逢聖
高1のヒナは年末に叔父の教会に、荷物を届けた。
叔父から教会の閉鎖を伝えられた。
その夜にヒナは教会にイルミに飾られたツリー点灯式を見に行った。
その時、身につけていた十字架がツリーに吸い込まれた。
「わぁーーあ!」
降りた場所は暗い。
しかも肌に何か触れ痛痒い。
わたしは周囲を見渡すが葉っぱが邪魔をした。
「ようこそトワイライトゲームに」
サラウンド声は、しげみの葉っぱを揺らした。
トワイライトゲーム?
回らない思考を回転させた。
「ヒナ大丈夫?」
思考回転が一瞬止まった。
わたしの前に雪だるまが現れたからだ。
今だに十字架に連れら尻もち状態だ。
次から次に? ‥‥‥ばかりだ。
「あなたはだれ?」
「ぼくはスノッピー」
「スノッピー?」
「うん。ヒナ、あなたは選ばれた賢者だよ」
スノッピーの言ってる意味が飲み込めない。
さらに? が増える。
「ここはどこ?」
「ぼくに記憶ない?」
スノッピーがおどけた。
わたしはスノッピーの顔を見る。
尖った黄色鼻に、両足が太さが違う特長的な足。
もしや‥‥‥わたしが書いた?
「大正解!」
「えっ!こんなことって」
ツリーに飾った年長時代の絵だ!
わたしの回路に稲妻が落ちてきた。
「こんなこと、あるんだよ」
スノッピーが小刻みなステップで踊った。
「準備はいいかなぁ」
もみの木の葉っぱが、ざわついた。
「それでは、よーいスタート!」
足元のしげみが大きく揺れてスタートを告げた。
「この声だれ?」
「ここの主」
「ってことは、もみの木?」
「大当たり! ぼくについてきて」
ルールも分からないままスタートした。
スノッピーが前を歩く。
わたしは歩きながら状況を整理した。
十字架に引っ張られて、たどり着いた場所は、あのもみの 木?
分からないままゲームにまで参加させられてる。
「痛っ!」
わたしは前方に転がった。
「ヒナ、気をつけてよ。至る所にイルミの線があるから」
ほんとに、わたしは、あのもみの木にいるのだ。
「どこまで行くの?」
「てっぺんの星まで」
「てっぺんまで‥‥‥」
上を見上げるが、イルミの輝きしか目に入らない。
スノッピーが枝に足をかけて登る。
わたしもついて行く。
沢山の飾りとイルミの線が邪魔をしてくる。
油断すると葉っぱが鼻を擦ってくる。
鼻がムズい。
「ここ景色がいいよ」
スノッピーが枝先に腰掛けた。
目線が公園一面を一望できる。
高所恐怖症のわたしは足が身震いしてきた。
「大丈夫落ちないよ」
スノッピーは、わたしが描いたから気持ちが分かる?
昨日までの湿気をたっぷり吸い込んだモヤモヤは胸中を漂 う。
子骨が喉元にひっかかって気持ち悪い心境だ。
「これ美味しいよ」
キャンディーを型どった飾り物を取ってスノッピーが半分 くれた。
「ほんとだ! あまーーい」
ほんのひととき癒されるーー
「このツリーの飾りの食べ物は全部食べれるよ」
立体的な物から手書きの絵まで様々に飾ってある。
わたしの見上げた先にケーキ、クッキー、シュークリーム が飾ってあり迷う。
「お腹空いたら食べたらいいよ」
「そうするわ」
「どうしてわたしこんな場所に?」
「いずれ分かるさぁ」
「不思議なツリーね」
「トワイライトゲームだからさ。さぁ行こう」
息が切れる。
体育があまり得意じゃないわたしには過酷だ。
「もうすぐてっぺん?」
「まだ下の方だよ。あのお家まで行こう」
見上げた先には煙突がついたお家が見えた。
「中はどんなんだろう」
わたしは目の前のイルミの線を握った瞬間、葉っぱで足元 が滑らせた。
握ったイルミの線が片方外れ垂れ下がった。
わたしは空中でぶら下がったままだ。
「ヒナーー!」
運動オンチのわたしは両手で握るたけで身動きできない。
握力は、すぐ電池切れする。
師走に吹く寒風は握る指先をくすぐる。
「もっ、もうだめだ」
握るイルミの線から指先が、ほどいていく。
何かを握ろうとしても、うまく掴めない。
わたしは十字架を握りしめてるのが精一杯だった。
「ヒナー!」
なぜにわたしは、トワイライトゲームに参加してるんだろ うか?
迷宮の入口は胸中を雨雲を増やすばかりだ。
帰りたくても帰れない。
帰ったとしても何も変わらない。
毎日ありきたりの生活だ。
ーーウグッーー
息が苦しい。
急に首を絞められた息苦しさが襲ってきた。
ダッフルコートのフードが飾られたトナカイの角に偶然ひ っかかった。
ファスナーを緩めると下に落ちてしまう。
地上に戻りたいはずのわたし。
でも、ファスナーを緩めないように我慢してる。
どうして落ちないのヒナ?
こんなの夢に決まってる。
落ちたら目が覚める。
でも心がブレーキをかけ、シーソー状態だ。
ファスナーの締め付けで、息がくっ苦しーーい。
「ヒナっーー大丈夫?」
「ここだよー」
助けの声がかすれてる。
スノッピーがトナカイに、またがって腕を引っ張ってくれ た。
「たっ、助かった」
トナカイに乗せられ咳き込む。
わたしは生きた心地がしない。
「気をつけてよ。全部飾りがしっかりついているとは限ら ないから」
わたしは取り付けたパパを恨んだ。
帰ったら言ってやるーー、死にそうになったって!
