好きになった人に嫌われる呪いを持ってしまった私だけど、政略結婚ならなんとかなるのではないだろうか?
「どうして君のことを素晴らしい女性だなんて思ってたのか自分でも理解が出来ない。まるで呪いに掛かっていたみたいな気分だよ。今は晴れやかな気分だ、目の前に君が居ること以外はね」
「ご、ごめんなさい。すぐに行きますので……」
言うと私は振り返り貴族の令嬢にはそぐわない速足でその場を後にする
「全く、他の連中もどうして君みたいな女を……私も人のことは言えないか。とにかく! もう二度と話しかけないでくれ!いや、近寄らないで欲しいな」
もうそれほど近くはないはずなのにさっきまで談笑をしていたはずの伯爵令息の怒声が耳に入る
やっってしまった。コレで三度目だ……卒業が近くなって油断してしまったのかもしれない。彼への好意が基準を超えてしまった
もう、二度と人を好きにならないと決めたはずなのに……
彼は呪いが解けたと言ったけど、逆なの。祝福が解けて呪いに掛かってしまったの。私にとっては、どちらも呪いのようなものだけれど
私の生きる世界では稀に祝福とか呪いとか、人とはちょっと違った力を持ってしまう人間がいる
そして私は、祝福を持つ幸運な人間であり、同時に呪いを持つ不幸な人間でもある
「誰からも好かれる祝福」と「私が好きになった人から嫌われる呪い」を、私は持っている
だから私は多くの人に好かれて幸せであり、本当に好かれたい人からは嫌われる不幸せでもあるんだ
先ほど私に怒声を浴びせた彼は悪くない。ただ私が振り撒く呪いに掛かっただけ。私は、人を好きになってはいけない人間なのに
「クラリス!……クラリスどうしたの?顔真っ青だよ、なにかあった?」
友人のセレスが声を掛けてくれたことで、ネガティブな思考の渦から現実に戻る。きっと表情は幽鬼のようだったのだろう
「セレス、ううん、なんでもないよ。ただちょっと気分がすぐれないだけ。でもそうね、今日はもう……帰るわ」
「クラリス?もしかして、ってここじゃ話せないか。私も今日は早く帰るわ。マリー!クラリスの体調が悪いみたいだから今日は帰るわ。
私も付き添いで一緒に帰ったと先生に伝えておいてもらえる?」
セレスの家と私の家は貴族街でお隣同士、一緒に帰るのに不自然さはないけど、ちょっとセレスに悪いなぁ。
迎えが来る時間でもないし貴族の女子二人で危なくないかな?とも思えるけど、私の祝福があれば大丈夫
例え悪い人が現れても私がお願いすればきっと助けてくれるわ。人に好かれる祝福は護身には最適ね
セレスの気遣いに少しだけ気分も晴れてくる。本当に、本当に優しい私の幼馴染だ
我が家であるバゼーヌ子爵家とお隣であるプレオベール子爵家のお屋敷は貴族街では大きな方ではないがそれでもそれなりの敷地がある
守衛さんに声を掛けてセレスが来訪することを伝え、同じくハウスメイドさんにも声を掛けて出迎えの準備をお願いする
早引きした私を心配してくれる優しい使用人の皆さんには感謝しかない
「お嬢様、本当にお身体は大丈夫なのですね?セレスティーヌ様がいらっしゃるとのことで準備は済ませましたが、ご無理はなさりませんようお願い致します」
「心配かけてごめんなさいね。でも、体調は本当に大丈夫よ、ちょっと色々あって、そのことをセレスと話すために早く着たくしたの。あとでお母さまには私からちゃんとお話ししますわ」
本当に優しいメイドさんだ。ウチは両親もお兄様たちも良い人揃いなので風通しもいい、はず。
私も祝福に頼らずとも皆さんに好かれるよう努力はしているが心配になってしまう。
人に好かれるのが祝福なのか自身の振舞いなのか疑ってしまうのは良くないのだが、祝福のことを知らない人にはどうしても懐疑的になってしまう自分に嫌気が差す。
あ、またネガティブになってる。気をつけなくちゃ。セレスに心配ばかりかける訳にもいかないからね
考えているとセレスの来訪がつ減られたので部屋に通してもらう。準備のタイミングも知り尽くしているセレスは流石だよね
そうして、しっかり準備の整っている私の部屋にセレスを招き入れるのだった。
「それでクラリス。今日は何があったわけ?」
セレスは私の祝福と呪いのことを知っている。なので先ほどの呪い発動の経緯を話すことにした
卒業間近となり、男女問わず婚活は熾烈になってきていた。卒業時までに婚約が決定している割合いはおよそ8割
誰だって2割にはなりたくない。私は諦めていたけど、周りはそうはいかなかった。ここ最近は誰も彼もアピール合戦が凄かったんだ
そんななかで続けざまにさりげなく助けてくれて、それどころか呪いとは分からないまでも何となく事情があることを察して
私に対して優しさを見せ続けてくれた、本来ならとても良い人が冒頭の彼だった。
学園生活が始まったころは私も本当に注意していたのだ。出来る限り男性とは距離を置き、誰かを好きになるようなことはしないようにと。
