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囚人と迷宮と  作者: 灰色の雪
第一章 囚人たちの浅層攻略
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第八話 囚人たちと不思議な壁

だんだんと迷宮が牙を剥き始める!


台詞及び表現を若干修正(2013/3/3)

 ラグスたちは、散乱しているものを漁る。大したものはあまりなかった。あったのは襤褸切れ十数枚とどうやって入手したのかコインが二枚。このコインは出発前に購入したパーティ資金用の小袋にいれた。あとは使えそうにない棒であったり、脚の一本ない椅子であったり、天板が中央から折れてしまっている机であったり、割れた土壺であった。

 ディックが散乱しているものを漁っていると、壁の下のほうに襤褸切れがある。小さいながら血糊を拭くのにいるだろうと襤褸切れを手に取ると、壁の中から抵抗もなく出てくる。疑問に思い、壁に手を置こうとすると手が壁に埋まる。思い切って頭を入れると、そこにはドアが見えた。


「隠し扉だ」


 ディックの言に振り返る三人。壁に半分体を埋めているようにみえるディックの姿をみてギョッとする。ディックが上方を見ると隠蔽術式が刻まれている。この隠蔽術式のせいで壁があるように見えるのだと三人に説明する。

 術式にはいろいろな使い方がある。今回の隠蔽術式のように壁に刻むことで、周囲にある微量なマナを吸収しつづけ特定の効果を発動するもの。これは弱い効果のものしかないが、特定スキルの効用を打ち消す場合がある。別に武器や防具に術式を刻み、使用者の体内にあるマナを流し込むことによって特定の効果を発動するものもある。杖や魔導書もこれに類するものである。また術式は複数組み合わせることも可能で、組み合わせることにより効果を上昇強化したりもできる。

 時折、迷宮内において隠蔽術式のような術式を用いた罠が存在する。このことから、迷宮を作成するものには術式刻印者が協力しているのではないかと一時非難されたことがあり、現在でも疑いの目を持つ者もいるほどである。

 術式について当然、研究されている。しかし不遇の時をもったせいか、その作成方法は秘匿されており複製したり新たに作り出すには、専門の術式刻印者に依頼するのが通常である。

 ロイがディックに近づきドアを照らす。ディックの体が一瞬淡く光る。ドアの向こう側になにかしらの気配がないことを確認してドアを開き中にはいる。それをみて三人も中に入っていく。


「隠し扉まであるのか……」


 ザグンが歩きながらつぶやく。

 攻略難度の低い迷宮には、術式や罠師といった存在がなく比較的容易に探索が可能でそういった迷宮は早々に踏破される。大抵そういう攻略難度の低い迷宮は踏破はされるが迷宮内の最奥にいる迷宮の主ともいえる存在が強大であり、迷宮を制覇するのはたやすいことではない。


「下手すると難度よ……いや、三かも……ね」


 ザグンの言葉を受けてラグスが希望的観測を返す。

 迷宮には攻略難度が迷宮探索ギルドによって設定されている。攻略難度が一が先ほど説明したものである。次いで、強大な主もしくは術式もしくは罠師のどれか二つが存在するものが“二”、すべてが存在するものが“三”、そして最後に難度三の迷宮を複数同時攻略をしなければ踏破不可能なものを“四”としている。つまり、囚人迷宮が難度四なら単体迷宮での攻略が不可能ということになる。

 迷宮探索ギルドでは、攻略可能難度によって探索者を振るい分けしている。普通、攻略可能難度を上げるためには、攻略可能難度と同じ攻略難度の迷宮を踏破することが条件とされている。

 陰鬱とした雰囲気がパーティ内に蔓延する。ディックが軽く鼻息を鳴らし、


「そんなことをウダウダといってたら攻略できるのか? そうじゃないだろ。しっかりしろ」


 そういってパーティ内の雰囲気を一掃しようとする。それにラグスが乗る。


「そうだよな。そんなこと言っても仕方ないよな!」


 務めて明るく言う。他の二人がそうですよね(だな)と返し、周囲を見始める。

 そこは部屋になっており、正面にドアが見える。


「隠し扉があるってことは、そこになにか大事なものがあるってことだ」


 とドアから周囲の壁を調べ始めるディック。それを見た三人も同じように調べる。暫く調べているとザグンが声を上げる。


「これは……スイッチか?」


 全員がその声を聴き、ザグンのいる場所まで移動する。ザグンが壁を指差し、そこを見てみると周囲の壁より三サンチメータルほどの出っ張りが存在する。

 ディックが、出っ張りに手をかざす。体が淡く光り、明滅する。どうやら二つ、三つスキルを発動させたようだ。それをみたラグスとザグンの右の眉が一瞬上がる。怪訝なものを見たかのような表情である。ザグンが一瞬、薄い笑みを浮かべる。ロイは視線が定まらず、地面を見始める。


「すぐに危険……」


 振り返り、ザグンの顔を見てディックは一瞬不機嫌な顔をし、そのまましゃべる。


「……というわけじゃないようだ。どうする押すか?」


 頷く二人、それを見て遅れてロイも頷く。鼻を鳴らしてスイッチを押すディック。音が反響してどの方向というのはわからないが、部屋の外の少し離れた所で石を引きずる音がした後、ガキンと何かを固定したような音がした。それを聞いたザグンが、


