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9. ポンコツ聖女は、悪役令嬢の怒りに困惑する

「勇者ってクソ野郎じゃないですかっ!

 うわ~……。憧れて損した、憧れて損した。

 聖女様はこんなにも清く美しく高潔なお方であられるのに、祭り上げられている勇者はそんなクズ人間だったなんて」


 ミスティーユは、話を聞いて我が事のように怒りをあらわにした。


「み、ミスティーユ。ちょっと落ち着いてください。

 わ、私は全然気にしていないですから」

「シルフィーは、本当に清らかな心を持っていらっしゃるのですね。

 それほどの仕打ちを受けておきながら、事もなげに『気にしていない』と言い切れるなんて。

 婚約破棄されたぐらいで、こんなに落ち込んでいたのが情けないです」


 どう考えても、婚約破棄と国外追放の方が一大事である。

 しかし誤解は解かれない。



「必死に世界平和のために尽力されてきた奇跡の聖女・シルフィー様を。

 役立たずだと、言いがかりを付けて追放するなんて――」

「い、いや。まあ私のスキルなんて、本当に大して役に立たないですし……」



 ミスティーユをなだめるため、シルフィーは謙遜してみせる。

 本当に役に立たないのだが、ミスティーユは言葉をそのまま受け取らない。



「そんな目に遭わされてまで勇者を庇うなんて。

 本当に――シルフィーは心優しいのですね」

「庇ってなんかないです。

 ゆ、勇者にも良いところはいっぱいあるんですよ?

 危険なモンスターと戦うときは必ず守ってくれますし――」



 あれ~、なんで私は勇者なんか庇ってるんだろう――と首を傾げながらも、シルフィーは勇者の良いところを挙げる。

 勇者が徹底的にクズ呼ばわりされるのは、ちょっと面白くないのだ。


「そんなの勇者なら当然じゃありませんか。

 都合良く利用されてるだけですよ」


(ううん……? 良くも悪くも、勇者は気の置けない仲なんだよね)

 


「怪我したときに回復魔法をかけてあげたときには……」

「ときには?」


「罵倒されましたね……。

 おまえのチンケな回復魔法が効果を発揮するのを待つなら、ポーション飲むわって」

「クズ勇者っ! 聖女様から回復魔法をかけて貰っておいて、罵倒ですって!?」



 骨が折れ曲がっていた勇者が、痛そうにうめき声をあげていて。

 痛々しくて見ていられず、シルフィーは必死になって苦手な回復魔法を使ったのだ。

 しかし、返ってきたのはそんな心無い言葉。


 回復魔法が苦手な聖女ってなんなんだよ、というツッコミを入れてはいけない。

 シルフィーは、恋人ガチャ専門なのである。


(ポーションの方が効くのは事実ですが、ポーションに愛はない。

 つまり私の回復魔法の方が、愛情分だけきっと優秀っ!)



 無理やりポジティブに考えようとしても「そんな訳ないよな」と冷静になるシルフィー。

 

(あれ、勇者の言ってることなんも間違って無くね?

 私って、もしかして――とんでもなく役立たず?)



 シルフィーは、気が付いてはならない事実に気が付いてしまい。

 そのテンションは、ズーンと下がっていく。



「聞いてるだけで腹が立ってきましたよ。

 この世の中には、クズ男に騙され搾取されている女性がいっぱい居るんですね。

 シルフィー、立ち上がりましょう。今こそ、クーデターを起こしましょうっ!」


 ミスティーユは、国外追放を言い渡した王子への恨みすらもエネルギーに変え。

 声高に物騒なことを叫ぶのだった。

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