「じゃあ、これに乗ろう」
スノッピーはソリをつけてトナカイを操縦した。
枝と枝の間を小刻みに掻き分ける。
トナカイの鈴音がこだましながら
ソリは走る。
「このままてっぺんまで行こよ」
「それは無理だよ」
「このもみの木の飾り物はテリトリーが決まってる」
「そっ、そんな‥‥‥」
スノッピーが、よそみをした隙にソリが何かとぶつかり横 転した。
トナカイの鈴音だけが遠方に小さくなっていく。
ヒナとスノッピーはソリから落ちた。
「痛いじゃないか」
頭をさすりながらゴツゴツした石が振り返った。
「ジャガイモ?」
「違うよ。おれはゴロンって言うんだよ」
「ゴロン?」
「ダイヤモンドの原石さぁ。星を取って世界一のダイヤモ ンドにしてもらうんだよ」
ここにライバル出現だ。
スノッピーとヒナの視線が合う。
ヒナは唾を飲み込んだ。
「じゃあな」
ゴロンは転がりながら、てっぺんを目指した。
「星を狙ってるの、他にもいるんだぁーー 」
わたしは、ゴロンと違って、別に望むものはない。
勝手にゲームに参加させられてるだけだ。
帰って課題の絵を描かないといけないのが本音だ。
「スノッピーわたし家に帰りたい」
スノッピーは頭を何度も掻いた。
ひたいから汗が流れた。
消しゴムで消されたように、スノッピーのひたいがなくな っていく。
「困ったなぁ。このまま降りても地上じゃないよ」
わたしは下を見降す。
薄紫色の霧に包まれよく見えない。
「トワイライトゲームが終わらないと地上には繋がらない よ」
「じゃあ、誰かが星を取るまで終わらないの?」
「そう言うルールになってるよ」
うなずくスノッピーは、半分消えたひたいのせいで帽子が ズレている。
「とりあえず前に進もう」
迷うヒナの手をスノッピーが握った。
「冷たい!」
ヒナが手を引っこめた。
「ごめん」
スノッピーが悲しそうに頭をかいた。
帽子は更に傾いた。
「じゃあ、これで行こう」
スノッピーが再び飾りのトナカイを見つけソリをつけた。
「さぁ、星を取りに行こう」
わたしは早く星を取って終わらせたかった。
けど、やっぱり肝心な願いがない。
スノッピーの運転は荒かった。
トナカイの鈴音が速い速度で鳴る。
スノッピーが、急げば急ぐほど、わたしは焦る。
スノッピーは、おかまいなしいに枝をへし折りながら進ん だ。
枝を登っていく途中に、ウグイスが涙を流してた。
「ソリでひきそうになったよ」
スノッピーがソリを止めた。
「どうしたの?」
「わたしはピッピ。ママと、はぐれてしまったの」
ピッピが鼻をすすった。
「ぼくには検討がつくよ。さぁ乗って」
ホッーホケホケキョーー
ピッピは、もみの木に向かって鳴きました。
けど、あまり上手に鳴きません。
「桜が咲く頃には上手に鳴けるわよ」
ホーホケキョ!
口笛を吹いたヒナにピッピは憧れた。
ヒナは桜木に止まって鳴くウグイスの絵を描いたことを思 い返しました。
あの時、描いた絵が懐かしいーー、もう10年前かぁ。
わたしが金賞を取って絵を好きになったきっかけだ。
ピッピはヒナの横で何度も鳴く練習をしてました。
「さぁ、ここだよ」
スノッピーが枝先に小さな巣を指さしました。
「ありがとう」
ホッーホケホケキョーー
ピッピは最後にお礼に鳴きました。
「良かったわピッピ。ママに会えて。ねぇ、スノッピー」
「うーーん」
スノッピーは歯切れが悪いです。
「どうしたの?」
「ママがいない」
ピッピが家から泣いて出てきました。
「どう言うこと?」
「旅立ってしまったんだよ」
スノッピーは真っ黒な目をぱちくりさせました。
「そんな‥‥‥、そうだ! ピッピもトワイライトゲームに 参加したらどう?」
「トワイライトゲーム?」
わたしはピッピに説明しました。
「ヒナ、残念だけどピッピは参加する資格がないんだよ」
スノッピーの声は小声です。
ピッピは、もう成長してるから自分で自立する年頃だとス ノッピーが教えた。
「何だかスノッピー、その言葉冷たくない!」
ヒナの口調がきつくなりました。
「自然界のルールだから、誰にも変えられない」
スノッピーが首を横に振りました。
「寂しいけど、ピッピは自然界の環境を身につけてる。」
「そんな‥‥‥」
「今度はピッピがママになる順番だよ」
スノッピーが優しく語りかけました。
「わたし、頑張ってママになります。ありがとう」
ピッピは羽を広げ飛び立ちました。
ヒナは何だか自然界のルールを聞いて心が痛みました。
荒いスノッピーの運転すら感じません。
急にスピードが遅くなり、やがて止まりました。
「スノッピー、どうしたの?」
「実はヒナとは、ここでお別れなんだ」
「まだ半分よ」
スノッピーのテリトリーはここまでだと悲しそうな声だ。
「わたし1人で星を取りに行くの?」
今週も閲覧してくださりありがとうございます。
ヒナはトワイライトゲームに参加し、てっぺんを目指します。
そして様々な出会いが待ってます。
今後どのように進んで行くのかお楽しみに!




