〜運命のとき 前編〜
預言者は言う。
――この国は危機的な状況に陥る。巨大な魔力と人の感情によって――
〜運命のとき 前編〜
「スコブースと出会った時の戦い方、逃げ方はよろしいですね。」
「「はーい」」
「では、復習します。そうね〜」
ファシア国孤児院施設。
ここにいるのはよちよち歩きの子から15歳の人までがいる。計68名。
ただいまは9歳〜15歳の中高部の授業中。
「……もぅーzzzzzzz」
赤毛の男の子は授業中にも関わらず、夢を見ていた。
「クリス。これ、わかりますか?」
その子の右隣にいる少年は指導師のカミナリが落ちるまいと思い、その子の肩を思いっきり揺さぶった。
「クリス、起きろ!!」
揺さぶられている少年はうっすらと目を開けた。
「…にぁに…?」
「お前当たってるぞ!!」
「え゛、は、はい!!!」
そのとき、少年は慌てて、ガタンと飛び跳ね、立ち上がった。と、同時にひざが机にぶつかり、鈍い音がなった。
「いってー!!!!!」
教室にいるすべての生徒がどっと笑った。
「クリス、授業中です!さてはこの問題は解けるのですね。」
指導師はコンコンと黒板を叩いた。
そこにはスコブースと遭遇した場合の逃げ方だった。
少年は痛みにこらえながらも、案の定答えられなく、右隣の少年に助けの合図を送ったのだが、頼んだ少年も分からない的な曖昧な返事が返ってきた。
少年は、悩んだ末、あきらめることにした。
「えっと。…ゎかりません。」
さらに爆笑の渦。
・・・少年は、完全に説教されると心から思った。
「はい、静かに。クリス、きちんと聴きなさい。仕方ありませんね・・・では、シュウ答えてください。」
「はい。」
栗色の頭髪の少年はピシッと答えた。
「スコブースにはいろいろな種類がいます。足が速い者に出会ったら、目を合わせ睨みつけ、ゆっくりと下がって逃げます。魔力を持つ者は一目さんと逃げ、魔術が使える者に助けを求めます。」
指導師は頷き、「さすがです。クリス!もう解りましたよね?」
「はい。解りました。以後気を付けます。」
指導師は溜め息混じりで、「まぁよろしいです。今日のところは見逃してあげましょう。」
その言葉を聞いて、うっしゃーと言わんばかり、少年の目は輝いた。がそれはつかの間、次の交渉成立でいっぺんに輝きを失った。
「だだし、シュウ。クリスを指導してくれませんか?」
「はい。分かりました。」
「今回の授業はこれまでです。」
生徒の歓声が聞こえる。
どうやら今日の授業はここまでらしい。
クリスと言う名の少年はため息をついた。
「クリスードンマイ!」
クリスの右隣にいた少年は、ばしっと思いっ切りクリスの背中を叩き、クリスは苦笑せざるおえなかった。
こげ茶の髪をもつ男の子は羨ましそうに言った。
「でもさ。みんなの憧れのシュー兄に指導なんて逆に羨ましいぞー。いいなぁー」
「ぜんっぜん良くない。だったらバトンタッチするぜー。」
「あ、でもプレ時間無くなるしなー。」
「オレ、それがイヤなんだよ。ラベル、マジ代わって!!」
「寝てたお前が悪りぃんだろ?」
「・・・。」
「でも、プレ時間とき、クリスがいねぇーと成り立たないしなー。特にサッカーとか。」
「そうだろ!!プレ時間はオレが活躍する場所なんだよ!」
「(否定できない)う・・・。うん。」
「だから、代わってくれよ〜」
お願いしているしている中。
背後からクリス何かを感じとってぞっとした。
「おいおいクリスーそれをいっちゃーおしまいだな。」
「「しっ、シュー兄!!」」ラベルとクリスは驚いた。
「ラベルには次、話とか聴いたるからな」話続ける前にシュウはガシッとクリスの肩を組んだ。(ちなみにその時の身長差は頭一個分以上。)
「今日はこのバカを指導しなきゃいけないから。」
「バカってなんなんだよ!」
「はいはい。教室戻って。プレ時間した後夕食済ましたらお前すぐ寝るから今から指導するぞー!」
「え゛ーやだー。」
「やだーと言う前に寝ないことだな。」
シュウが言った言葉が一番、クリスにとって『渇』だった。
「う゛…ぅぅー」
無論、クリスは何も言い返せなかったのである。
そんな少年たちを遠い目で見てふっと笑い。眼鏡をかけ、封筒を開ける最高指導師の姿があった。
「やはり来ましたか。」
封筒を開けた後、辛そうな溜め息を付いた。
封筒の中には『ロッレ』が入っていた。ロッレとは、王印が入った手紙のことで、内容はこう書いてある。
『ファシア国マナリア・サラ・セラフ最高指導師様この度、『クレアクト』のため、7人選抜して旅に出させることを求める。』と。
「これは、即座に会議を開かねば…」老いた指導師は皆を呼ぶベルをなろそうとした時。
−ガシャゴン ガシャゴン−
