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14. ポンコツ聖女は、真実を知る

「もう少しで追いつめられるところだったのに。

 なんで邪魔するんだシルフィー!」

「何のことよ。それよりトキメキを返してよっ!」


 ふっ。勇者のくせにレアリティ N なんて、魔王はちゃんと UR 判定だったよ。

 もしかしてレアリティは本人にとって、どの程度貴重かという指標だったりするのだろうか。

 親の顔より勇者を見てきたシルフィーである、そりゃNになろうというものだ。



「わざわざ、こうして安全な場所に送ってやったっていうのに……」


 勇者はぼやく。

 勇者と魔王は、お城の中で不穏な動きを察知したのだ。人間とモンスターが共に生きる国ともなれば敵も多いのだ。

 勇者と魔王の信頼関係に、亀裂を入れるために。

 悪知恵がはたらく人間が目を付けたのは、勇者と毎日のようにバカップルっぷりを見せつけていた聖女・シルフィーであった。



 勇者の大切にしているものを、モンスターに殺されれば――

 いくら温厚な勇者であっても、モンスターを許すことなどできないのではないか。


「え、ばかっぷりって何?」


 きょとんとするシルフィーに「これだもんな……」と勇者は泣き崩れる。

 シルフィーはまったく気づいていなかったが、レストランのおばさんの反応はなにも特別なものでもない。勇者の相手はシルフィーである、というのは国中の共通認識となっていたのだ。

 命をかけて世界中を旅した勇者と聖女。隣国では恋物語の主役として注目を集めているのだ。ここ最近は、毎日のように仲睦まじい様子を街中で見せびらかしていたのだ。

 当然の認識である。



「な、なんでそんなことに。

 勇者と魔王がお似合いすぎて、誰も間に割って入れないから勇者に恋人が出来なかったんじゃないの?」

「は?」


 勇者、さすがにこの言い分には真顔になる。

 勇者・デントリアと聖女・シルフィーは、国中が認める公認カップルなのだ。その間に入れるものなどいるはずもなく、シルフィーにその気がないのであれば……



「そりゃ、俺に恋人なんてできるはずがないよな!」



 勇者、晴れ晴れとした笑みを浮かべる。



 やけくそとばかりに、勇者は説明を続ける。

 勇者と魔王が耳にしたのは、シルフィーをモンスターに襲わせるというきな臭い話であった。勇者と魔王の分断をはかるその人物が協力を頼んだモンスターが――あっさりと魔王に密告したのが運の尽き。一瞬で計画は破綻した。

 それでもシルフィーを狙っている者がいることに違いはない。

 事が解決するまでは、念のために危険な場所からシルフィーを遠ざけておこう、というのが今回のことの顛末であった。


「その悪人の正体もつかめてるし、あとは任せておいても大丈夫だろう」


 そう、勇者は言い切った。

 城には魔王と、昨日からバリバリにやる気を見せているミスティーユも加わったのだ。

 元・公爵令嬢は伊達ではない。きっと国の運営で敏腕を振るってくれることだろう。

 


「それならそうと言ってよ。

 お城から追放なんて言われて、どれだけ悲しくなったことか……」

「いやおまえ、まったく悲しんでなかっただろう。

 あんな可愛い令嬢を連れてくるなんて……あんな魔王、はじめて見たぞ。

 そのスキル、実は俺意外に対しては優秀なんじゃないのか?」


 う~ん、とシルフィーは首をかしげる。

 恋人ガチャのスキル、勇者以外が回した回数が少なすぎるのだ。


「でも、私が使っても出てきたのはノーマル。勇者だったよ?」

「忘れてるかもしれないけどな。勇者っていったら、普通は大当たりだぞ?」

「まあ、そうだろうけどね……」


 吞気な会話が続く。


 一仕事終えてほっとしている勇者に、誤解が解けて上機嫌なシルフィー。

 国中の認識について物申したいところであったが、シルフィーはいったん棚上げにすることを選択したのだった。


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