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経済の話

今、起こっている事を”国家破産”と表現した方が良い理由について

 国は“公共投資”というものを行っています。国が投資を行って、道路、鉄道、下水道、環境保全、災害防止、教育や福祉などの整備、新たな産業の育成などを行うのですね。これは国が借金をして行われる場合もある訳ですが、その際の理想的な流れは、

 『公共投資によって経済成長が起こり、その経済成長によって税収が増え、国の借金を返済する』

 といったものです。

 もちろん、経済成長に繋がらない公共投資もある訳ですが、だからそういったものについてはそもそも借金をするべきではないという事になります。増税によって行われるべきでしょう。そうすると厳しい批判の目に晒される事になりますが、「だからこそきちんと精査して必要な公共投資が行われるようになる」という効果もあるので、本来はそうあるべきだと僕は思います。

 

 さて。

 仮に借金によって行う公共投資が失敗をしたらどうなると思いますか? 経済成長は起こらず資源の無駄遣いで終わってしまうケースですね。

 ――当然ながら、そのケースでは税収は増えません。国は借金が返せません。

 はい。

 つまり、公共投資に失敗すると、国の借金は残り続ける事になるんです。もちろん、多少借金があったところで国の体制には大きな影響はありません。特に日本のような経済が高度に成長した国では。がしかし、どれだけ借金が増えようが構わずに“新たな借金”と“失敗する公共投資”を繰り返し続ければ、流石にやがては限界が来ます。つまり、借金が膨大に膨らみ過ぎて返せない事態に陥るのです。そうなると、もう国は借金を踏み倒す以外に方法がなくなってしまいます。

 借金を踏み倒す。債務不履行。つまり、“国家破産”というやつですね。

 

 ――ただし、国の破産は、個人や企業の破産とは大きく異なっています。国家破産は以下のような現象として現れます。

 

 1.国外から借りている借金を返さない

 

 これは、まぁ、個人の破産などに近いので直観的に簡単に理解できますよね。時々、発展途上国などで借金を返せない事態に陥ってしまう国がありますが、日本の場合は国外への借金は少ないのであまり当て嵌まりません。

 

 2.通貨価値が下落する

 

 これが“国家破産”と言われてもあまりピンと来ない人もいるかと思いますが、通貨価値が下落すると物価上昇が起こり、実質的に借金が減っている状態になります。

 仮に物価が二倍になったなら、借金は半分減っているのと同じ事になります。つまり、借金を半分踏み倒しています。

 もちろん、物価上昇には様々な要因がありますから、全てが“国家破産”と呼ぶに相応しいかと言われればそれも違うでしょうが、少なくとも借金のし過ぎで起こる物価上昇は国家破産と呼ぶべきでしょう。

 

 3.増税

 

 これも直観的に理解できるでしょう。国の借金が返せなくなったので、「徴税権を行使して、国民からお金を奪って借金を返そう」って事ですね。

 普通は、公共サービスの充実などの為に国は増税を行う訳ですが、ただただ借金の返済の為だけに増税を行うのです。国民に対して借金をしている場合は、もちろん、そのまんま借金の踏み倒しです。

 

 2024年1月現在。

 ご存知の方も多いと思いますが、日本は長年し続けて来た借金が膨大な額になっていて、なんと総額で1270兆円以上にも達しています(因みに、まだ隠し借金があるという話もあります)。「もう返せないのではないか?」という声も随分前から出ています。

 ――そして、

 近年、円の価値が下落しています。長くなるのでここでは説明は割愛しますが、これは“莫大な国の借金”が大きな原因の一つになっています。また、現総理の岸田さんが、“増税メガネ”などと揶揄されていますが、増税が行われている事も明白です。2023年10月から始まったインボイス制度にも増税の意味があると言われています。

 ……つまり“国家破産”で起こるとされている現象が二つとも起こっているのですね。

 もちろん、今起こっている事は“国家破産”という言葉のインパクトから想像するようなドラスティックなものではありません。今のところ、国は影響をソフトに抑える事に成功しています。まぁ、ちょっと変な表現ですが、「緩やかに国家破産している」ような状態と言えます。

 

