三つ編みにして肩から前にたらしてるオカマ野郎だけど、見た目が日本人離れして整った顔立ちで髪は長いけど清潔感タップリな為に、近所の女性や一部男性からはとても人気なんだそうで。

 滅菌獣のカビギラーとやらは……まぁ良いわ。

 殺す相手の説明しても、ね。


「オラッ! オラッ! オラッ! オラッ! オラッ!」


 クソイケメンの命令に従って突っ込んできたクソ獣に、まずは渾身のボディアッパー!

 足を引っ掛け仰向けに倒した後は、ひたすらマウントパンチ!

 ボコる! ボコる! ボコる! ボコる! ボコる!


 ちなみに魔法少女として変質されてしまった私のパワーは東京ドーム6個分に匹敵する。

 そんなパワーを、出し惜しみもせずに殴るんだから溜まった物じゃないでしょう。

 スマートな打撃は周りに無駄な破壊をもたらさないものだけど、私はそんなもの一切考慮しない。

 私の怒りを思い知れ。


 私が殴るたびに、商店街の地面はゆれ床に亀裂が走り、その亀裂からは水が漏れたりする。

 知った事じゃないけどね。


「う、うわわ……げ、下水!? ひぃ、き、汚い!」


 そして盛れ出た水に敏感に反応するのはクソイケメンの聖・ケーツ。

 この程度で顔を青くするとか、人生舐めてるにも程があるよね。あとで便器舐めさせてやろうか。公園の公衆トイレのな。


「やめてくれー!」

「家も壊れちまう!」

「店がお終いだぁ」


 近隣の住民どもも悲鳴を上げる。

 知ったこっちゃ無い。


 私はこれでも、最初は周りに気を使って戦ってたのよ。

 だけど、周りに被害を出さないように戦っていたら、ダラダラ本気出さずに戦うから迷惑だとか糾弾する人々。

 実家にまで押しかけて、お母さんやお父さんに文句を言いまくって。

 お陰でお母さんはノイローゼ、お父さんは家を出て未だに帰らなくなって!


 そんな目に会ってまで、私は正義とやらのために、戦ってやってるんだから、一体何を遠慮する事があるというのか!

 もちろん、こんな事をすれば私に対して町の人々はより、私を糾弾しようとするけどね。

 魔法少女……に、限らず正義のヒーローは法に守られているからお巡りさんに捕まる事はないのよ。

 そりゃ正義の力を強盗やらの犯罪に使うのはアウトだけど、自衛に使う分には見逃してもらえる。

 それに気付くのがもう少し早ければ、お母さんもお父さんも、あんな風にならなかったかも知れないのに……


 そんなセンチメンタリズムに浸りながらも、私はメトロノームのように定期的に拳を打ち下ろしていたけれど、そろそろ敵も動かなくなってきた。

 殴られて反射でビクンビクンと痙攣してるだけだし、そろそろ虫の息かしら?


『ボトン! 止めを刺すクソ!』


 ウンチョスも必殺技の催促をしてるし、きっともう相手に反撃の力は無いんでしょう。

 でも念のため後100発殴る。


 マウントパンチは相手に逃げ場を与えずに殴れるけど、その分上半身だけの力で手打ちになるから精々、私の力でも数百トン程度のパンチにしかならない。

 だから私は立ち上がって、相手の足首を掴みぶん回す!

 地面に叩きつけ商店街の商店に叩きつけ、ぐるぐる回りながら多数の店舗を破壊して、ついでにいくつかの民家も巻き込んでやった。

 正義のためだもん、許してくれるよね。

 全力を出さないでダラダラ戦うのは悪いんでしょ? だったら全力を出して派手に戦う分には文句は出ないよね?