3年間の学園生活のほとんどを好きになった人から嫌われる生活など、考えるだけでごめんだったから
それが卒業近くなって油断してしまったんだと思う。アピール合戦に疲れていたのもあったかもしれない。友人としての想いが、ふと男性としての彼に惹かれてしまったのだ。自分でも気づかない程度の淡い思いだったにも関わらず、呪いはしっかりと発動してしまった
正直、以前に比べれば呪いをはっきりと自覚していたうえでの今回は失恋のショックというよりは彼に対する贖罪の想いが強い
私が油断しなければ、良い友人のまま卒業することが出来たというのに。彼に嫌な思いをさせてしまったのだから
「そうは言ってもクラリスさぁ、クラリスに悪気があったわけでもないし。呪いがなくても友人関係が発展するかしないかってことで関係が逆に悪くなってしまうことはあるわ。気にするなって言うのが無理なことなのは分かるけど、思いつめちゃ駄目よ?」
「うん、大丈夫。今回は本当に、自分でお気付かないくらいの気持ちの変化だったから、そんなにショックは受けていないよ。あの瞬間はやっぱりつらかったけど、それでも以前に比べればね」
以前。私は過去に二人、人を好きになってしまったことがある。
「あの時は本当に心配したよ、暫く学校にも来れなくなっちゃたし。今回は卒業間近ではあるけど暫くまたふさぎ込んじゃわないかと心配なんだよ。因みに、ウチの兄さんだったら本人もどうしようもないらしいけど、態度に出さない程度にはウチとクラリスのお兄様たちのお陰で改善してるから安心してね」
1回目はセレスの兄、お隣プレオベール子爵家の嫡男であるユベール様への恋だった。
とは言えそれは8歳のころ、自分でも初恋とは認識していなかった。ユベール様には悪いことはしてしまったけど
仲の良いお隣通し、貴族社会で小さな子の世界は狭い。仲良く遊んでいた隣のお兄さん、といったユベール様に抱いた恋心
ユベール様はいつしか私に対してだけ冷たくなり、それは思春期特有の女子に対する態度ともとられたが、両家からは大バッシングを受けることになってしまった
私もその頃は何か悪いことをしてしまっただろうか?と思いつつもそれまで家族にも周囲にも愛されることしか知らなかったので大いに戸惑った
お兄様やユベール様が学校に通い出し自然と距離が置かれるようになり今に至る。今はたまにお会いしても暴言などはない。顔は合わせていただけないけど
今となっては呪いの自覚もありユベール様に対して申し訳ない気持ちこそあれ、恋心は無いというのに。厄介な呪いだと思う
そして2回目。13歳のころだ。初等学校最終年、そのこと一番仲の良かった男性であった彼は私のことを好きになってくれた
穏やかで落ち着いていて、とてもやさしかった彼とは一緒に図書館で本を読んだり、公園を散策したり
二人の間に流れる空気はゆっくりと穏やかで、とても心地よいものだった。そして私は彼に惹かれ、嫌われた
穏やかなあの人には似つかわしくない言葉を言わせてしまった。最初は失恋のショックだけだった
でもその時に、何かがおかしいと感じた両親により教会での精密な解析を行い、祝福に隠れて気づかれなかった呪いが判明した
私は、自身の呪いによって大好きだった彼を変えてしまったことにもショックを受けて、暫く部屋から出れなくなってしまったのだ
それでも立ち直り学園に通えるようになったのは家族やセレス達友人の支えによるものだ。本当に感謝してもし足りないほど周りの人に恵まれていると思う
「まぁ今回はふさぎ込む感じじゃなさそうで少し安心したわ。もう残り少ないし無理して学園に行かなくたっていいんだからね。声掛けてくれたら私も一緒に休んじゃうからお喋りでもして過ごしましょ?それじゃ、あんまり考えこまないようにね」
少し考えこんでしまったが学園にいた時よりは私の顔色も回復しているのだろう、セレスにも少し安心して貰えたみたい。
うん、元気は大分戻ってきた。それに、セレスだって本当は大変なんじゃないだろうか?まだ婚約の話は聞いていなかったはず
「あー、でも今回は呪いが張るどうして初めて気づいたレベルだからなぁ。やっちゃった、ていう方が強いから思ったより大丈夫なんだよね。それよりセレスは婚約の話は何か進んでるの?私世は違うんだからそろそろ見つけないとじゃない?」
「私のことはいいの!すぐに見つかるから大丈夫、と思いたいわね。隣の家のお兄様方のせいで理想が高くなっちゃったのよ。クラリスはあれよ、ウチのお兄様と結婚してみない?両家の全力フォローがあるからきっとなんとかなるわ。それに家族愛なら大丈夫なんでしょ?今はあれだけどなんとななったりしないかしら?」
「多分、無理だと思う。実際、今はユベール様のことを男性として好きではないけれど完全には戻ってないし。私も何度か考えたんだよ。あ、ユベール様のことじゃないよ?家族愛って方。男性として好きになる前に家族として愛することが出来れば、って。正直さ、貴族でも政略結婚だとお互い愛してはいないけど上手くやれているケースもあるわけじゃない?昔より大分減ったけど今でもそのケースない訳じゃないと思うの。祝福の方で好かれちゃうかもだけど元々ガチガチに古い考えの方とかならワンチャン有るかな?って」