 ところで、「絶対に日本は国家破産しない」と主張している人達がいるのをご存知でしょうか? 仮に国家破産軽視派とでも名付けておきましょうか。

 これまで述べて来たように現在日本では明確に国家破産で起こるとされている現象が起こっていますから、この主張は間違っているのじゃないか? なんて思っている人もいるのじゃないかと思います。

 が、実は間違ってはいないのです。

 何故なら、国家破産軽視派も国の借金が増え続けると“通貨価値の下落”が起こったり“増税”が行われると主張しているのですね(もちろん、全ての国家破産軽視派の主張を確認している訳じゃありませんが)。そして、彼らは「だからこそ、日本は国家破産しない」とも主張しているのです。

 つまり、“通貨価値の下落”や“増税”を国家破産とは解釈していないんです。国家破産を警戒している人達との差は、“解釈の違い”でしかありません。

 僕は国家破産軽視派の存在(と言うか、“熱量の多さ”でしょうか?)を知ってから、気を遣って、なるべく“国家破産”という言葉を使わないように心がけていたのですが(単なる“価値観の差に過ぎない”とも言えますから)、正直に告白すると、“通貨価値の下落”や“増税”を国家破産と表現しないのは、「現実逃避」だと思っています。当たり前ですが、国家破産と表現しなくても、問題はそこにそのように存在している訳ですからね。

 「安心したい」という気持ちは分かりますが、それでは何も解決しません。実際、現実逃避している間で日本経済の状況は悪化し続けてきました。これに喜ぶのは、既得権益を維持し、これまでの経済政策の失敗を覆い隠したい官僚や政治家達だけでしょう。

 

 実はこの手の経済に関する現実逃避や、それにまつわる印象操作は頻繁に目にします。

 一部の経済作家は、「日銀が国債(これを発行する事で国は借金をしています)を購入すれば、国の借金は消える」と主張しています。日銀は政府の一部とも見做せるので、国債を購入すれば自分から自分へ借金しているのと同じになる。なので、借金は相殺され、借金は消える…… と言うのですね。

 一見、もっともらしく聞こえますが、間違っています。日銀が国債を金融機関などから購入すると、その分の金額は日銀当座預金に振り込まれるのですが、これには金利が発生します。日銀は金融機関にお金を支払わないといけません。つまり、日銀当座預金は国の借金の一種と見做せるのですね。国債から日銀当座預金に借金の形が変わるだけで、借金は減りはしません。

 この“日銀当座預金が増える”ことに対して、「日銀が国債を購入すれば、国の借金は消える」と主張していた経済作家は「日銀当座預金は信用創造だ」なんて主張をしました。

 (“信用創造”とは、銀行が貸し出しを繰り返す事で預金額が増える現象を言います)

 これ、間違いではありませんが、日銀当座預金が実質的に国の借金である点も変わりませんし、その信用創造が効果的に機能する為には十分な量の投資先が必要になって来ます。がしかし、今の日本にそのような投資先はありません。信用創造されたところで何の効果も得られないのです(ただし、逆に言えば、それは十分な投資先さえあれば、日銀当座預金が効果的に作用するという事でもあるのですが)。

 この他にも、以前、日本円がどんどん安くなっていった折に、とある政治経済系のユーチューバーは、日経新聞などの「1ドル150円に達する可能性がある」という予測を鼻で笑い、「日経は経済が分かっていない」とこき下ろしました。「そんな事は起こらないから、安心しろ」といったような発言もしていました。

 が、経済に関心のある人なら知っているでしょうが、その後、1ドル150円にまで達してしまったのです。

 これも“現実逃避”故のミスでしょう。少なくともその可能性はあると認めるべきでした。

 因みに、この時期、日本は海外の一部の投資家達から“国債の空売り”という手段(国債の価値が下がる…… 金利が上がると利益を得られるという投資方法です)で攻撃を受けていて、この人はそれに対して「日本に勝てるはずがない」と豪語していました。確かにその時の国債空売り攻撃には日本は耐え切ったのですが、その後、結局日本の金利は上がってしまいました。そして、一部の空売りを実行していた投資家達は利益を得たのです。これを考えるのなら、十分にピンチだったと言えるのではないでしょうか?