 町の人たちは泣きながらやめてと叫んでいるけど、私には何の事だか分からない。

 だって、私のお母さんやお父さんが苦しんでいる時に助けてくれた人なんて居ないんだから。

 ゆえに、私も人が苦しんでいるのを助けようなんて気にならなくて当然なのよ。


「オラッ! 死ね! クソが! クソ食って死ね! クソが! クソが! クソがぁぁぁあああ!」


 魔法少女に変身したら、少し凶暴性が増してしまうみたい。

 軽い興奮状態と言うのかな。

 変身時間が長引けば長引くほど、私は残虐性を増していくのが分かる。

 変身中の私にそれを止めようと言う気は一切無いけどね。


「トドメよ」


 そして、手足千切れて顔もグチャグチャ、胴体の中身も8割ほど欠損した敵に向かって私は止めを宣言する。

 魔法少女ぷりぷりボトンの必殺技はうんこである。

 とはいえ、まさか天下の往来でひり出すわけもあるまい。

 私は自分のへそをグリグリとほじり、へそゴマを出す。

 おへそは腸と繋がっているので、へそゴマと言うのは一種のうんこなのよ。

 本物ほどきちゃなく無いけどね。


 そして私はこれを……


「あたぁ!」


 と、敵の額深くに差し込む。

 滅菌獣の体内に入った魔法少女のうんこ、魔法少女菌は滅菌獣の細胞を食い散らかし爆発的に増殖し……


「ひでぶ!」


 と、爆発するのでした。


 一件落着ぅ!



「か、カビギラーが……お、おのれ、ぷりぷりボトン! 次こそは」


 おーっと、まだ一件落着には早かったわね。


「逃げられると、思った?」


 ヒュン、と一瞬でクソイケメンの後ろに移動した私は、クソイケメンの首根っこを引っつかむ。


「ひぃっ! や、やめろ! 触れるな! お前それ、さっきへそを穿った指だろ! へそのゴマってうんこなんだぞ!」


 甲高い悲鳴を上げるクソイケメンだけど、敵のいう事を聞くバカは戦いの世界に居ないよね? 私はそう思う。

 だから!


「クソでも食ってろやオラァ!」


 と、道端に落ちてる犬のうんこに顔面を突っ込ませたり、公衆便所の汚い便器に顔面から突っ込ませてケツを蹴り上げてくれたわ。

 大宇宙のルールとして、悪の幹部との命をかけたバトルは魔法少女の戦いが始まってから半年以上はしちゃいけないらしいから、今この場で殺す事ができないのは残念だけど、多少は溜飲も下がった物よ。


「今度こそ一件落着ぅ! ひゃぁぁぁあああっはぁぁぁあああん!」

『やりすぎだクソ』


 ウンチョスがなんか言ってるけど、聞く価値はないわね。























 ☆ぷりぷりボトンの正体、学校では秘密なの!


「八木ぃ! お前また遅刻か! 何度目だ? あぁ!?」

「す、すみません……」


 結局、私は盛大に遅刻をして現在職員室で起こられ中。

 担任の先生は体育教師でもないのに先の割れた竹刀を持ってて、怖い。


「お前の家の目覚ましは壊れてんのか? お前より遠くに住んでる奴でも皆勤賞の奴は居るんだぞ! 恥ずかしくないのか!」


 そんなの言われても困る。

 大体、その人が私と同じ境遇になったら絶対にその人だって遅刻の常習犯になるんだから。

 私だって、魔法少女始める前までは皆勤だったんだから。


「愚図の鈍間が! お前高校だったらもう退学ものだぞ? 中卒で人生終えるか? あ?」


 先生だって私と同じ境遇で同じ事が言えるというの?

