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異世界化する現代社会で未来の英雄になるために  作者: テルミア
崩壊伝令者

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6/15

#5

『いっちゃんはこの世界は好き?』


『どうしたんだよ急に・・・そうだな、好きか嫌いかで言えば、好きなほうかな』


『そっか、でも私はあまり好きじゃないなぁ』


『それはまたどうして?』


『だってだって、魔法だって奇跡だって起きないじゃん!空を飛んだり、海の中を歩くことだってできないし』


『そんなことできたらきっと楽しそうだね』


『だよねだよね!!あぁー魔法が使えたらいいのになぁ・・・ねぇ、いっちゃんはさもし魔法が使えたら最初になんの魔法を使いたい?』












俺の使いたい魔法は・・・











『このちっぽけな世界を壊す魔法だ』








--


嫌な夢を見た、忘れたい夢・・・どうにもできなかった夢、叶えたかった夢



 目を覚ますために魔法の力で水を生成し顔を洗って生成した水をシンクの中に放り投げ、冷蔵庫の中からMP回復瓶を手に取り無理やり飲み込む、これを毎日朝と昼と夜欠かさず飲むことにした在庫はまだ十分にある、そのうち三層以降から拾っていけばよいだろう


 驚いたことにダンジョンの外でも魔法は使えたのだ。


--小林ダンジョン三階層目--


 地面は土に代わっており壁は木製のものになっていた、二階層目との差がありすぎて歴然とする。


 扉を三階層目に登録しいざダンジョン攻略



 最初に見つけたのは五体一組のゴブリン、まだこちらには気づいてはいない最後尾のゴブから確実に石ころを投げデットボールをお見舞いする


 ここ最近自分が投げる球の速度だ以上に速い、以前学生時代バッティングセンターに行って140km/hを体験したことがあるが恐ろしく早く感じたのを覚えている、プロの野球選手はこの速度の球を平然と打つことができるのは、一種の才能なのだろう。


 あの時感じた速度よりも自分の投げた球のほうが早く感じる時が多々ある、あんなのに当たってしまっては一溜りもないだろう、贓物スプラッシュ


 さすがにスプラッシュをすれば誰かに攻撃されたことに気が付くだろう、混乱している間にもう一投球挟む、倒せるが確実にこちらの存在に気づかれてしまう。三階層目の攻撃の要はやはり魔ゴブなのだろうか、何かを唱えている。


 当然こちらのやることは変わらない、百発百殺の気合で石ころを投げ続けるので小隊は自然と壊滅するのだ


 小隊だと一戦闘とカウントされるのだろう、箱は一つしか現れない。


 中身は確実に良くはなって気はいるこの調子でもぐっていこう



 安全策を取り続けているおかげでこちらは怪我という怪我は負わないものの、やはりレベルは上がらない適正帯を大きく離れているのが原因だろう、しかし備えあれば憂いなしだ確実にこちらの物資を蓄えるのが健全なはずだ。






 正直三階層もいい加減飽きてきたので香をさっさと炊いてこの階層の探索を終わらせることにしよう




 三階層目は上の層とは違い大きな空間が何個か存在した、しかし薄暗い明かりの中ではどうしても閉塞感は否めないのが事実ださっさと終わらせてしまおう



 広場で香を炊く、今までとは違う現象はすぐに現れたのだった


「鎧を着たゴブリン・・・騎士ってところか」

 今の俺の投球ではあの鎧を凹ませることはできるだろうが貫通させることはできないだろう・・・自分の全力を試したくなった俺はカバンから拾ってきた剣の中から一本を取り騎士ゴブと構える



騎士ゴブは確実に小林の命を狙う、弱点を突くのがうまいが小林は自身の身体能力とポテンシャルで難なく躱すが技術面で言えば確実に騎士ゴブのほうが剣の腕は小林よりも上だ


 小林はダンジョンにもぐり始めてから強者との戦いを望み始めていた、その望みが今叶っていることに感動を覚えている


 剣の鍔競り合いが起こる中騎士ゴブはほかのゴブリンと違う行動を起こし始める


「こいつ魔法も使うのか」


 騎士ゴブの周りには氷でできた槍がこちらに狙いを定めている、ならこちらのやることは一つだろう


 小林は攻撃されたと同時に壁を魔法で生成し一枚一枚の壁を重ねることで強度を増やしていった、実際は二枚目で打ち止めになり騎士ゴブはこの壁を壊すべく魔法を何度も展開するがあることに気づいた



こちらが壁に覆われていたのだ、先ほどの攻撃が最大火力なのだろう同程度の槍を何度も突き刺すが壁に傷ができるどころか自身の魔法の槍が砕け散るのみだった。


混乱する中壁の中は水浸しになり、上からは屋根が覆われていく必死に壊そうとする騎士ゴブだが壊れない、水はどんどん浸食し壁も屋根も近づく、やがてすべてふさがり呼吸もままならない