 やはり、「日本に勝てるはずがない」というこの発言も現実逃避だったのではないかと僕は判断しています。

 また既得権益の保護も僕は現実逃避の一種として良いのではないかと思っています。一例を挙げましょう。

 

 元ニュースキャスターの辛坊治郎さんは、随分前からこのような主張をされています。

 「原子力発電の既得権益を護る為に、経済産業省はライバルの太陽光発電を潰そうとしている」

 そして、実際にその発言通りに太陽光発電へのネガティブキャンペーンではないかと思えるようなテレビ放送やネット記事や動画などが散見されているのです。中には明らかにデマや印象操作としか思えないものも含まれていて、一時的はちょっと“常軌を逸している”というような状況の時もありました。

 東京都が2025年から、新築の建物に対しての太陽光パネル設置を義務付けますが、これに対して「中国製の太陽光パネルを購入させる愚策だ」などと多くの人が批判をしていましたが、2025年から国産のペロブスカイト太陽電池が実用化予定であり、東京都がその開発に協力をしている点を考えるのなら、この政策で東京都が本当に普及させたいと思っているのは国産のペロブスカイト太陽電池でしょう(成功するかどうかは分かりませんが、実際に東京都が公表している資料にはそのような記述があります)。

 これはあからさまな既得権益保護の為のネガティブキャンペーンです(一応断っておきますが、完全なデマも含めたその他様々なネガティブキャンペーンが太陽光発電では行われています)。

 エネルギー関連に限らず、このような既得権益保護の情報操作は数多くありますが、これはそのまま日本の国家破産問題に直結してもいます。前述したように、経済成長さえできるのであれば国の借金は返済が可能です。そして、その経済成長を阻んでいるのが、既得権益層だからです。

 その現実から目を背け、既得権益を保護する事は“現実逃避”だと言えるでしょう。

 

 さて。

 経済成長が“継続的”に起こる条件にとても重要な価値があるのは語るまでもないでしょう。それが分からなければ、経済成長は達成する事ができません。

 最近、僕はそれをテーマにした『「経済成長」の起源 マーク・コヤマ、ジャレド・ルービン 草思社』という本を読んだのですが、その中では経済成長を阻害する要因についても説明されてありました。そして、その一つに既得権益があったのです。人類の歴史上、既得権益層の権力が強くなり過ぎてしまったが為に、経済成長を阻んでしまったケースが多々あるのですね(87ページ、150ページ辺り)。

 例えば、イスラム社会は実はかつてはヨーロッパよりも遥かに進んでいました。ところが、宗教の上層部が既得権益を護る為に印刷機などの技術導入を拒んだ結果、成長が停滞してしまったのだそうです。

 既得権益層は、このように規制によって権益を確保しているのですが、1990年代に規制緩和・改革によって、先進諸国が経済成長に成功している中、規制緩和・改革に失敗している日本では経済成長が停滞してしまっています。

 これは実は人類の歴史上、何度も起こっている当たり前の現象なのですね。

 経済成長は“生産性の向上”と“新産業の育成”によって成り立っています。仮に米農家が野菜も作り始めれば、野菜の分だけGDPは上昇します。つまり、経済成長します。しかし、米農家が米を作っているだけで手一杯だとするのなら、そもそも野菜は作れません。ここで“生産性の向上”が重要になって来ます。全自動田植え機などの機械の導入で生産性が向上し、人手が余れば野菜を作る余力が生まれるからですね。

 つまり、『生産性の向上 → 労働力(その他資源)が余る → 余剰の労働力(その他資源)で新生産物を生産する』というのが、経済成長の基本的な流れになるのです(そして、経済成長した分に対しては、通貨の増刷が可能になります。これを“成長通貨”と呼びます)。だからこそ、経済が成長すればするほど、新たな生産物が誕生し続けて来たのです。その昔は車もテレビもパソコンもありませんでしたが、経済成長と共に普及しています。

 がしかし、既得権益層は“生産性の向上”も“新産業の育成”も阻んでしまうんです。これでは経済が成長するはずがありません。具体的な事例を挙げて説明しましょう。

 現在(2024年1月現在)、日本ではライドシェアリングが禁止されています。ライドシェアリングというのはインターネットを利用した相乗りサービスの事で、これが普及するとタクシー業界は縮小を余儀なくされます。だからこそ禁止されているのですが、これは『タクシー産業という既得権益を護る為に、生産性の向上を抑え込んでいる』とも表現できます。