 もういい加減にして欲しい。


「とりあえず反省文だ。作文用紙に最低でも20枚以上、今日の昼休みまでに提出しろ。そうじゃなきゃお前の国語の成績は1だ。100段階評価の通信簿でな」


 出来るわけないよ……でも、頷くしかなかった。






「八木さんまた遅刻ですって」

「学校来たく無いのかしら?」

「だったら来なければいいのに」

「なんか、臭くね?」

「あー『うんこ』の匂いがするな!」

「臭ぇ臭ぇ!」

「うんこさん、くっさーい!」


 休み時間、私の机の回りに人は居ない。

 うちの学校は隣の席の相手でも、机をくっつけあう事はないんだけど、それとは関係無しに私の机は前後左右斜め、全てが距離を開けられている。

 その上に、休み時間になると、私の周りの生徒はさらに机を少し、私から外にずらしてから席を立って仲良しの子のところに行くんだ。

 これが、魔法少女になってからの私の日常。


 魔法少女の正体の詮索は法で禁止されている。

 だから形式上はみんな私の事を知らない事になっているけど、本当は知っている。

 で、どいつもこいつも私から距離を取るようになった。


 それまで仲良しだった、一緒にゲーセン行ったりマンガを貸しあったりしてた子も。


 魔法少女ぷりぷりボトンは、正体隠蔽の能力をウンチョス側、クソバッカ王国が用意してなかったお陰で、中の人がバレバレ。

 それどころか、勇気の人差し指や変身プロセスも動画に上げられまくっているらしくて、学校で私の正体を知らない人は一人も居ないといえる。

 だけど、公的には私の正体は知られてないから、遅刻をしてもヒーローだからという言い分けも使えない。

 みんな、知ってるくせに好き放題言う。


 お陰で私は孤立して。

 そんな私に声をかけてくるものがあるとすれば……


「うんこさん、うんこさん、うぅぅぅんこさぁぁぁん」


 そんな事を言いながら、長い棒でツンツンと突いて来る人。

 御手洗さん。

 私はこの人が一番嫌い。


 私の名前はハコネだけど、無理をして読み方を間違えればうんこと読める。

 そして、彼女はわざと間違えて私をうんこと呼ぶ。


 彼女達は聞こえてないと思ってるみたいだけど、私の人間の限界を超えた聴覚には聞こえていたんだ。

 彼女達がかつて言った言葉。


「うんこで変身するなんて、うんこさんにピッタリじゃない、超受けるんですけどー!」

「むしろ腸受ける? ギャハ!」

「汚いわねぇ、学校来ないで欲しいわ」


 なんて言葉が。


 彼女は私をうんこうんこと呼んで棒で突く。

 私は反応しない。

 反応したら、自分をうんこと認めたんだと笑いながら指を刺して、私が怒れば先生に言うとか脅してきて。

 虐めはやめてください、何て言うんだ。



 かつて、違う地区で魔法少女の力をもった元苛められっ子の女の子が、苛めっ子に対して変質したその力で虐めに対する正当防衛と言ってミンチにした事件が有った。

 流石にその事件は大きくニュースで報道されて、それから10年ほどかけて決まったルールとして、思春期の少年少女のヒーローは、学校での虐め問題に対して力を使うことは許されません、なんてモノが出来てしまった。

 破れば、政府お抱えの最強ヒーロー軍団が粛清にやってくるらしい。


 だから私は、学校の中では何も出来ない。


「ねぇうんこさぁぁぁあああん、友達の居ない不潔な貴方に話しかけてあげてるんだから、感謝して応えなさいよぉ。無視するなんて超ムカつくんですけどぉ?」


 許されるなら、この女を叩きのめして便器のシミにしてやりたい。

 だけどそれは、私には許されていない。


 この御手洗さん、少し前までは苛められっ子だった。

 だけど、私がぷりぷりボトンだと言う事が分かるや否や、率先して私を苛め始めた。

 すると人間不思議なもので、苛められっ子は常に一人、苛めっ子は常に複数の法則でもあるのか、彼女は苛められっ子だった分際で今やそんな事実を忘れ去ったような態度で、周りからも受け入れられている。


 性格、ルックス、成績、運動能力、全てが私より劣る劣等主の分際で。

 ぶっちゃけ学校の生徒全員がそうだけど、この御手洗さんが一番許せない。


 だけど私には反撃する事も許されていなくて……私は、いつまでこんな目に会わなければならないの?























 ☆突然の急展開! わけがわからないよ……


 そんなある日、世界はガラリと色を変えた。

 比ゆ(・・)表現じゃなくて、本当に。

 空は紫に、太陽は薄暗く、目に見える自分の肌でさえ、何かしらのフィルターを通して見るような、違和感のある色へと変化した。


 色だけじゃない。

 ありとあらゆる所で、時空にゆがみが見えたと思ったら、突然そこから魔物が現れ始めたの。

 基本的なゆがみのサイズは直径50センチくらい、そしてゆがみから出てくる魔物のサイズは、そのゆがみの孔を潜れる位の物だから、基本的に大型犬くらいの大きさでしかない。

 だけど、コレが恐ろしい。

 色んなところから無差別に湧く、大型犬サイズの凶暴な魔物。

 魔物と言うのは異世界の存在の一つで、詳しくは知らないけど生物のような生物でもないような存在らしい。

 倒しても死体は残らず霧のように消えるのが普通、高魔力を持った上位の魔物なら、死後も体の一部が物質として残って、それを加工して強力な武器として使えるようになったりするらしいけど。