「流石に学園も卒業するし20歳までには決めないとだもんねぇ、少なくとも私は自分が悪いんだからこれから頑張らないと……って結構遅い時間になっちゃったわね。帰らないとだけど、一応明日は学園休む?そしたら私も休んじゃいたい。最後の話で私もちょっと落ち込んじゃったよ。久し振りに気分転換に遊びに行こうよー」
「ダメよセレス。明日もちゃんと学園に行くわよ?特にセレスは婚活頑張りなさい。今の学園は相手探しには絶好の空気なんだから」
確かに久し振りにセレスと遊びに行くのも誘惑ではあるし、今はソコまで落ち込んでなくてもこういう時のショックってあとでクルこともあるからね。
でも学園には行こうと思う。あと一週間を乗り切れないようではこの先やっていけないと思うし。それに。
今日セレスと話をして前から何となく思ってたことを改めて結審できた気がするんだよね。後でお母さまにお話しする時に相談してみよう。
そうしてセレスを見送り、夕方までの短い時間をひとりで過ごした私はお母さまに事情を説明に向かうことにした。
「……事情は分かったわ。でもクラリス、我慢はしちゃ駄目ですからね。結婚だって別にしなくても大丈夫なのよ。貴女は幸いにして学業の方も優秀ですし、家の仕事を手伝っていく道だってあるのですから。領地の方の経営もいいじゃない?領民の慰撫に関しては貴方は無敵よ?それに呪いの方が何とかなるかもしれないわ。抑える魔道具なども研究は続けているのだから」
お母さまに事情を話すと理解もしてくれるし心配もしてくれるし優しく話を返してもらえる。お母さま大好き。
そして一応、呪いを抑える魔道具なんかも世の中にはあるので研究はして貰っている。成果は上がっていないが両親は続けてくれている。
祝福を活かして領地のための仕事をすることは私も考えている。娘が私だけじゃなければそれも良かったかなとは思っているけど。
その場合でも結婚は出来るならした方がいい訳で。どうせなら他家との関係もあるのだから本気で政略結婚を希望している私がいる。
学業だってそれなりに頑張ってきたし、祝福は使いようによっては貴族にとって相当な武器になる。私は役に立つはずだ、と思う。
なのでその思いもお母さまに伝えてみる。
「ありがとうございますお母さま。ご心配おかけしましたが今回はあまり落ち込んでいないんです私。それに今日のことで決心が付いたの。お見合いでなんていうか政略結婚的な?まぁ私を使うと思って貰えるような方に嫁げば結果として良いのではと思ったのです」
「ウチでは政略結婚は必要もないし考えちナイト前にも言ったでしょう?貴女にとっての幸せを探せばいいだけなのよ?」
「いいえ、お母さま。私も一応は考えてのご相談なのです。普通なら若い娘は政略結婚などあまり好みませんし、特に今時は家の問題より
当人同士の気持ちが大切にされる風潮が強いですが。でも私の場合、領地経営のためと割り切っての結婚を希望する方の方が旨く行くと思うんです。
お父様とお母様のお陰でウチは領地も健全に保てていますしウチとのつながりを希望する家も多いはず。それに領地を富まそうと考える方にとって
私の祝福は有用ですし。仕事に集中してくだされば私も気が楽ですし。そうして同僚の感覚から家族としての関係を気付けば私でも普通に結婚出来るかもと考えたのです
「クラリス……」
―クラリスの母、ソフィは思う―
クラリスの祝福は幼少期に判明していた。呪いに気づかなかったのは私たちの落ち度だった。そのせいでクラリスにも、プレオベール子爵家にも迷惑を掛けてしまった。
ただ呪いについては、もし分かっていたとしてもどうすれば良かったのかは今でも分からない。家に籠らせてもそれはそれで問題だ。
いずれにして数年たっても全く進展の無い魔道具には期待できないだろうし、今後のことについては夫とも何度も話し合った。
クラリスの成長に伴い本人とも話を重ねたが、いまだに最適な対処は思いつかないのが現状なのだ。本人は今は政略結婚を望むといっているが
それで本当にこの子は幸せになれるのだろうか?以前は領地での仕事等を希望していたがいつからかそれも言わなくなった、
恐らくだがこの子は祝福についても悩んでいると思う。本人は悩んでは無いと何度も言うがm少なくとも振る舞いでは無理をしているようにも思う。
なにせ何もしなくても周囲からは好かれる。この子はそれを良しとせず、周囲に対しては非常に気を遣う。祝福が無かったとしても好かれていただろうと、ひいき目化もしれないがそう思うのだ。
それは、「仮に祝福がなくても好かれているはずだ、友人も知人も私を好いてくれるのは祝福のお陰だけじゃない」と思いたいからではないだろうか?
