第六話 繋がる依頼
夜。
いつもの扉の前に立つ。
二度、叩く。
間を置いて、もう一度。
開くのが、少し遅い。
「……入って」
中に入る。
空気が違う。
香の匂いが、いつもより強い。
女は机に座ったまま、紙を見ている。
顔を上げない。
「遅かったわね」
「仕事よ」
短く返す。
私は机の前に立った。
「例の件、終わった」
女の指が止まる。
ほんの一瞬。
それだけ。
「……そう」
淡い声。
「証拠は?」
私は懐から帳簿を出して、机に置いた。
乾いた音。
女がそれを見る。
めくる。
目が、少しだけ変わる。
「……やっぱりね」
小さく呟いた。
私は目を細める。
「何が」
女はすぐに答えない。
一枚、もう一枚。
紙をめくる。
その間。
沈黙。
「……変だと思わなかった?」
ようやく口を開く。
「何が」
「依頼の流れ」
私は黙る。
女が続ける。
「王太子」
一枚。
「商会の上」
一枚。
「南区の連中」
指で順に叩く。
トン、トン、トン。
「全部、繋がってる」
空気が止まる。
私は視線を帳簿に落とした。
「……どういう意味」
女が一枚のページを開く。
そこに記された名前。
見覚えがある。
「この金の流れ」
指でなぞる。
「同じところに集まってる」
私はゆっくり息を吐いた。
「誰」
女が顔を上げる。
一瞬、迷う。
でも、隠さない。
「教会」
その一言。
軽いはずなのに、重い。
私は動かない。
頭の中で繋がる。
王太子。
商会。
裏の人身売買。
金。
全部、一本の線になる。
「……なるほど」
小さく呟く。
「だから消された」
女が頷く。
「知ってるやつから順番にね」
静か。
でも確実。
「で」
私は顔を上げた。
「次は?」
女が机の引き出しを開ける。
封書を一つ、出す。
見慣れた黒。
でも。
少し違う。
封蝋に刻まれた印。
見たことがある。
どこかで。
「……それ」
私が言う前に、女が言った。
「同じところから」
やっぱり。
私はそれを手に取る。
重い。
嫌な重さ。
「開ける?」
女が聞く。
私は一瞬だけ考える。
ほんの一瞬。
そして。
封を切った。
紙を開く。
読む。
……笑った。
小さく。
「私?」
女が目を細める。
「そう」
短い返事。
紙には書いてある。
標的。
リリアーナ・エルヴァルト。
理由。
“危険因子”
それだけ。
私は紙を折った。
「分かりやすい」
女が言う。
「もう、見られてる」
「そうね」
私は頷いた。
「早いわね」
少しだけ楽しくなる。
「どうするの」
女が聞く。
視線は真っ直ぐ。
試すような目。
私は少しだけ考える。
でも。
答えは決まってる。
「やることは同じ」
紙を机に置く。
「依頼を受ける側じゃない」
一歩、下がる。
「潰す側よ」
女が少しだけ笑った。
「……やっぱりね」
私はフードをかぶる。
扉に向かう。
「ねえ」
背中に声。
止まらない。
「戻ってこれると思う?」
私は少しだけ足を止めた。
ほんの一瞬。
「戻る場所なんて、最初からない」
それだけ言って、外に出た。
夜の王都。
風が強い。
私は屋根の上に立った。
遠く。
大きな建物。
教会。
白い壁。
綺麗な顔。
でも。
中は違う。
私は剣に手をかけた。
「次は、そこ」
小さく呟く。
標的は、もう決まってる。
私を消そうとしたやつら。
全部。
まとめて。
「いいわ」
口元が、少しだけ上がる。
「やってあげる」
風が吹く。
外套が揺れる。
私は一歩、踏み出した。
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ドタバタ?コメディです。