 ライドシェアリングを導入すれば、タクシードライバーが余ります。その労働力を何か他で使えばその分経済成長できるのに、日本はやっていないのですね。

 その他にもオンライン授業やAIを導入すれば、教育分野での生産性の向上が期待できますがやっていません。医療でもオンライン診療、AI、また注射を打つ資格を医師以外にも認める制度にすればやはり生産性の向上が期待できます(オンラインで医師やAIが診断し、近くの薬局で薬を販売、更に近くに住む注射を打つ資格を持つ者が注射を打つといった事をすれば良いんです)。

 教師も医師も人手不足や労働環境の過酷さが問題になっていますが、新技術を導入し規制を緩和しさえすれば解決できるのですね。

 そして、日本は基本的な技術力が高く、また教育制度も充実しているので、官僚や政治家達が本気になりさえすれば、比較的容易にこういった事はできるはずなのです。

 

 ……では、官僚や政治家達を本気にさせる為には、どうすれば良いでしょうか?

 確りと国民に危機感を与え、その国民の声によって、官僚や政治家達の尻を叩く以外に方法はないのじゃないでしょうか?

 「日本は絶対に国家破産しない」などと言って、安心している場合じゃないと思うのです。

 

 一応断っておくと、既得権益の保護を優先させて日本経済を停滞させている主犯は官僚です。政治家達にだって、経済成長を阻んでいる人は大勢いるのですが、それでも歴代の政権は規制緩和・改革によって、なんとか経済を成長させようとして来ました。小泉政権も民主党政権も、そして安倍政権、菅政権も。

 安倍政権の経済政策として有名なアベノミクスの三本の矢の一つに、“規制緩和・改革”があったのはだからです。ただし、官僚などの激しい抵抗に遭い、十分な成果は出せなかった訳ですが。安倍政権の途中から、規制緩和・改革を実行する声は随分とトーンダウンしてしまい、安倍政権を引き継いだ菅政権では復活したものの、スキャンダルなどで早々に政権自体が倒れてしまいました。

 ただ、それでも、やる気がある政治家達がいるのは事実でしょう。ならば、それを応援すればいい…… と、思うかもしれませんが、実は最近はそれも期待できなくなって来ているのかもしれないのです。

 菅政権の後に誕生した岸田政権は、今のところ、規制緩和・改革を行うつもりはないように思えるのですね……

 そして、2024年1月現在、裏金疑惑のスキャンダルで安倍派が政権内から一掃されようとしているのですが、この流れを考えると、まるで既得権益を護りたがっている団体が、規制緩和・改革を政策に掲げた安倍政権の政治家達を排除したがっているようにも思えてしまいます。

 もちろん、裏金疑惑のある政治家達を庇う気はありません。規制緩和・改革をしようとしていたとしても、ここで挙げた政権の政治家達だって、絶対に何かしら悪い事をしているでしょうし。

 ……ただ、それでも、このままでは規制緩和・改革が進まないという懸念をどうしても抱いてしまいます。日本経済は本当にまずい事態に陥ってしまうかもしれません。

 

 ――ただし、

 日本の既得権益層に自浄能力がないのかと言えば、それも違うのかもしれないのですが。少しずつですが、変わり始めているような気配もない訳じゃないのです。その主な原因は恐らくは日本が抱えてしまっている莫大な借金です。ちょっと説明しましょう。

 前述したように、現在、日本円の価値が下落しています。この要因には、国外との金利差があるのですがこれだけではありません。輸入金額が増えれば増える程、この円安は進んでしまうのです。そして、円安になると化石エネルギーのような輸入品の金額は増えてしまうので、「円安が円安を呼ぶ」という悪循環に陥ってしまう危険があるのです。

 この解決策は極めてシンプルです。

 国外から輸入しているモノを、国内で生産するようにすれば良いのです。

 その代表例が再生可能エネルギーである点は言うまでもないでしょう。勘違いしている人が多いですが、お金を国外から輸入している化石エネルギーなどに支払うのと国内で生産される再生可能エネルギーに対して支払うのとでは意味合いが大幅に異なるのです。国内でエネルギーを生産すれば、お金は国内を巡りますが、化石エネルギーだと国外に出て行ってしまうのです。