そう思って聞いたところで「周りが良くしてくれるから自然と私も良くしちゃうだけだよ」と笑顔で答える姿には胸が締め付けられる思いだった。
結婚が出来ないかもしれないなら家の役に立てるように学業を頑張り、今度は政略結婚と家のことを考えてくれる最愛の娘
祝福と呪いに悩む娘に、私たちは何もしてあげられていないというのに。いけない、この子の前であまり悲しい顔は出来ないわね。
せめてもの救いは、家族からの愛は受け止めて貰えていることかしら。呪いが家族愛に作用しないのも含めて。
なんとかしてあげたいとは思うが、今の私たちにはこの子に寄り添う事しか出来ない。それも悲しいが、この子の方が辛いのだ。本当に厄介な呪いなのだ。
しかし、この子の今の目は本気の時の目だし、他に手がないのも事実。夫と相談するしかないわね。
―そこまで考えてソフィはクラリスに告げる―
「わかったわクラリス。お父様とも相談して、どうしていくか考えるわ。今日のところは休んでもらってもいいかしら?それと、辛かったりしたらすぐに言うのよ?ご、いえ、また後でねクラリス」
「私は大丈夫ですよお母さま。今この時こそ、結婚の話を進めるチャンスと思っただけですから。失敗の直後なら気を付けることも出来るでしょうし。私が希望する古風な考えの方はまだ婚約できていないかもしれません。この時期なら多少の妥協は良くあることですし。お父様にもお願いしてみて下さい。正直、ウチなら縁談の話は振れば来ますよね?」
「まぁ、来るには来る、というか来過ぎる方が心配なくらいだけど。クラリスの評判はかなりいいのよ?自覚は無いかもしれないけど。それは祝福だけではなく、あなたの努力の結果だわ。だからこれからどういう道を進むにしても、あなたなら大丈夫よクラリス」
お母さまの励ましは嬉しい。それにお父様に話をしてくれることになったし、きっと話を進めてくれると思う。
流石にすぐには話は動かないだろうけど、取り敢えず学園に通えば良かった生活はあと一週間で終わってしまうのだ。
次の目標が出来ればいいなー、と思い私はお母さまの部屋を後にした。
お母さまとのお話から一週間が立ち学園も卒業式を終え、夕方から始まる卒業パーティーが終われば私は婚活を本格的に始めることになった。
あのあとお母さまとお父様で相談した結果、政略結婚の話を進めて貰えることになったからだ。
「出来る限り仕事人間で、妻は愛より能力優先、というタイプの人を探しています」と言えば失礼になってしまうので色々と当たりながら良さそうな家を探してくれるらしい
その上で、私の気持ちを汲んでくれたのだろう、出来る限りバゼーヌ家にも益があるように考えてくれている。そっちの方が私の気持ちが楽だろうと察してくれたのだ。
更に万が一上手くいかない時は気にせず出戻りでいいとまで言ってくれた。
二人とも祝福や呪いに対してどうすればよいか分からないのが本当のところで、政略結婚も私の気の迷いかもしれないけれど、その時その時でやりたいことをやる方がいいだろうと。それで失敗したらその時に全力でフォローすることにした、と。
二人のお兄様も全力で応援してくれると言ってくれた。飢えのお兄様は王都で、舌のお兄様は領地で仕事をして行く予定なのだが、二人とももし出戻っても俺が最後まで面倒見るぞ?とか小姑なんて呼ばせないから安心しろ!とか
出戻ること前提で応援してくれてるのはちょっと気になったけど。王都がいい!いや領地だ!と言い合うお兄様たちが私のことを思ってくれてるのは分かるけど。
ちょっとだけ悔しいかもかな?私は絶対、政略結婚を成功させるんだから。
そしてお見合いの希望は結構な量が集まった。私、好かれはするからなぁ。一応、好かれる努力もしてるけどね。
ただね、お見合いの希望が出たことで恋愛的アピールは少し減ったのはちょっと良かった。
家を通してくださいね?という風に捉えられたのかもしれない。私にとっては願ったりかなったりなので問題はないよね。
パーティーではセレスとマリーと一緒の予定だけど二人とも婚約まだなんだよなー。でもマリーの方はなんとなくいい人が見つかったっぽい?
その辺も聞いてみたりしちゃおっか。卒業しても会う機会がなくなるわけじゃないけどやっぱり減っちゃうからね。
パーティー会場は立食形式で座る場所もそこかしこにある。私たち6人はその一角でお話をしていた。
6人てのは私とセレスとマリー、それとマリーのお相手っぽい人とその友人2名。
聞けば元々セレスと仲の良かった人の友人がマリーのお相手らしい。ん?セレスもなんだかんだイイ感じってこと?
見ればマリーとお相手は割と二人の世界になっている。私は応援するよ。だから気にせずアタックしていきなさい。
それでセレスもなんかいい感じの空気を作り出している。これはもしかして噂に聞く卒業式バフだろうか?
卒業式になると決めかねていた人たちも一気に決めにくるというアレ、らしい。正直私には縁がないと思っていたので詳しくは知らないけれど
そうなると余りもの2人が話をすることになる。6人で固まってはいるが実質2×3って感じ?
