第X夜『calling』
一日が、また終わる。
特に大きな変化もない、いつもの日が。
自分が本当にやりたいことも、未来のビジョンも未だに見えていない。
ただ、「やらなきゃいけないこと」に囚われ、振り回される無味乾燥な毎日だ。
小学校時代は優等生としてもてはやされ、クラスの中でもキラキラして。
だけどいつの間にか光は霞み、クラスで目立たない存在にまで下がり落ちた。
ああ、明日も学校へ行くのが面倒だ。
胸の内でぼやきながら、ベッドの上で薄暗い天井を眺める。
だからせめて夢の中では、物語のような刺激的な世界で舞っていたい。
退屈な毎日を忘れさせるような、夢のひと時を。
明晰夢が見られたら、どれほどいいことか。
これまで何度もやってみたが、上手くいった試しがない。
いつも見るのは、筋が通っていない支離滅裂な夢か、何かに焦り、急いでいる夢ばかり。
それらを見ては、枕の上でうんざりするばかり。
だけどたまに、妙に印象的な、淡い光に包まれた夢も見る。
完全フィクションの短い物語や、遠い日の思い出。
また、あの人たちに会いたい。
今日こそ会えればいいな。
そう思いながら、私はそっと目を閉じた。
――と、誰かの声が、遠くから聞こえた。
まるで電波の合わないラジオのように、言葉の内容は分からない。
けれど何かを必死に訴えているのが、私には分かった。
私は夢と現実の境で耳を研ぎ澄ませ、その声に応じることにした。
-END-