 そのルールの魔物とヒーローは、当然だけどこの町の存在ではない。


 なのに、それが突然現れだした。


 人々は混乱した。

 私がスーパーでノイローゼで狂ったお母さんの為に、なるべく安く栄養のある食べ物をと惣菜を物色している夕方の出来事だった。


 意味が判らないなりに、私は何か危ないと思って、急いで家に帰った。

 そこで見た景色は、私にとっての終わりの景色。


 魔物発生のゆがみは、何も無い空間に発生する事が多いけど、何かがある空間にも発生する事はある。

 その場合は、元々そこにあった物を引きちぎった上で、その引きちぎった素材を元に補強されたちょっとだけ強い魔物が出てくる物だけど、私の家の玄関の扉が、引きちぎった粘度のように抉れていて、扉を開けるまでも無く家の中が見れた。


 そこにぶちまけられていたのは、人一人分に到底足りそうにない血液と肉と、その他。

 散らばった肉片や髪が、原形をとどめていないのに、いやでも元が何であったかを判らせてくる。




 お母さんは、私がこんな魔法少女になっても、悪い奴をやっつけるんだから、貴方は誰が何と言おうと善よ、と言ってくれた。

 近所の連中や、遠くから来て文句を言う顔も知らない連中どもの心無い言葉に対しても、相手を悪く言っても私を悪く言う事だけはなかった。

 例え家の前にゴミをぶちまけられても、例えペンキで壁に悪口を書かれていても、例え町中のポスターに家族写真を隠し撮りしたらしいものを、加工してグロ映像に仕立て上げた物を面白半分に張られていても、それが全部私のせいなのに、私の事を最後まで悪く言わなかったお母さん。


 そんなお母さんが居たから、例えノイローゼで壊れても、お母さんのためなら苦しくても学校に行って、いつか良い高校に入って、良い大学か就職先かを見つけて、お母さんに恩返しをしたかったのに。


 こんな、こんな、こんな、こんな、こんな事が、あって、あって、あって、良いわけが、良いわけが……


『ハコネ! 何がどうなったか分からないけど、まずは政府に連絡するクソ! これは明らかな協定違反クソ! この土地はクソバッカ王国と無菌共和国との戦いの舞台であって、低俗な魔物が居て良い場所じゃないクソ! 俺の居場所を荒らしやがって! クソッ! 荒しって奴は一番うざいクソ! 制裁が必要クソ! とっとと行くク』


 ギャンギャンと喚くクソが鞄から出てきたけど、うるさいから握りつぶしたら静かになった。

 一体何が起こったのかわからない私は、混乱してるけど冷静で、冷静だけど混乱してて、目の前の状況が何が何やさっぱり分からない。


「グルルウ」


 魔物、マモノ、まもの。

 大型犬くらいか、それより少し大きいか?

 そんなサイズの四足獣、表面は哺乳類的じゃなくて、外骨格のような鋭角的なデザインの獣達が、異質すぎて表情も分からないそんな魔物達が沢山居る。

 人間、とかそんなカテゴリーに入る生き物を率先して襲い掛かってるみたいで、襲い掛かられる人間は逃げたり、時には何の意味も無い抵抗をして紙を破るような気楽さで命を摘み取られたりしているけど、なんだか遠くの事のように思える。


 私は冷静だから、そんな周りの景色に気を囚われる事も無く、自分に襲い掛かってくる魔物と言う名の下等な存在を、握りつぶし、蹴り砕き、殴り飛ばし、自衛する。

 私の体は魔法少女となった時に変質させられているために、変身せずとも魔法少女と同じパワーを発揮できる。

 ただ、宇宙のルールとやらに従って、敵とやらと戦うときには正装である魔法少女の姿じゃないと駄目だったらしいけど。

 でも今はそんな事はどうでも良い。


 下等な存在たる魔物。

 それを20か30か? 私が叩き潰した時には背景でしかなかった魔物が立体化し、私に注目し始めた。

 背景として、人間と言う名の下等動物を襲っていれば良かったのに。

 私に向かってきた魔物はほど無くして目に見える範囲から居なくなった。

 すると、遠巻きに私を見てた下等動物たちは私に群がってきて口々に言う。


「た、助かった!」

「ありがとう! ありがとう!」

「君が居なければ私の子供も殺されていたかも……本当にありがとう!」

「おい、あっちに人が集まってるけどそこも襲われてるんだ! 頼むよ! 助けてくれ!」


 私は混乱しているけど冷静で、でも考える時間が欲しいのにうるさいのは好きじゃなくて、だから静かにしたいと思ったから、下等動物どもを叩き潰した。


 すると少し静かになった。


 でもでもでも。

 でもね? でもね? でもね?