私が余りものになるのは分かるよ。だって自ら恋愛から遠ざかっているんだもん。それは当然だよね。
ただ私の目の前にいるこの人は、うん。この人もやっぱり余りものになってしまうタイプなのかもしれない。
それはセレスとマリーに相手がいたからではなく、この人自身がそうなんだろうと思う。実は名前を知っていたこの方はお見合い候補の一人だったから
それも仕事人間でもなく古風なわけでもなく、何か事情があるらしいことも分かっている。詳しいことはさっきまで知らなかったけど。
お見合い候補の方はウチで結構調査をしているので正確だったり色々と私も知っている。その中でこの方は変わっているとの判定だった
伯爵家の次男でもあるジャック・アベラール様、報告書では変わっている方とのことだったが確かに変わってるかもしれない
私が言えた義理ではないかもしれないけど。でもさっきからアピールが変わってるんだよね……
「クラリス嬢、成り行きでこうして話をすることになってしまって申し訳なく思う。家から見合いの申し込みが言ってることもご存じかも知れない。
その上でお願いがあるのです。どうか私に対しては、冷たく接して頂けるとありがたい」
……変だよね?変だと思う私が変な訳じゃないよね?ウチの調査班はもしかしたら優秀なのかもしれない。
「どうか私に対しては冷たく接して頂けるとありがたい」
そう言われてもどうすればいいのかしら?いざ冷たくしろと言われても難しくない?自然と距離を置く私。あ、これ冷たそうかも?
「あの、ジャック様?いきなり冷たくしろと言われましてもどのようにしたら良いのか……それに普通はそんなこと言われると、なんというか、困ってしまうのが普通なのでは?」
引いちゃうよ?とは言えなかったので表現に困る。最初に挨拶してからあまりしゃべらない人だなーとは思ってたけど、成り行きで2人で話すことになって初手「冷たくして」
ただ、もしかしたら私みたいに何かしらの事情があるのかもしれないと思い直す。普通は退くだけかもしれないけど私も事情持ちだからね。
「そうですね。普通は困ります。そんな困るようなことをするのが私なのです。私は変人という評判でして。そしてその評判は間違っていない。そうだ、私のことは動物園にいる珍獣とでも思って接して頂ければ大丈夫です」
ますます分かんないなー。なんていうか上手く会話のキャッチボールが出来ていないんだよ。こういうタイプの人は初めて出会ったかも。
でもさ、こういう人なら何て言うんだろう。恋愛感情っていうよりは微笑ましく思えるのかも?なんか違うかな?
混乱する私を見てどこかほっとしたような、それでいて寂しそうな顔をするジャック様。なんだろう、興味はでちゃうんだよなー。
「本当ならば貴女になにかお願いするのではなくて私がしっかりしていればいいのですがね。なかなかうまくいかないんですよ」
やばいなー、本格的になんて返したらいいのか分からなくなってきたよ。こういう時は周囲へのリサーチもアリだけど周囲は楽しそうにしてるからなー、邪魔するのもなんか悪い。
多分この人も恐らくは友人と思われる二人の空気を察して私と話をしてるんだろうし。根は悪い人じゃないんだろう。いや根も葉も悪い人ではないか、変わってるだけで。
現状、興味が湧いてきてしまってるのは否めないけど、それは間違いなく男性としてではないし、呪いの方は気にしなくても大丈夫だろう。
でもそろそろなんか返さないとまずいよね?でも冷たくしてほしいなら返事を返さないのもアリなのか?あーもう!わかんない!
モヤモヤしてたらジャック様はなにやらブツブツ言ってるし私は適当に相槌打ってるし、マリーが話しかけてきてそれにも空返事してるし。
セレスはえっ?って顔で私のこと見てくるしジャック様も驚いた顔してるし。アレ?ボケっとしてるうちになんかあった?
「じゃあいつにしよっか?卒業したから学園はないけどみなさん今度は家のことで磯だしくなってきてしまうでしょ?早いうちがいいと思うんだけど……」
マリーは何か日付のことを話してるしジャック様とご友人二人は3人で相談初めて3日後はどうですか?と言ってる。
私にも3日後の予定の確認が来たけど私に今のところ予定はない。お見合いもまだどれも日取り決まってないしね。
ってそうじゃない!3組合同のお食事会?って言うかその前に植物園ですか。それってデートですか?
えええ!上の空で考え事してたらトリプルデートですかぁあ?マリーは私の事情知らないし純粋に進めてくれたんだろうし私が良く聞いてなかったのが決定的に悪いわけで。
でもまぁジャック様ならこんな感じで一回デートしたところで男性としての興味にはならないだろうけど。自分でもひどいこと思ってる気がするけど本当に変なんだもん。
と言う訳でまさかのトリプルデートが決まってしまったのだ。まぁマリーのフォローと思えば悪くも無いか。
セレスはどうなんだろ?それだけ後で確認しとこっと。
今日はトリプルデートの日だ。一応私だって貴族令嬢ですからね。それなりに身だしなみには気を付けてっと。
どちらにしても私が男性としてみなければいいだけなんだ、周囲へは出来る限り好印象を、少なくとも悪い印象を与える必要はないもんね。
それとあの後家に帰ってジャック様のことをお母さまに報告もした。今日のことも。
まぁしょうがないわねぇって感じだったけど、それでもアベラール家についても調べてくれた。
家自体はとてもいいところだった。経営もしっかりしてるし一族も優秀な方が多いみたい。正直、ウチの婚姻相手としては超優良だった。
そしてジャック様。ある年まではごく普通、いやかなり優秀な方と言う話で。それが学校に通って暫くしてから女嫌いとの噂が立ったらしい。
女好きならともかく女嫌いで問題?いやなにか問題を起こしているわけではないみたいなんだけど、女嫌いそのものが問題なのかも?
