インタビュー
しばらくして、テレビカメラマンと女性アナウンサーが派遣されてきた。
どうやら彼らは堤防が破壊される前から呼び出されていたようで、想像以上に騒然としたこの現状にかなり慌てていて、現在は田んぼの上を飛行する球体の撮影はもちろん、状況の報告など、非常に忙しそうだった。
やがて、そのうちの一人、亮太も名前を知っている、地方テレビ局の美人女性アナウンサー・佐藤さんと、彼女と行動を共にしているスタッフ数人が近づいて来る。
「あなたたちが、第一発見者かな?」
「はい、そうです……もしかして取材とかですか?」
真優が嬉しそうにそう逆質問する。
「ええ、お願いしてもいい? 見つけたときのこと、聞かせてもらえたらうれしいけど」
「あ、はい、もちろん!」
真優は目をきらきらと輝かせながら、弾むような声で亮太に目で確認を取る。
「いや、俺はテレビに映りたくないから。最初に見つけたのは真優だし、一人で取材受けなよ」
同級生や彼女の母親に、早朝から真優と二人で、海岸でデートしていた、と思われたくなかったのが彼の本心だった。
「最初に見つけたときの様子、教えてもらっていいですか?」
「はい、友達と二人でウミガメ上がっていないか確認しようと歩いてたら、あの球が浮いているの見つけたんです。で、しばらく見てたけど、ゆっくりと進むだけで、ちょっと飽きてきて、いろいろ実験したんですけど……」
「実験? どんなことしたのかな?」
「えっと、いろいろ……そうだ、そのときの動画、スマホで撮っているんですよ!」
嬉しそうに亮太の方を向く真優。
そこで一旦撮影を中断し、彼はスマホの動画を見せた。
そこには実験映像だけでなく、堤防破壊の様子も収められている。
「……これ、すごいわ! スクープ映像よ、真優ちゃん、これ私たちにコピーもらえないかしら?」
「あ、はい、もちろん!」
「じゃあ、急いで編集して放送しなくちゃ……インタビューの続きもすぐ撮ろうね」
「お願いします!」
撮影再開。
「この正体、何だと思います?」
「正体?」
「そう。最初に思いついた印象みたいなものでいいので」
「何かな……最初はUFOかなって思ったんですけど、なんかずっと一定方向にしか進まないし……幽霊? うーん、なんだろ」
「謎の飛行物体だし、初めて見つけたんだから、名前つければいいんじゃないかな?」
「名前……うーんと、じゃあ……『ルシファー』」
(……おまえはなんて名前を付けるんだ! 悪魔じゃないか!)
亮太は口には出さないが、心の中でそう非難した。
名付けた理由を後で確認してみると、「なんとなくかっこよさそう」だから、ということだった。