此処では無い、何処かの物語。
今回程のタイトルはない!
雨が窓を打つ音が城のとある一室に響く。
一つ、壁を挟んだ廊下の喧騒もこの部屋からは遠い。
此処は、火の国の辺境に位置する『砂の民』の街……
『火山の街“ヘナレ”』 領主が僅か21歳と若輩ながら、良き家臣に支えられ、隣国にも名の知られる、領地である。
さらに、領地の周囲には2つのオアシスが有り、他の領地からすると比較的に薬草の取りやすい場所に位置している。
そして、この部屋の主、引いてはこの領地の主で有る青年はそのオアシスの薬草で命を救われている。
ゆっくりと、主である青年は己の忠臣の名を読んだ。
「……カザルは居るか……?」
「ーーハッ!」
青年が名を呼んだ瞬間現れたのは銀の髪と、青の瞳を持つ……オアシスにて少女にペーターと名乗った青年だった。
主ある青年は、その眉間に僅かな皺を浮かべ、カザルを睨んだ。
「ーーこの、薬草は譲られた物だと、そう言ったな?」
「ーーハイ……」
青年には解せなかった。
なぜなら、青年の命を救ったと言う薬草はこの街で買ったとしても700シンはする物だ。
到底、渡そうとは思わない、更にはそれを譲ったと言うのだ。
そのものは余程慈愛が深いのか、それとも余程の愚か者なのか……
義理に硬い部下 カザルの事だから盗んだとはおもって居無い。
いや、この男は今にもその譲った存在に対し、礼に行きたいとウズウズしている事だろう。
……ならばこうつこうだ、と
青年は考えた。
そのバカの顔を拝みたく成ったのだ。
「ーーもし、お前が礼に行きたいと言うのなら。このオレも連れていけ……」
鞭に打たれた様に顔を上げるカザル。
その青の双眸は驚きの為、見開かれて居た。
「っな……! 何を仰るのですか! 陛下は今だ病み上がり! 許容出来ません!」
相変わらず硬い男だ。 と、青年は苦笑した。
己とてエルフの端くれ、
ただドワーフの様に強い肉体を持っているわけでは無いが、『 丑のオアシス』へ行く位なら支障は無いはずだ。
そもそも。
「オレが言っているんだ……イイだろう」
「ーー……ハァ」
この、幼馴染の忠臣が自身の
願いを断るなど有り得無い。




