表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蝉の声は遠く  作者: クッキー
1/1

プロローグ

【プロローグ】


命の声。よく、蝉は一週間しか生きられないなどと聞くことがある。だからこそ、自らの子孫を残すために思い切り鳴いて、必死にアピールしているのだ。我々が普段喧しいと感じている、この鳴き声は命を繋ぐための声である。


とはいつかどこかで読んだ本の受け売りの言葉だが。実際にこうして窓の外から聞こえてくる音を聞いても、ただただうるさいとしか思わない。ましてや今は授業中。ただでさえ数学の授業は内容が理解できないのに、窓際の席にいるせいで、先生の声なんてまるで聞こえやしない。


凄まじい熱波も襲ってきているので、正直もう終わりにして欲しい。と思っていたら、授業の時間が残り五分だ。これが終わればようやく楽しい楽しい昼食の時間である。


------


チャイムが鳴り、皆がバラバラと動き出す。僕も教科書をしまい、弁当を取り出して席を立ち上がろうとしていたところ、教室の中の離れたところから大きな声が聞こえてきた。

「おーい! 早く屋上行こうぜ、(らん)!」

「そんな声で呼ばなくても今行くところだって!」

藍、とは僕の名前だ。新野(あらの) (らん)

そしてクラス中の注目を集めながら僕を呼んだ張本人は、村田(むらた) 康介(こうすけ)。小学校からの友達で、去年の中三まではほとんどクラスが一緒、さらには入る高校まで一緒になってしまった。嫌ではないしむしろ康介がいてくれると心強いが、たまに暑苦しいと感じる時もある。今年はクラスが一緒だから尚更だ。


康介と駄弁りながら屋上へと向かう。僕たちはもう一人の友人、雨音(あまね) 礼奈(れな)と三人で昼食を取るのがいつもの習慣となっている。礼奈も小学校からの友達だが、残念ながらクラスが別々になってしまった。

礼奈の教室は屋上に近いから、先に一人で待っているだろう。


「あ、きたきた!」

そんなことを考えていると、もう屋上に着いたらしい、礼奈の声が聞こえてきた。

「待ったか?」

「ううん、今来たとこ——ってデートの待ち合わせじゃないんだから」

康介の言葉を軽く受け流して、礼奈が一息つくと何やらいつもの雰囲気とは違い、真剣な表情に変わった。

「あのね、二人に話があるの......」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