貴族である以上はやっぱり婚姻とか必要だしね。次男ではあるけどそれでも、だ。因みに男好きとかそう言うのはない。
もし本当に女嫌いなんであれば割り切った婚姻とか出来るんじゃないだろうか。そんな普通なら嫌がる割り切ったカン系こそ私の望むところなのだから。
家や能力面に問題はない、というか寧ろ優良なわけだし。ちょっと考えてみようかしら?なんて思ってた。
セレスの方はやっぱりこないだの人は意中の人だったみたい。友人関係が心地よくてー、っていうよくあるやつ。
卒業を切っ掛けに一歩踏み出すことにしたらしい。友人として素直に応援したいと思うよ。今日も頑張れ。
そして今私はジャック様と二人で植物園を回っている。マリーもセレスもふたりっきりにしてあげたいじゃん?そしたら必然的にこうなるわけで。
会話は相変わらず上手く運べていないけどそれはそれで構わない。私にとっては恋愛に進むことは寧ろタブーなのだから。
そして分かったこともある。この人は良い人だ。女嫌いっていうのもちょっと違うと思う。少し苦手、みたいな感じ?
会話は多分わざと変な感じなんだと思う。友人と話している時は普通だったし。それに気遣いを感じるんだよね。細かいところで。
そこで私は思い切って聞いてみることにした。ジャック様だって変なこと言って来たんだし大丈夫だよね?
「ジャック様、少しお聞きしたいことがあるのですが宜しいかしら?冷たくしてほしいという事でしたけど、それは私があなたを好きにならないようにということだったりしませんか?」
もし私と同じ悩みをお持ちなのであればお互いに思いっきり距離を開けた状態で家族関係を築いたりできるかも?なんて少し思ったりして。
「いや、それは少し違うな。どちらかと言うと私の問題なのです。ただ……そうだ。例えばですが貴女は自分を好いてくれる人と嫌うひとならどちらを好きになりますか?」
「それは、好いてくれる人ではないでしょうか?好きになったあとならば相手に嫌われても好きなままかもしれませんが、きっかけはやっぱり好意を持ってくれる人の方が好きになりやすいかと」
「では、自分を嫌う人と自分に無関心な人では?」
「それは……無関心な方かしら?はっきりとは言えませんが嫌われている方に対して好意を抱くことは難しいと思います。無関心であれば勝手に好きになることもあるかもしれません」
「そうですね。私もそう思います。なので私は女性には嫌われた方がいいのです、私に人を好きになる資格はないのですから。そう言えば、好きの反対は無関心なんて言いますよね?私は違うと思う。好きの反対は明確に嫌いなんですよ。だから私は、嫌われた方がいい。無関心でいられたとしても貴女の言う通り、勝手に好きになってしまうことは無い訳じゃないのだから」
「でも好きの反対は無関心っていうのは間違ってもいないというか。私もそういった話は聞いたことがありますが特に疑問には思いませんでした」
「好きと嫌いは関心があるということで同じなんですよ。その反対が無関心だ。だから関心の有る無しで言えば反対っていうのは間違っていない。しかしこと恋愛となれば好きと嫌いは反対ですよ。好きになるかならないか、と言えばよいのかな。まぁ戯言です。忘れて下さい」
何となくかみ合わない会話だけど、ちょっとおかしい感じではあるけど。本当におかしいのはそこじゃないかも。
やっぱりこの人はなんらかの事情を抱えているのだと確信した。同じように事情のある人間の勘だったのかもしれないけど。
思い返せば私も同じようなことを考えたことがあったのだ。好きな人に嫌われる私にとってはそれは。
好きな人に嫌われるくらいならせめて無関心であれば良いのに、だったけれど。無視も辛いけどきつい言葉や態度はもっと辛かった。
関心を持ってもらえるだけ良いという人に対して私は、違う!と思い続けてきたのだから。
そんな思いもあってか聞いてしまった。思わず。何も考えずに。
「もしかして、ジャック様は私と同じくなにか祝福か呪いをお持ちなのでしょうか?」
しまった!祝福や呪いはものすごくデリケートな問題だ。私だって公表してるわけじゃない。現にマリーだって呪いのことは知らない。
ジャック様も顔が真っ青になっている。間違いなくジャック様は呪いか祝福を持っている。多分呪いだ。コレは冷たくするのとは全く違う!
「すみませんでした、忘れてくれとも言えません。これは家を通して正式に謝罪を―
「いいえ、その必要はありません。貴女はつい、思ったことを口に出してしまっただけでしょう?もしかしたら気付いていないかもしれませんが、寧ろ私が忘れる必要がありそうなくらいですよ。
呪いや祝福については苦労が多いと聞きます。特に呪いついては」
「そう言う訳には……」
「今日はここまでにしましょう。この後の予定ですが上手くいけばそれぞれで、と言う話だったはずです。なのでこのまま帰りましょう」
怒らせてしまっただろうか?ジャック様は優しく私を気遣ってくれるがやはり一緒にいたくなくなったのだろう。そう言うとお帰りになられた。
色々と気が緩んじゃうんだろうな私。こんなんじゃ結婚は勿論、貴族の世界での生活は難しいのかもしれない。
いや、自分のことよりジャック様には悪いことをしてしまったから、帰ったら手紙で謝意を伝えよう。
許されるかは分からないけれど、そうしなければならないと思うから。
帰る足取りが重かったのは、私の「人に嫌われたくない」という醜い思いがあったからだろうか?