 私は魔法少女に変質させられて五感が鋭くなっちゃったの。

 だから遠くの悲鳴が聞こえるの。

 うるさい。


 私は冷静だけど混乱してるの。

 落ち着いて考えて、落ち着きたいの。

 あれ? 落ち着く為に落ち着く? ん? ん? ん?

 何を言ってるんだろう。

 冷静だと思ってるけど、やっぱり私は混乱してるんだろうか?


「静かにならなきゃ、落ち着けない」


 だから私は、そうしようと思った。

























 ☆いつだって私は正しい


 私がまともな思考回路を取り戻すのにかかった時間はどれくらいだったかしら。

 いいえ、今、私が『まとも』だなんて、誰が保障してくれるというのか。

 だったら私は今もまともじゃないかも知れないと言うわけで。


 でも一つ、あれから3ヶ月経った。


 あれから……そう、お母さんが死んでから。


 その3ヶ月で分かった事だけど、地球? あるいはこの世界? それを舞台に行われていた戦いに、焦れたどこかの勢力が暴走開始。

 それに追従する形で近所の勢力も暴走を初め、12時間で決着は付いたらしい。

 どこの勢力が勝ったとかは無いけど、世界はとにかく変わってしまった。

 それが旧世界の決着の形。


 人類がかりそめの平和を演出するための彩として作り上げた町並みはガレキとかし、今もそこかしこで魔物やミュータントが暴れている。

 私は気付いたら関西地方を支配する聖帝軍を自称する勢力の幹部の一人になっていた。


 お母さんからはいつでも正しくありなさいと言われて、だから私は常に冷静に、物事を一歩引いて考える限り一番正しい行動を取るように心がけていたけど、それは混乱した状態でも活かされていたみたいで。


 私はあの日、まずはうるさい者を排除して回った。

 その後、冷静に考えようとしたけどお母さんが死んだなんて思いたくなくて、でもお母さんはどうしようもなく死んでいて、悔しくて哀しくて、だから私は泣く事にした。

 自分の悲しみを表現する為に1週間ほど、飲まず食わずで大暴れしていた。


 魔法少女として変質した体は燃費がいいので、たまに少量のエネルギーを補給すればそれだけでだいぶ動けるので、体は少しも辛くなかった。

 そうやって暴れていた私は、聖帝軍のスカウトを受け、お母さんが居ない世界だけど、それでも就職をして安定した暮らしを手に入れて、死んだお母さんが少しでも安心できるようにしないといけないと思い、聖帝軍に入る事になった。


 聖帝様は元は関西の大都市のエリアの悪の組織の幹部だったらしい。

 でも天が乱れ世界が変わった時、仕えていた首領も死んだので自分を頂点とした組織を旗揚げし世界を支配しようと目論んだそうで。


 実際、聖帝さまは強い。

 タイプとしては悪魔超人か異世界人と思うけど、詳細は分からない。

 数多のヒーローや悪の軍団を相手に、常に最前線で戦って領土を広げて関西地方を支配したのだから、タイプが何であろうと強いという事実だけは確かだから、それだけ分かれば十分なのだけど。


 私は常に正しくありたい。

 今、この世界は力が支配する世界となり果てたので、私が知る限り最も強い聖帝さまはこの世で最も正しく、その聖帝さまに仕える私もまた正しいのだと確信を持てる。



 気付いたら私は自分の済んでいた町のあったエリアを治める、地方領主のようなものになっていた。


 冷静になった今の思考でおさらいすれば、私は世界が変わった当時は頭が混乱していたため、周りの人たちとの会話もいまいち意思疎通が出来ていなかった。

 とにかくうるさい下等動物を黙らせて、冷静に考えたいと思っていたんだと思う。

 だから、下衆人間や雑魚モヒカンなんかが言葉を発するたびに殺して回る、今思えば随分と危ない女だった。


 それでも肉体派魔法少女、それもチームではなくソロで戦うように変質させられた私の力は強く、聖帝さま……と、言うよりは聖帝さまに仕える副将の人が、私の周りに下等動物を配置せず、何とか効率よく私を運用しようとしてくれていたらしい。