 仮に電気代を1万円支払ったとして、化石エネルギーの場合は6000円程が国外に流出するのに対し、再生可能エネルギーではそれが1000円(もし仮に全ての設備投資を国内の資源だけで賄うのなら0円)で済むのですね(具体的な数字は分かりませんが)。

 つまり、再生可能エネルギーに切り替えれば、「円安が円安を呼ぶ」という悪循環を防げるのです。

 GDPを求める計算式は、消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)ですが、これに再生可能エネルギーを当てはめると、投資や政府支出(太陽光パネルの購入を“消費”と表現するのなら消費)が増え、輸入が減る事でGDPが上がると分かります。つまり経済成長する訳ですが、すると当然ながら税収が上がるので、国の借金も減らす事ができるようになります。

 前述したように、太陽光発電は多くの人に叩かれている訳ですが、「円安になる」と主張しているにもかかわらず(中には「円が紙切れになる」と主張している人もいます)、太陽光発電を全否定しているような人には特に気を付けてください。その人は“知ったかぶり”をしているか、視聴者を騙そうとしているかのどちらかです(経済産業省などの化石エネルギーや原発の利権団体に抱き込まれているのかも……)。

 円安になると、化石エネルギーの輸入金額が増えてしまうので、電気代は高騰します。結果、太陽光発電の価値が上がるのですね。円高ならば強い円の力によって安く化石エネルギーを輸入できるので、太陽光発電を否定していたとしてもまだ理屈は通るのですが、円安になると予想しているのならば理屈が通らなくなります(有名なインフルエンサーの中にもこういう人はいます)。

 しかもこれ、特に難しい話ではなく、当たり前の話ですからね。経済をある程度勉強しているのなら理解できていなくちゃおかしいんです。

 因みに、2025年に国内で実用化される予定のペロブスカイト太陽電池ですが、ほぼ国内の資源だけで生産が可能で、安価な上に弱光下での発電力が従来の太陽光発電よりも高く、設置可能場所が非常に多様であるというメリットがあります。

 “弱光下での発電力が従来の太陽光発電よりも高い”というのがどの程度なのか見つけられていなかったのですが、最近になって「約2倍」と説明している記事を見つけました。我が家の太陽光発電の曇の日の発電量は、0.1~0.6KW程度で、これが2倍になると場合によっては、(我が家の場合ですが)冷暖房を付けていても日中の電力を賄えるくらいの発電量にはなり、更にペロブスカイト太陽電池は安価で設置場所を増やせる点を考慮するのなら、冷暖房を付けていても売電や蓄電が可能になる事が期待できます。

 こうった点を考慮すると、太陽光発電のデメリットの一つに、“発電がコントロールできない”といった点がありますが、ペロブスカイト太陽電池ならばそれをマイルドにできるようです。蓄電によって、カバーできるようになる可能性が増しました。

 ただし、ペロブスカイト太陽電池には耐性が低く、毒性が強い(毒性の弱いペロブスカイト太陽電池も開発されているようなのですが)というデメリットがあるので、農地などでの発電には向きません。送電ロスが少ない点を考慮しても、街中での発電がメインになるのではないかと思われます。

 2024年1月現在、ペロブスカイト太陽電池の耐用年数は20年で、価格は従来の太陽電池の半分ほどといった記事を見つけました(記事が間違っている場合もあるので、気を付けてください)。設置可能場所が増える点を考慮すると、ざっくりと単純計算で、同じ金額で今までの約1.3倍の面積にペロブスカイト太陽電池を設置できそうです。これは飽くまで現時点の数字なので、今後、更に良くなっていくものと思われます。

 従来の太陽光発電に比べ、経済的な優位性もペロブスカイト太陽電池にはあります。中国もペロブスカイト太陽電池の開発には意欲的です。中国と言えば人権無視の強制労働により人件費を安く抑え、価格競争で優位に立つという戦略が有名ですが、これがペロブスカイト太陽電池では従来の太陽光発電に比べればあまり有効ではないのです。何故なら、そもそも人件費が安く済むからです(日本で製造しても、中国で製造しても人件費の差があまりない)。すると政治的リスクが少なく、輸送費がかからない分、国内の方が有利になります。

 