「お嬢様、お手紙が届いております。後でご確認をお願い致します」
先日、家に帰った後にすぐジャック様に手紙を書いた。ジャック様から家同士のやり取りにしない旨を言われていたので改めてそこの確認と謝罪が手紙の内容だ。
恐らくはそれに対する返答の手紙だろう。少し読むのが怖いが読まないわけにはいかない。私は恐る恐る封を開け開いた。そこに書いてあったのは――
『まず先日、帰ってしまったことを謝りたいと思います。貴女はご自身に原因があると思っておられるようですが実は私の問題だったのです。
貴女からのお手紙も拝見いたしました。あの時も言った通り、本当に私は貴女に聞かれたことを悪くは思っておりません。寧ろ嬉しかったのです。
先日も私が不思議なことを言ってしまったことで貴女の質問に繋がったのだと思います。そして嬉しかったというのもまた不思議に思われてしまうでしょう。
ここまで来れば私の呪いのことについてお話しないと理解は得られないと思い筆を執りました。なかなか書きだせず数日のお時間が掛かってしまったこと申し訳なく思いますが許して頂ければありがたい。
私は貴女が思う通り呪いを持っています。その呪いは『私が好きになってしまった異性は周囲の人に嫌悪感を抱かれてしまう』といったものです。
私に人を好きになる資格がないと言ったのはこの呪いのためです。この呪いは本当に質が悪いものと思います。
自分は一方的に人を好きになることが出来る。そして私に好かれた人は周囲から嫌われてしまう。そして私だけはその人を嫌わない。
私が好きになった人に強制的に私を好きにさせるような効果を持っています。そんな、どう考えても呪いでしかない祝福を私は持っています。
そして私はあの時、いや初めてお会いしたその時から、貴女に好意を持ちかけてしまっていた。あれ以上一緒にいれば本当に好きになってしまう。
そうすれば貴女は周囲から嫌われてしまう。私は、自分が好きになった人が不幸になることは避けたい。だから、異性に対して恋愛感情を持たないようにしなければならない・
嫌いになって貰えれば私も好意を抱かないだろうと、私の弱い心が変人を演じたり女嫌いというていを取ったりさせていたのです。
そんな私の不安定な言動が、結果として貴女を困らせてしまったことを改めて謝罪したい。もう一つ、私は感じ取ってしまったのです。
貴女もまた、祝福か呪いか、そういった物をお持ちなのではないだろうかと。きっと私と同じように苦悩をお持ちなのだろうと。
出来れば力になれればとも思いますが、関わってしまえばきっと私は貴女に惹かれてしまうでしょう。ですのでこのような形で打ち明けるに留められばと思います。
くれぐれも気に病むことのなきようお願い致します。ジャック・アルベール』
……多分、ここに書かれていることは真実なんだと思う。嘘で呪いや祝福の話は出来ないと思う。少なくとも私には出来ない。
あの日も私のことを思って行動してくれたんだろうと思う。でも、謝って貰う資格は私にはないとも思う。
私は、もしかしてジャック様に呪いがあるのなら、私と同じなら、結婚が出来るかもしれないとか。
私はこの人のことを好きなはならないだろうから安心だとか。油断したとか。許してもらうつもりじゃないと思いながら許してもらいたいと思ってたりだとか。
自分のことばっかりだった気がする。もう一度、謝ろう。ちゃんと、自分の祝福と呪いのことも打ち明けよう。
この人の誠意に、誠意を返そう。そう、思ってる。思ってるはず。なのに、手は動かない。
怖いのだろうか?なんなのだろうか。私は自分の気持ちすら自分で分からなくなって、それから暫く引き籠ることになってしまった。
ジャック様から手紙を頂いてからもう数日が立ってしまった。
家族からも心配され、セレスも様子を見に来てくれた。それでも、私は動けなかった。
寝込んでいるわけじゃない。そうじゃないんだけど、でも、何もできずただ時間が過ぎていくだけだった。
そして今私の目の前にはジャック様からの再びの手紙が届いている。
あの人はきっと、優しい人。でも、それでも。
少し怖くもあり、どこか待ち遠しかったように、私は手紙を読み始める
「貴女のことが心配で筆を頂きました。私のせいで、もしかしたら貴女は今、大変な苦境に陥っているかもしれない。
その思うとどのように貴女に報いればいいのか分からずにいます。私は、とんでもないことをしてしまったのです。
先日、貴女に送った手紙のなかで、私は自身の呪いについて打ち明けましたそのことで貴女に、迷惑を掛けることになってしまうなんて。
単刀直入に言えば私は貴女に惹かれてしまったのです。この数日、もう一度あなたに会いたいという想いに駆られていて気づいてしまったのです。
私は、貴女に恋をしている、と。
恐らくは私と同じように呪いに苦しみながらも強く生きているあなたを眩しく思ってしまったのです。
以前のことを考えると今の貴女の週に怒っていることは想像に難くないですが、それは私のせいなのです。恨まれて当然であるのです。
それゆえにこの手紙を書くことも躊躇いましたが、真実をお伝えしなくてはと筆を執りました。
ですがこの呪いは私の想いが薄れていけば解消されます。出来ることならば早く貴女のことを忘れて苦境からお救いしたい。
今まで出会ったなかで最も忘れがたいので、お時間を頂いてしまかもしれませんが。どうかもう暫くお待ちいただければと思います。
勝手なお願いで申し訳ありませんが、時間が経てば今貴女に降りかかっている災いは消えると思います。どうか周囲の方を嫌わないようお願いいたします。
ジャック・アベラール』
……思っていたのと違う内容に私は正直驚いた。そこにあったのは罵詈雑言ではなく前と変わらぬ優しい言葉。
おかしい。コレはおかしい。だって私は、前の手紙を呼んで、《《あの方に惹かれてしまった》》のだから。
あの人に嫌われているはずと思っていたのに。私のことを心底嫌いつつもこんな文面が書けるものだろうか?多分無理と思う。
それに、私の生活は変わっていない。家族やセレスが特別に心配してくれているのではない。家の人も普通に接してくれている。
これは一体……?とても不思議なことだけど、一つ確かなことがある。
私は生まれて初めて思いを寄せる男性から優しい言葉を投げかけて貰えたのだということだ。それがこんなにも嬉しいことだったなんて!