 頭の下がる思いだ。


 それから多少は意思の疎通も出来るくらいに落ち着いた私に対し、色々と質疑応答がなされた。


 で、配下を動かす事もある程度学んだ私は、晴れてこのエリアを治める将の一人となったらしい。


 まるで他人の体験を覗いているような記憶だったけど、これは全て私の身に起こった事。

 だから私は全てを受け入れ、その上で正しく生きていこうと思う。



「ハコネさま! ハコネさまにお目通りの申し出をする下衆人間が居ますブヒー」

「ブヒーブヒー。下衆人間が分際で己をハコネ様の知己だと自称しております、ブヒー」

「ブヒー。ブヒヒー。」


 と、私が自分の身に起こった事を振り返り、そして正しく生きていこうと気を引き締めた時、部下から声がかかった。

 このエリア、最初こそ魔物の連続発生事件が起こったけど、その後に数多の勢力が入り乱れる争いを経て、ミュータント、亜人、或いは超人と呼ばれる存在にとって居心地の良い土地となったため、自然と私の配下もそういう連中が多くなる。

 そんな配下が下衆人間がどうしたこうしたと言うのも珍しい。


 人間がこの大地を埋め尽くし我が物顔でうろついていたのも遠い昔の事。

 いまや「人間」と言うのはこの荒廃した世界で己の力で生きていける者の事を指す言葉となっている。

 そのために、私の配下の連中……通称オークとか呼ばれる連中は、人間。

 で、区別する為に、かつてこの世界を闊歩し支配者面して大手を振っていた連中を、下衆人間と呼称するようになってるの。

 ピッタリな名前よね。


 で、そんな下衆人間が私の知己?

 ありえ無い事を……と、思ってハッとした。


 お母さんは死んだ、でも、お父さんは家を出て行って帰ってこなかったんだ。

 だったら、ひょっとしたらお父さんが帰って来たのかも! と。


 気付いたらこのエリアを治める将になった私だけど、周りからは気付いたら、なんていう扱いではなく、正等に認められてこの地を治める将として、私は君臨しているのだから。

 だから、お父さんは遠くからでも、私が活躍している事を知って、やってきたのかも知れない。


 下衆人間どもの嫌がらせでお母さんがノイローゼになって、お父さんは家を出てしまった。

 でも、私とお母さんが生活できていけたのは、お父さんが毎週、お金を郵便で送ってきてくれたから。

 決して多い金額とはいえないけど、それでもお父さんが私達の事を完全に見捨てないで居てくれたから、私とお母さんはあの日まで、暮らしていく事が出来たんだから。


 お母さんはもう居ないけど、お父さんが生きているなら、私はこれから恩返しが出来る!