ガラス戸を叩く音が聞こえた。
その指導師は手を止めその叩く音が聞こえた窓の方へと行き、カーテンを開けた。
そこにはアメジストの瞳を持つ若いシスターが立っていた。
その指導師は、あぁ…という顔をして、窓を開けた。
「お忙しいところ、それから、窓際での対談で申し訳ありません。」
「いえ、お久しぶりことですこと。」と会釈した。
続いて、「あなたが来るということは何かありましたのですね。」
「はい。」
若いシスターはそのまま続けて言った。
「今日。こちらに『ロッレ』が届いて、7人旅立ちさせると思いまして…」
このことは普通の人が訊いたら驚いててしまうのだが老いた指導師はそのシスターの事情を知っているので、平然と答えた。
「えぇ。そのような手紙が来ました。」
「時間がありませんので単刀直入に言います。その7人の中に『例の子』を入れてください。」
老いた指導師は顔色を変えた。
「…いくらあなたが言うことでも、いってはならぬことがあります。まだあの子は10歳になったばかり、それに指導をきちんと受けさしていません。」
若いシスターはただ、最高指導師を見つめるだけだった。
その指導師は気づいた。
「まさか…」
「はい。先日旅立ちさせました。旅立ちといっても、あの子にとって残酷なことをしたと思います。貴方様がお察しの通り、まだあの子はとおにも満たない子です。」
沈黙が流れる。
最高指導師はさらに顔を暗くした後、何かがふっきれ、決心し、先に沈黙を破った。
「…そうでしたか。ついに来たのですね。」
若いシスターは目を合わせ、少し躊躇って答えた。
「はい。ラグナロク(神々の運命)の日が。」
「あなたの予言は当たるとお訊きしますから。」
「面目ないです。」
若いシスターの後ろからこそっと顔や腕に怪我をしたショートヘアーの女の子が顔出した。
「その子も?」
「はい。今からアウォーク国へ。」
指導師は穏やかな笑みをうかべてから言った。
「…あなたは本当に重大なことを隠し通したのですね。」
若いシスターは最高指導師に会って、初めて俯いた。
そして、女の子の方をちらっと見て、再び顔を戻し、固い微笑みで別れの挨拶を述べた。
老いた指導師もその相応の別れを述べ、若いシスターは女の子の手を引っ張って、風のように去った。
その二人が見えなくなった後、最高指導師は呟いた。
「…神に御加護がありますように…。」
瞼を閉じて、一瞬何かを考え再び瞼を開き、若いシスターが来る前の動作を実行した。
−リーンリンリンリン−
すぐさま、他の指導師たちが、最高指導師室に集まった。
そのちょっと前クリスはと言うと仕方な〜くシュー兄の指導を受けていた。
ちょうど、若いシスターが女の子を連れて行く時。
たまたまクリスが窓側に目を逸らした時ちょうど、女の子と目が合った。
(綺麗な青い瞳…。)
クリスはその瞳に吸い込まれるかのようにその女の子が去るまで見ている…とは言えなかった。
”バシッ”
「いってー!!!」
シュウはクリスをノートで殴った。
「クーリースー。せっかく教えてやってんのにどっち見てんだよ!」
「いや、だって…あ゛ー!!」
クリスは飛び上がって、すぐに窓の方に駆け出した。
「なんだよ。急に大きい声と行動して。」
「あぁ…行っちゃった。」
「…誰かいたのか?」
「いたけど。」
シュウはコイツは授業よりも、人間観察とか動体視力がよろしいらしい。と思った。
「はぁー全く、勉強に関しては集中力ないんだから。」
「うるさいっ。」
「まあそーぐねんなって、技能の方は他の子と比べていいけどな。」
クリスはシューを見た。
「でも、オレより技能もまったく、まだまだだけどな。」そう言って、クリスの頭をくしゃっとした。
「なんなんだよー絶対シュー兄より抜いてやるんだから!」
「そう言っておけっ。まあ俺を抜きたいんだったらちゃんと授業を受けろよ。」
「う…う゛ぅー…うん。」
「それより、誰がいたんだ?お前相当、じろーて見ていたから知ってた人でも来たのか?」
クリスは首を左右に振った。
「全然知らない子。女の子だったんだけど、青い瞳が綺麗くって、異邦人かな〜」
「確かに、この国には青い瞳を持つ子は居ないからな〜。」
クリスとシュウはその青い瞳の子について
それぞれ別のことを考えて、しばらく、二人はう〜ん唸っていた。
人物紹介です。
主:クリスティファー・セラフ
(セラフというのは最高指導師のネームからきている。クリスたちがいる孤児院の子達は全員セラフorサラがついています。)
性格はやんちゃ坊主つまり、ガギ大将。年齢10歳
通称はクリス
シューシャ・セラフ
頼りになるしっかり者のいい兄貴。年齢15歳
通称シュウ、シュー兄