思い当たることもある。私も祝福に呪いが隠れていた。ジャック様ももしかしたら自身でも知らない祝福と呪いの効果があるかもしれない。
私はこの先の行動を決めるべく、お母さまに相談に向かうのだった。
今日は私とお母さまは一緒に出掛けてる。アベラール家に。お見合いの話を進めて貰いこうして訪ねたのだ。
なんと2通目のお手紙の翌々日である。ジャック様へのお返事は済ませてある。その返事は頂けていないがこんなに急に話が進んだのには両家の想いもあった。
私とジャック様、どちらも祝福や呪いに悩んでいたのはそれぞれの家族も共通だったから。唯一の解決方法かもしれない今回の話は急ピッチで進んだのだ。
「はじめてお目にかかりますドリアーヌ様。本日は急なお話にも関わらずこうして迎え入れて下さりましたことありがとうございまうs」
「クラリスさんね?始めまして。もう!今回は本当にありがとう!これでウチの問題も片付くわー。全部、貴女の推察通りだったわよ!」
めっちゃハイテンションだ。ウチのお母さまも嬉しそうにしてくれている。
あれから私はお母さまにジャック様のkとを相談し、アベラール家にも伝えて貰い、今日なのだ。まだ興奮冷めやらないのかもしれない。
「クラリス嬢!本当に君の言う通りだったよ!私の祝福については昨日早速、教会で確認して頂いた。君の予想通りsy区服に隠れて呪いも見つかった。
それに、今目の前で見て確信した!母上も君に嫌悪感など抱かずに歓迎している姿をみてね。こんな日が来るなんて……」
「ジャック様こそ私を見てどうですか?私のことが嫌いだったり、顔を見たくなかったりしませんか?少しだけ……少しだけ不安だったのですよ?」
「嫌いだなんてとんでもない!大好きだよ、クラリス嬢。私を救ってくれた、女神様だ。顔を見たくないなんてあるもんか!いつまでも眺めていたいくらいだ」
あぁっ!本当に嫌われていない!!私の呪いがなくなったわけではないのだろうけど、でも。一番嫌われたくない人に、私が。
好きと言って貰える日が来るなんて。私を女神さまと言ったジャック様だけど、私にとっては貴方こそが、だわ。
私がジャック様を好きになっていたにも拘わらず嫌われていなかったこと、そして私も空かれていたにも拘わらず周囲に嫌われていなかったこと。
明らかに今までと違う状況に一つの推測をしたのだ。そして昨日それは確認され、今日こうしてお互いに顔を合わせても私たちは変わらない。
ジャック様の祝福には呪いが隠れていた。「好きになった相手を思い続ける」呪いだ。永遠にではないけれど、普通以上に引きずる呪いである。
整理してみると、私は人に好かれる祝福がありジャック様の祝福を相殺する。ジャック様は嫌いになれない呪いで私の呪いを相殺する。
私とジャック様でしか成立しない祝福と呪いの相殺関係が奇跡的に成立したのだ。
祝福と呪いさえなければ私もジャック様も瑕疵はないわけで。両家だって問題ない訳で。
しかもだよ?多分だけどお互いに祝宇久と呪いがある分、普通の恋人たちよりも将来の愛は確実なわけで。
もっと早く出会えていればとも思うけど。でもここまでの人生でお互いに祝福があったこらこそしてきた努力だってあるわけで。
とにかくね、今が幸せならいいじゃないか、って思うのです。それに勿論、これからも。
「あぁ、クラリス。僕が愛する唯一の人。君がいてくれて本当に良かった。実は初めて会った時から惹かれ始めていたんだ。祝福のことで諦めようとしていたけれど。
ずっと、君のことを愛し続けると誓うよ」
「私だって、ジャック様のことだけを愛していますわ。これからも、ずっと」
人生で悩み続けた問題もふとした拍子に解決することがあるっていうし。幸せになったっていいいよね?
これからも祝福や呪いのことだけじゃない。人生にはいろんな問題が起こるだろう。でもこんなにも大きな障害を乗り越えた私たち二人なら。
きっとなんでも乗り越えていけるよね?ずっと、一緒だよ?ジャック様っ!