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あのころ・あのとき・あのにおい

作者: 浦田茗子



 通学路、毎日背おって歩いてた、ランドセルのにおい。


 二時間目、窓の外の給食室から漂ってくる、あまいカレーのにおい。


 中休み、中庭の鉄棒で逆上がりしたときの、手のひらのにおい。


 配ぜん前、廊下の流しで手洗いするときの、レモン石けんのにおい。


 昼休み、ひざを擦りむいて入った、保健室のにおい。


 五時間目、見直しが終わって落書きしてた、答案用紙のにおい。


 放課後、ひっそりざわざわした図書室の、ふるい本のにおい。


  *


 新学期、一の川から配られた、新しい教科書のにおい。


 硬筆展、黒くなった手の側面、4Bの鉛筆のにおい。


 プールのあと、濡れた毛先やふやけた手の、塩素のにおい。


 学期末、教室の床にモップで塗った、ワックスのにおい。


 運動会、徒競走のスタートを告げる、ピストルのにおい。


 バスケットボール大会、チェストパスした、バスケットボールのにおい。


 いもほり、軍手で畑をほりおこしたときの、土のにおい。


 移動教室、理科室に入ったときの、教室とは違うにおい。


 冬、教室の前のドア近くの、大きな黒いストーブのにおい。



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