「ふむ、扉かなにかの開閉スイッチのようだな」


 ディックが最初に、後の二人が少し遅れて肯定の意を表す。この部屋はスイッチ以外に特になにもないことから、ドアのほうへ向かうディック。それに追従するロイ。ドアも特に問題なく開く。ドアを開け、全員が通路に出ると出てきた場所に壁が見えた。どうやらまた隠し扉になっていたようだ。ディックが大きめな襤褸切れをサクスで切り裂き、小さくした襤褸切れを反対側の壁の下側に目立たないように置く。それを見たラグスがその行動の意味を聞く。


「他の囚人はここのことをもう知ってるはずだ。だからこっちに置いとけば、気づかれにくいし、気づかれなければ回収されないだろう? それに俺たちはまだ第一階層の地形を全部把握したわけじゃないからな」


 納得した表情を見せる他の三人。

 通路は右側がまっすぐ伸びており、左側が四メータル程進んだところで右に折れている。一行は左側に行ってみることにした。

 三十メータル程進んだところで、T字路に出た。左側に曲がる通路とまっすぐ進む通路。

 左側を選択。曲がって進むとすぐに右に曲がりまた三十メータルほど進むと右に折れて、左側にドアが見えた。


「今日、最初に入った部屋みたいだな」


 ドアの反対側の壁の下にパン屑が落ちているのを見ながらディックがいう。いつの間にといった表情でラグスがディックを見る。それを無視し、


「この先は入口に戻る。さっきのT字路まで戻って探索を続けるべきだ」


 その主張に反対意見はなかったため、全員でT字路まで戻る。

 先ほど直進しなかったので、そちらに向かう。曲がり角はあるが脇道もない。暫くそうやっておよそ六十メータル程進むと、ディックが、全員に声を掛け、引き留める。三人は何事かとディックを伺う。ディックが斜め前方を指差す。指差した方向を見てみると、壁の下のほうに鋭いものでつけた傷がある。


「隠し扉があるかもしれん」


 他の囚人が付けた印かもしれないと暗に言っているのである。ただ、それがどこにあるのかわからない。戻るべきなのか行くべきなのか。多少迷った上で、何かを思いついたようにラグスが、


「さっきの隠し扉の時におもったんだけど、壁に手を当てればわかるんじゃないかな?」


 そう得意気にいう。それに対しディックが、


「さっきのような簡単なものならそれでいけるかもしれないな。ただ、先に進めば進むほどそれじゃあ感知できなくなるかもしれない。違和感があったら俺に言ってくれ。調べてみる」


 と答えた。そういうものかとラグスが頷く。そして少し話し合い、ラグスとディックが左の壁を、ザグンとロイが右の壁を軽く触れながら進むということで決まった。

 そうやって壁を調べながら八メータル程進むとラグスが壁に手をやるとすり抜ける。


「ふむ、隠し扉だな」


 びっくりした時のラグスの顔が面白かったのか、含み笑いをしながらザグンがいう。ラグスは気分を害したのか、恥ずかしいのか不機嫌な表情をしながら、ディックに位置を譲る。特になにもない小部屋がそこにあった。


「他の囚人の地味な嫌がらせかもね」


 何もない部屋を見ながらラグスが他の三人にいう。少しディックが考え答える。


「そうかもしれない。掟で到達階層によって囚人同士の序列がきまるわけだから、少しでも攻略速度を遅らせる方法をとるのは“有り”だな。今回は地味だったが、今後もそうとは限らない。注意する必要があるな」


 三人ともが頷き、今後について軽く相談する。その結果、しばらくは踏破を優先し、行き詰った場合に隠し扉を探すということになった。

 元の通路に戻り、先に進む一行。すぐに通路は左折し少し進むと右折をする。そのまま進むと少し広い場所にでた。通路は左に続いている。左にラグスが進もうとすると、


「あれ? 来た道がない!」


 不意にロイが告げ、壁をペタペタと触っている。苦々しい顔をしながらディックが天井を見て呟く。


「一方通行まであるのか……」


名称:ラグス レベル:1 先天的才能:守り手(ガード)

スキル:<剣術>(1:0/10)、<盾術>(1:0/10)、<気迫>(1:2/10)、<**>、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<剣術>:スラッシュ、<盾術>:バッシュ、<気迫>:呼び声(コール)

     <**>:**、<**>:**、<**>:**、<**>:**


名称:ザグン レベル:1 先天的才能:怪力(パワー)

スキル:<鎚術>(1:3/10)、<両手利き>(1:0/10)、<物理耐性>(1:0/10)、<**>、<**>、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<鎚術>:スマッシュ、<両手利き>:同時攻撃(ダブルアタック)、<**>:**、

     <**>:**、<**>:**、<**>:**


名称:ディック レベル:1 先天的才能:弓の名手(スナイパー)

スキル:<弓術>(1:0/10)、<探査>(1:2/10)、<開錠>(1:0/10)、<罠設置解除>(1:2/10)、<危険察知>(1:1/10)、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<弓術>:ピアッシング、<**>:**、<**>:**、<**>:**、

     <**>:**


名称:ロイ レベル:1 先天的才能:魔法使役者(マジックユーザー)

スキル:<魔法制御>(1:1/10)、<水属性制御>(1:1/10)、<土属性制御>(1:1/10)、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<魔法制御>:射出制御・対象制御・範囲制御、<**>:**、

     <**>:**、<**>:**、<**>:**


――――――――――――――――――――――――――


まぁ、ダンジョンで一方通行や隠し扉なんて当たり前ですよね。


作者はワードナーさんが大好きで何度も何度も会いに行きました。

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