第四話 囚人たちと会議
段落による字下げ部分を修正(2013/3/3)
この世界にはレベル、先天的才能、後天的才能といえるスキルが存在する。またスキルの中にはアーツと呼ばれるものが存在する。このアーツとは、所持スキルの熟練度を一定値上昇することで発現し、使用を意識することで発現するものである。たとえば、ディックを例にとれば、次の通りになる。
名称:ディック
レベル:1
先天的才能:弓の名手
スキル:<弓術>(1:0/10)、<探査>(1:0/10)、<開錠>(1:0/10)
アーツ:<弓術>:ピアッシング
ディックの場合、<弓術>においてピアッシングのアーツが使用可能となっている。このピアッシングとは、矢を射出した際、矢の刺突性能を高める効力を発揮する。通常、物理防御性能が高いモンスターなどに使用すると効果的とされている。また別に、物理防御性能の低いモンスターに使用した場合は、矢がモンスターを貫通し、その後ろにいるモンスターまで達することもある。余談であるが、有名な弓術使いである“神の射手”は、ピアッシングで低位モンスターではあるが最大10体同時に貫通せしめたともいわれる。
「まぁ、俺のスキルはこんなものさ。あとはスキルでわかると思うが、敏捷と器用さが高い」
武器防具販売所から少し離れた人の目の少ない場所に移動したラグスたちは、車座になり、自分たちのスキルが何であるかを互いに発表している。今話し終えたのはディックであった。なぜスキルだけを述べているのかというと、一般的にスキルはある程度ならば公開するが、能力値の具体的な数値に関しては伏せる傾向にあるからである。今回に限っては、この面子で迷宮を探索するためにお互いに持っている主な先天的才能、スキル、アーツを話そうとなったことからこのような話をしているのである。
「ふむ、なら次は私が」
と、ザグンは自分の能力について話し始める。ザグンの自身についての説明をまとめると次のようになる。
名称:ザグン
レベル:1
先天的才能:怪力
スキル:<鎚術>(1:0/10)、<両手利き>(1:0/10)、<物理耐性>(1:0/10)
アーツ:<鎚術>:スマッシュ、<両手利き>:同時攻撃
「というわけで、力と体力が高い。だから前衛を希望というわけだ」
ザグンの説明を聞いて、うなづくラグス。「次は俺が」とラグスは自分のことを説明し始めた。
名称:ラグス
レベル:1
先天的才能:守り手
スキル:<剣術>(1:0/10)、<盾術>(1:0/10)、<気迫>(1:0/10)
アーツ:<剣術>:スラッシュ、<盾術>:バッシュ、<気迫>:呼び声
「というわけで、俺も力と体力が高いよ。さて、最後はロイだね。よろしく」
「は、はい!」
少し緊張気味にロイが自分の説明を始める。
名称:ロイ
レベル:1
先天的才能:魔法使役者
スキル:<魔法制御>(1:0/10)、<水属性制御>(1:0/10)、<土属性制御>(1:0/10)
アーツ:<魔法制御>:射出制御・対象制御・範囲制御
「そ、そういうわけなので僕は知恵と精神が高いです」
「ふむ、魔法では攻撃、支援、回復、どれができる?」
ザグンがロイに問いかける。ザグンの問いかけ内容はラグスも気になったのか興味ありげにロイを見た。ロイは緊張が持続してるのか目を見開き、顔を赤くしながら説明を続ける。
「こ、攻撃と支援は可能……です。回復はちょっとできないです。光属性なら制御の熟練低くても回復も使えるんですが、基本四属性だと結構制御熟練度が高くないとできないので……。あ、でも水属性の支援魔法で、一時的に自然回復力を上昇させるものなら使えるので……」
「へぇ、それはいいね。ポーションの値段が高かったからありがたいよ」
ラグスが肯定の意見を返した。ザガンもそれに追従する。
「たしかにな。なんらかの回復手段があるのはありがたい」
二人から肯定的な意見を貰ったことでロイはほっとした様子で、はにかんだ笑顔を見せ、すぐに地面のほうに顔を向ける。ラグスとザグンが顔を見合わせ頷き、ディックが興味なさげにロイを見ている。これで説明は一巡したことになる。ラグスが全員を見回し、改めてパーティを組む儀式を行うことを宣言する。それをラグス以外全員が了承したところで、ラグスが地面に何やら文様を描き始めた。円の中に四角を、さらにその中に円を、そしてその中に三角を描き、中央部分に四という字を書く。
「さて、準備はできたよ。誰がリーダーをやる?」
ザグン、ディック、ロイは一斉にラグスを見る。ラグスは一瞬驚いた顔を見せた後でしぶしぶといった態で文様を消さないように文様の中心に立つ。
「我願う、パーティ」
ラグスがそういうと文様がうっすらと光り始め、中央に書かれた四の数字が三と書き換えられる。それを見たラグスは文様から移動しザグンを見た。ザグンはそれに頷きを返して立ち上がり文様の中央へ。それぞれが入れ替わり文様の中央へ立つごとに中央の数字は数を減らしていき、最後にロイが立った時に数字が消え、光っていた文様も元に戻る。
「うっし、これでパーティ結成だね。よろしく」