 少々、話が逸れてしまいましたが、このように再生可能エネルギーが普及して、エネルギー生産を国内で行うようにすれば、円安問題…… 日本の借金による国家破産問題を改善する事ができるのです。だからでしょうが、以前はテレビ番組で太陽光発電をバッシングしているのを見かけていたのですが、最近はあまり見なくなりました。いえ、それどころか太陽光発電の普及を促進しているかのように思える内容も見るようになったのです。

 要するに、既得権益層も“国家破産”という危機に直面して、ライバルとなる新産業を少しは認めるようになった…… のかもしれないのですね。

 もっとも、再生可能エネルギーの利権団体が育っているようなので、それが原因という可能性もありますが。

 ただし、このような動きが見られるのは再生可能エネルギーばかりではありません。

 自動運転車という製品があります。人間が運転しなくてもAIが自動的に車を運転してくれるという例のやつですね。国土交通省は、これを道路への導線設置というインフラ設備とセットで普及させたいらしく、その方面で進めようとしているのです。もしそれが実現すれば、膨大な道路利権が生まれるからです(財政が危機的状況なのに、どこにそんな予算があるんだ? って感じですが)。

 ところが近年になって、経済産業省が自動運転による運送を進めようとしているようなのです(僕の知っている限りでは、国土交通省はこれには関わっていません。運送以外では協力している部分もあるようですが)。

 上手くいくかどうかは分かりませんが、もしこれが成功すれば生産性の向上が期待できるのは間違いありません。

 国土交通省と経済産業省で予算の奪い合いをやっていそうな気配はありますが、それでも“国家破産問題を乗り越える為にやらなくちゃいけない事”を、官僚が分かっているという証拠ではあるように思えます。

 

 日本の官僚は過去、多くの日本人を犠牲にして来ました。厚生労働省が起こした薬害エイズ事件では、被害者は1500人を超え、500人以上が死んでいるとも言われていますし、自動ブレーキシステムの販売に待ったをかけた事で、膨大な交通事故の犠牲者を出してもいます。そして、原発の危険性に対する多くの人の警告を無視した結果、福島原発事故を引き起こしました。福島原発事故と言えば、地震も大きな要因になっていますが、国が資金を出して作成されている地震予測地図は今のところ全て外れています。阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震。全て予測できていません(2024年1月1日現在、これを書いている最中に、石川県で震度7の能登地震が起こったのですが、それもやはり外しています)。それだけならまだマシです。この地震予測に基づいて、耐震設計などは行われているので、これら被災地には十分な地震耐性のない建築物が多く、その所為で多くの被害者を出してしまっているのです。本来なら「どこで地震が起こるか分からないから、日本全国で警戒を怠らないように」と、警告をするべきなのに。そして、未だにこの地震予測地図の作成に国の予算が割かれています。

 これらはいずれも天下り先の確保や既得権益の保護などといった利権の為に行われて来た悪行です。

 だから決して官僚を信頼してはならないとは思うのですが、彼らも馬鹿ではありません。自らを滅ぼすような愚かな行動をいつまでも執り続けるとは限らないのです(そうであってくれなくては困ります)。

 ただ、このまま放置して良いのか? と言えば少々疑問も覚えます。

 現在、政策が失敗すると世間から批判されるのはほとんど政治家です。増税に関して岸田政権が批判されていますが、これは今までの財政赤字の蓄積で増税に追い込まれている(防衛費増額とかもありますけども)のであって、責任があるのは歴代政権及びに官僚にあるというのが正しい見方でしょう。もちろん、公務員業務の効率化などで節税をしようともしない姿勢の岸田政権にも問題があるのですが。

 

 ――ならば、そろそろ、政治家だけじゃなく、批判の目を官僚にも向けるべきじゃないでしょうか?