 こんな荒廃した世界じゃ、お父さんも今まで大変だったかも知れないけど、私のところに来てくれたのなら大丈夫。

 これからの人生を、お父さんが安らかに過ごせるようにしてあげなければいけないんだ。



 私は喜び勇んで会いに行こうとした。

 でも仮にも、聖帝さまからこの地方を任された地方領主のような将としての立場もある。

 ホイホイと自分から出向く事は許されないから、私は自分の館の一室、そこの上座で座して待つ。


 お父さんお父さん。

 ああお父さん。

 早く会いたいな。

 今は下衆人間として扱われているんだろうけど、私のお父さんなんだからすぐに扱いも変わるからね。

 うん、そうすれば一緒に暮らせるよ。

 もうお母さんは居ないけど、それでも残った家族二人で一緒に暮らそう。

 大丈夫、私はもう超勝ち組人生のレールに乗っているんだから。


 そう思ってウキウキしながら私は待った。

 でも連れられてきた下衆人間()を見て、すぐに熱が下がってしまう。


 そう、共。

 下衆人間は一人じゃなかった。

 別に、お父さんが知らないうちに再婚してましたなんて欝展開とかじゃない。


 単にお父さんじゃない人たち、だっただけ。



「や、八木! 俺だ、覚えているか? お前の担任として、面倒見てやってた先生だぞ!」

「ハコネさん! 私だよ! ハコネさんの親友の御手洗! ほら、学校でも皆がハコネさんを無視する中、私だけはハコネさんと仲良くしてたの、覚えているよね?」


 やってきたのは、下衆人間だった。

 名前は……自分で名乗ったのかしら? どうかな。

 言葉が全部右から左へ抜けていくというか、下衆人間の言葉を記憶する価値無しと脳が拒絶しているのか、滑り落ちるようにこいつ等の言葉が私に届いてこない。


 ピーピーと喚く言葉を拾い上げ組み上げてみた結果、どうやら私に自分たちを保護しろとか、そんな要求をしているんじゃないかと推察できた。


「はぁ」


 久しく感じていなかった脱力感。

 お父さんに合えると思ったのに外れとか、ダメージ大きすぎるわよ。


「私は」


 ピーチクパーチクとやかましい下衆人間ども。

 その声も、私がしゃべり出すと止んだ。

 自分で止めたのなら評価できるけど、実際には部下が私の発言に気を利かせて黙らせてくれたみたい。


 私の主観じゃいつの間にかに出来た部下だけど、優秀な良い部下だわ。

 無意識でも正しくあれと生きてきた私だから、正しい人生に相応しい良い人材に恵まれる人生になったに違いない。

 そう思うと、お母さんへの感謝がより大きくなる。

 だから、私がこれから口に出す言葉も正しい発言で無ければならない


「私は聖帝さまから認められ、このエリアを支配する者。その私に下衆人間如きが、不遜なる要求をする事は認められていない」


 私のその言葉に、部屋に居た複数の部下達の首が僅かに頷いたのを空気の振動で感じる。

 そう、これが正しい行いであるがゆえに。


「だが私にも慈悲はある。そこな下衆人間ども、自害する事を許す。以上だ、下がれ」


 私の言葉に対し何故か驚愕の表情を浮かべた下衆人間に比べ、妥当な、正当な裁きに対し、部下たちの動きは滑らかであり早かった。

 下衆人間どもを抑えていた部下達はそのまま音も立てずに退出し、他の部下も下衆人間がこの部屋に居た痕跡を消すかのように床を拭き窓を開け換気する。

 正しい意思によって正しく動く存在と言うのは、見ていてとても気持ちの良い物だと思う。


「私はこれからも正しく生きていこうと思う」


 呟いた言葉は返事を期待したものではない。

 私自身に立てる、これからの人生に対する誓いの言葉だった。

以下どうでも良い設定。


 主人公は説明しなかったけど、エリアによってはヒーローが居て悪が居ないエリア、悪が居てヒーローがー居ないエリア、なんてのもあります。


 魔法少女ぷりぷりボトンのパワーは東京ドーム6個分、で、そんなパワーが有ったら日常生活困るんじゃね? とか思われるかも知れませんが、世界一力の強い力持ちが自分の子供を抱っこして力加減を間違えて握りつぶすなんて事が無いように、強大な力と言うのはそれを制御するコントロールと同居されなければ意味がないので日常生活に不便はしません。


 滅菌獣を物理的な暴力で殺すのは骨の折れる作業です。

 例えグチャグチャにひき潰してもどっこい生きてたりするのです。

 魔法少女システムの敵役はそういう理不尽なタフネスもあるため、基本的に魔法少女が相手をしなければならなくなります。

 もっとも、魔法少女との戦いに勝利したライバル勢力が他のエリアに攻め込む時にその設定は消えてしまうのですが。


 主人公は分裂症の気があります。

 そんな自分が異常者であると認識しているけど、だからと言ってどうにかできるものではないと諦めも入ってました。

 ただ、文明が崩壊したお陰で吹っ切れたみたいです。


 先生や御手洗さんは、主人公がどこぞのエリアを治める将になった情報だけでなく、主人公は正気でもないという情報を得ているからこそ、名乗り出ました。

 正気じゃないなら上手く主人公を思考誘導して自分たちに都合よく動かして、主人公が持っている全権力が自分たちの物のになると妄想して甘い夢を見た結果、ああなりました。

 ちなみに自害する許可を与えてもらったのに自害を拒否した為に拷問されて死んだとかなんとか。


 聖帝軍の次の大規模な戦の相手は旧世界で政府お抱えの最強ヒーローが中心となった軍団で、関西と関東最大の勢力同士のそれはもう派手な戦争となります。

 どっちが勝つのかはどうでも良いや。

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