この世界においてパーティとは神が定めたシステムの一つである。それは経験値分配を公平に行われるためのものである。このパーティの結成及び解散には、それぞれ簡単な儀式が必要である。これらの儀式は各地にある教会にて教えてもらえ、世間一般では暗黙の了解――つまり、常識――として浸透している。
「さて、では早めに到達階層を深めるために、迷宮の様子見でもしてみるか?」
ザグンが提案し、他の三人を回し見る。三人はそれぞれ頷くと全員で先ほどバッツが教えてくれた出発口へと歩く。出発口に着き、ドアをノックする。扉の中央辺りの小窓が開き、「行くのか?」と衛兵が聞く。全員が頷くとドアが開かれた。出発口は三方が木造で足元は土であったが、迷宮入口は石造りになっていた。
迷宮にはまだまだ謎が多い。
これまで存在しなかったのに急に洞窟入口が地面から出てきたり、昨日までなかった長大な塔がいきなり建ったりするのである。それらの迷宮が都市部から離れているなら特に問題はない。しかし都市部から近い場所に出現すると迷宮より這い出てきたモンスターが都市部を襲撃するのである。そのため、定期的に迷宮内のモンスターを減らす行為が必要となる。しかし、各国の軍で迷宮すべてに対応するのは困難を極めた。それに対応するために迷宮管理ギルドが設立され、そこに所属するものたちによってモンスターの削減を行っているのである。もちろん、慈善事業をしているわけではないので迷宮管理ギルドは、モンスターの削減行動に対して各国に対して補助金を請求したり、迷宮管理ギルド所属の探索者たちの人頭税などの税金徴収させないようにしている。囚人迷宮においてはその限りではないが……。
迷宮入口は幅四メータル、高さ四メータルほどで、先ほどルンカが言っていた通り、二人が武器を振り回すとぎりぎりといったところだった。
出発口の部屋の入ってすぐ左手に、幅二メータル、高さ五十サンチメータルほどのくぼみがある。どうやらそこがアイテム預かり所のようである。そこに向かい移動し、ラグスが声をかける。
「ラグスだ、武器を返してくれないか」
「ヒッヒッ、あんたは三三三番さ。今後はその番号で申請するんだな」
そういって太い棍棒が差し出される。ザグンは三三五番、ロイが三三四番、ディックが三三六番だという。
「帰ってきたら、武器防具と取得物は全部ここに預けるんだね。衛兵さんが見張ってるよ。ズルはだめだぁ。ヒッヒッヒッ」
そういうともう言うことはないといった様子で、窪みに鉄格子が下ろされる。あまり気持ちのいい出会いではなかったためか四人が四人とも一瞬不機嫌な顔になる。あまりそこで立っていても時間を浪費するだけなので、ラグスは振り返り、
「それでは行きますか」
そうあえて明るめに進言する。他の三人もそれを見て了承の意を返し、ザグンを先頭に迷宮に入っていくのであった。
それを見送っている衛兵の顔にはほの暗い笑みが浮かんでいることも気が付かずに……。
名称:ラグス レベル:1 先天的才能:守り手
スキル:<剣術>(1:0/10)、<盾術>(1:0/10)、<気迫>(1:0/10)、<**>、
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アーツ:<剣術>:スラッシュ、<盾術>:バッシュ、<気迫>:呼び声、
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名称:ザグン レベル:1 先天的才能:怪力
スキル:<鎚術>(1:0/10)、<両手利き>(1:0/10)、<物理耐性>(1:0/10)、<**>、<**>、
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アーツ:<鎚術>:スマッシュ、<両手利き>:同時攻撃、<**>:**、
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名称:ディック レベル:1 先天的才能:弓の名手
スキル:<弓術>(1:0/10)、<探査>(1:0/10)、<開錠>(1:0/10)、<**>、<**>、
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アーツ:<弓術>:ピアッシング、<**>:**、<**>:**、<**>:**、
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名称:ロイ レベル:1 先天的才能:魔法使役者
スキル:<魔法制御>(1:0/10)、<水属性制御>(1:0/10)、<土属性制御>(1:0/10)、
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アーツ:<魔法制御>:射出制御・対象制御・範囲制御、<**>:**、
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