 

 マスコミは既得権益層で、官僚と繋がりがあるのは有名な話です。つまり、マスコミは官僚をあまり批判してくれません。

 そして、これは憶測に過ぎないのですが、既に一部のユーチューバーなどのネット上のインフルエンサー達も官僚に取り込まれていると見るべきだと僕は判断しています(官僚の立場なら、普通に考えればそうするでしょう)。政治家の批判はするのに、滅多に経済産業省や財務省の批判はしない人とかいるんですよ。その他にも、経済産業省にとって都合の良い発言をしたり。

 金融リテラシーを高めたり、金融関連の情報を集めたりする為に、僕は金融関係の動画チャンネルを視聴しているのですが、ある時にその動画で安倍政権の政策について触れる機会があったのです。前述したように、安倍政権のアベノミクスでは、規制緩和・改革が三本の柱の一つとして重要視されていました。ところが、その部分に関してはその動画では説明を濁していたのです。この点はテレビ番組でも同じで、安倍政権は明確に“規制緩和・改革”という言葉を使っていたにも拘わらず、最近のテレビ番組ではそれを“構造改革”と表現していました。これは小泉政権時代の表現ですが、「規制されている」という印象を受けなくなりますから、規制している側の既得権益層にとっては都合が良くなります。

 

 ――こんな状態では、日本の経済成長を阻んでいる既得権益層を正すことなんてできません!

 

 ですから、マスコミやインフルエンサー達に官僚を批判する役割は期待できないと思うのです。ならば、残されているのは、僕らのような個人しかいません。幸い、現代にはインターネットがあって個人でも情報を発信できます。

 ……少しで良いので官僚達の責任を追及する声を上げませんか?

 

 ただし、批判だけでは彼らは全力で抵抗して来るでしょうから、生産性の向上や新産業の育成に関わるようなものなら、新たな権益の獲得はスルーする方が良いかもしれません。

 既得権益を手放す代わりに、新たな権益を認めるようなイメージですね。

 

 最後に、現在の国の財政がどんな状況にあるのかを軽く説明します。

 国債を発行する事で、国は借金をします。民間の金融機関などがこの国債を購入しているのですが、金利が上昇してこの国債の価値が下がる事態になると金融機関は国債を売りに出す可能性があります。そして、それが連鎖すれば国債のバブル崩壊とでも呼ぶべき現象が発生する危険があるのです。金利は急上昇、国は借金を返すのが不可能になります。

 これは、劇的な国家破産を意味します。

 金融機関はお金を他から借りています。銀行なら国民からお金を借りています。そのお金を運用し金融機関は収入を得ているのですが、一度発行された国債の金利は変わらないので国債で資金を運用している場合、世の中全体の金利が上がってしまうと、借りた相手に支払わなくてはならない金利の方が大きくなり、いわゆる“逆ザヤ”になって損失を出してしまうのですね。だから、各種金融機関は国債を売ろうとするのです。

 国債だけの影響ではありませんが、金利が上がったアメリカで、銀行が経営危機に陥ったというニュースが流れました。それはこのような原因に因ります。

 ですが、日本では、現在はこの懸念は随分と薄らいでいます。何故なら、前述した通り、日本銀行が国債を大量に買い取っているからです(ただ、それでも金利上昇の影響で地方銀行が大きな損失を出したなんて記事も出ていましたが)。

 しかしそれは逆を言えば、そのリスクを日本銀行が引き受けているという事でもあるのです。金利を上げてしまうと、日本銀行は莫大な損失を出す事になってしまうのですね。

 一部、「金利を上げるとローンを組んでいる人が悲惨な目に遭うから上げられない」などといった説明をしている人がいますが、理由がこれだけなら諸外国でも条件は同じですが金利は上げられています。ですから、日本がそれほど大きく金利を上げられないのは、金利を上げ過ぎると日銀が経営難に陥ってしまうというのが最も大きい理由と判断するべきでしょう。

 つまり、早急に日銀は健全な経営状態を回復しなくてはならないのです。その為には何らかの手段で税収を上げなくてはなりません。岸田政権が減税を主張しましたが、財務省が「それは無理だ」といったような事を述べたのだそうです。つまり、それくらいピンチなのです。

 金融関連の動画チャンネルを僕が視聴していると前に説明しましたが、その動画の中で偶に「日銀がコントロールを失ったらどうなるのか」といった不安を動画主が吐露する事があります。政治的な偏りはないチャンネルなので、恐らく本音が漏れてしまったのだと思います。多くの専門家が危機意識を持っていると見てまず間違いないでしょう。

 

 既得権益層を護る為に、経済成長を犠牲にしている状況ではない事がよく分かると思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  初めまして「国家破産軽視派」の者です。    ほとんどのご意見が僕と違っているのですが、ある意味刺激的でした。 「不必要な部門を無くして人材を配分」というところは同意します。ただ不必要だ…
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