第七話 雨の前夜
雨の匂いがする。
まだ降ってはいない。
でも、空気が重い。
私は屋根の上に立ったまま、教会を見ていた。
白い壁。
高い塔。
昼は祈りの場所。
夜は。
違う顔を持つ。
「……来ると思ってた」
後ろから声。
振り返らない。
足音で分かる。
「遅い」
「寄り道してたんでな」
軽い声。
あの男。
第5話の仕事人。
屋根の端に立つ。
「お前も?」
私は聞く。
「同じだ」
短い返事。
「依頼が来た」
やっぱり。
「断らなかったのね」
「断る理由がねえ」
即答。
「だが」
少し間。
「その前に話だ」
私は視線を外さない。
教会を見たまま。
「何」
「中、知ってるか」
「ある程度は」
「甘い」
その一言。
私は少しだけ目を細めた。
「どういう意味」
男が少しだけ近づく。
「地下、三層」
短く言う。
「上は飾りだ」
なるほど。
「下が本体?」
「そうだ」
簡単な答え。
でも重い。
「人も多い」
男が続ける。
「兵じゃない。別の連中だ」
「腕は?」
「そこそこ」
十分。
私は少しだけ息を吐いた。
「情報、どこから」
男が肩をすくめる。
「こっちの仕事でな」
詳しくは言わない。
それでいい。
「で」
男がこちらを見る。
「どうする」
私は少しだけ考える。
ほんの一瞬。
「正面からは行かない」
「だろうな」
男が笑う。
「なら」
屋根の端を指さす。
「裏に入口がある」
私は頷いた。
「使う」
それで決まり。
沈黙。
風が吹く。
空気が重い。
「組むか?」
男が言う。
軽い声。
でも。
本気。
私は少しだけ考える。
一人でもいける。
でも。
今回は違う。
「……いいわ」
短く答える。
男が笑う。
「決まりだな」
それだけ。
裏手。
教会の影。
静か。
人の気配は少ない。
でも。
ゼロじゃない。
「二人」
男が小さく言う。
「任せる」
私は頷いた。
影に溶ける。
一歩。
二歩。
近づく。
呼吸を合わせる。
一人。
後ろに回る。
口を押さえる。
刃を入れる。
音は出ない。
もう一人。
気づく前。
終わり。
「綺麗だな」
男の声。
私は答えない。
扉の前に立つ。
重い。
でも開く。
中。
暗い。
冷たい。
空気が違う。
ここから先は。
別の場所。
「……来てるな」
男が言う。
気配。
多い。
私は剣を抜いた。
「分担する」
「任せる」
短いやり取り。
それで十分。
私は左へ。
男は右へ。
――――――
階段。
下へ。
一段。
また一段。
音を消す。
でも。
気づかれてる。
「誰だ!」
声。
遅い。
私は踏み込む。
一人。
二人。
三人。
動く前に終わる。
血の匂い。
広がる。
でも止まらない。
さらに下。
二層目。
広い。
部屋。
人影。
多い。
私は一瞬だけ止まる。
状況を見る。
配置。
動線。
逃げ道。
全部、頭に入る。
「……多いわね」
小さく呟く。
でも。
関係ない。
私は踏み込んだ。
刃が走る。
一人。
二人。
囲まれる。
でも。
遅い。
全員。
遅い。
私は止まらない。
呼吸も、動きも。
全部一定。
「なんだこいつ……!」
声が上がる。
でも。
もう遅い。
私は最後の一人を斬り落とした。
静寂。
息は乱れてない。
まだ余裕。
「……やるじゃねえか」
後ろから声。
男。
少し血を浴びてる。
でも無傷。
「そっちも」
短く返す。
「下、行くぞ」
男が顎で示す。
三層目。
本体。
私は頷いた。
階段。
さらに下。
空気が変わる。
重い。
嫌な感じ。
扉。
一番奥。
閉じている。
中に、いる。
分かる。
私は手をかけた。
「ここだな」
男が言う。
私は頷く。
「開けるわ」
「派手に行くか」
「静かに」
それだけ。
私は扉を押した。
中。
広い部屋。
中央に一人。
白い服。
背を向けている。
「来たか」
低い声。
振り返る。
年配の男。
穏やかな顔。
でも。
目が違う。
「遅かったな」
笑っている。
余裕。
私は剣を向けた。
「終わりよ」
男が首を傾ける。
「何がだ」
その顔。
嫌い。
「全部」
短く言う。
男が笑った。
「できると思うか」
私は答えない。
代わりに。
一歩。
踏み出した。
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ドタバタ?コメディです。