五分後には窒息して消滅した



 ハジメは騎士ゴブの密閉封鎖をしていた段階で魔力の切れを感じ、回復小瓶でMPを回復、増幅をしながら戦っていた、相手は騎士ゴブだけではないのだ


 三階層にはいなかった、数種類の魔法を使う魔ゴブも出始めている、三階層のレベルを超えている剣技を持つゴブリンも必然的にスポーンし始めている、小林はこの一対多の戦闘を望んでいたようだ


 確実に自分の息の根を屠りに来る感覚、まさにたまらなかった、俺を殺しかける奴は誰なのか楽しみで仕方なかった、自身の攻撃が雑になるにつれ自身の怪我も増えていったが気にしなかった。

いや、気が付かなかったの間違いだろう。ハジメは怪我をしたことにも気が付かずひたすらにこちらに襲ってくるゴブリンを文字通り千切っては投げ、千切っては投げ、武器を拾っては投擲し贓物をまき散らしていた。





レベルが上がるファンファーレが告げる、そこでハジメ自身の理性を取り戻していた、どうやら香の効果が切れたようだ


そして自分が傷だらけであることに気が付き急いで回復小瓶の中身を飲み干す、回復小瓶は若干甘い味がするようだ。


この日の探索は終え久しぶりに自身が育った街へと散歩に出かけた



散歩に出かける最中にふと今日いた夢の内容を思い出した、思い出したくもない夢を


 悲劇の前起きた出来事だ、夢に出てきたあの日ハジメはある友人と遊びに出かけその日の帰り道友人はトラックとの交通事故にあい、怪我は完治しているものの目を覚ますことのない植物人間になってしまった、ハジメはその日のことを決して忘れることができずにいる。


 あの日自分が彼女を遊びに誘わなければこんなことが起こることは無かった、ずっと同じことを繰り返し考え続けている、奇跡が、魔法が起こるなら・・・


 考え事をしていると正面を歩いていた人とぶつかってしまう


「あ、すみませんお怪我は・・・」


「いえ、こちらこそ申し訳・・・っていっちゃん?」

 いっちゃんと呼ぶのは家族以外に一つの家庭ぐらいしかないだろう、誘いに誘った彼女の家族ぐらいだ


「っ・・・お久しぶりです、おばさん」


「本当にいっちゃんなの?・・・こんなに大きくなって、7年ぶりかしら?元気にしてた?


「えぇ・・・まぁぼちぼちですけど」


「ご家族のことは聞いているわ、気の毒だったわね」

 気の毒なのはおばさんのほうだろう、我が子を交通事故で植物人間にさせられ、日々大変な日常を送っているに違いない、現にその疲れている顔はなんだ、七年ぶりにあったが想像以上に年を取っている印象を受けた、こんな悲惨なことを作らせてしまった元凶になに心配をしてくれているんだ。


胸が痛む、心臓が痛い


「いえ、もう慣れましたし・・・ありがとうございます」


「そうなの?ならいいんだけど・・・そうそう、うちの旦那がいっちゃんのことを心配していたわ」


「そうですか、元気にしている伝えてもらってもいいですか?」

きっとおじさんも俺のことを恨んでいるに違いない、そりゃそうだ不幸の元凶なんだよ俺は


「もちろんよ・・・あ、用事があるからごめんねまたゆっくり話せる時間があったらお話しましょう」


「えぇ、その時はお願いします」


「それじゃあね、いっちゃん」









「おばさん!!一ついいですか」


「・・・何かな」


 正直このことを聞くのは正直つらい、でも言わなきゃいけない気がしてままならない


「おばさんとおじさんは・・・その・・・すみません、やっぱり何でもないです」


「・・・あのねいっちゃん、もしいっちゃんが何か思ってるのならそれは勘違いだわ」


「・・・勘違い?」


「えぇ、あの事故が起きた日から私たち夫婦はいっちゃんに対して何も悪い気持ちなんて思ってなんかいないわよ、逆に感謝しているぐらいよ、あの子は昔・・・あんなに人に笑顔を向けるこじゃなかったから、いっちゃんと出会ってからよ、あの子が・・・葵がたくさん笑ってくれるようになっていっちゃんの話をたくさんしてくれたの」


「・・・」


「だからね?そんなに考えなくてもいいのよ・・・あの子もいっちゃんを悪く言うはずがないわ・・・そうそう、旦那がいっちゃんとあったら酒と一緒に飲みたいって言っていたわよ・・・今度時間があったら夕飯、食べに来てね」


そう言い残すとおばさんは笑顔を残して去っていった


「俺、恨まれてないんだ・・・そっか・・・そっか・・・」


 あの日からあの家族から恨まれていないかだけを考えて生きてきた、そして今日救われた




今日から堂々と、小林一の人生を送ることができるだろうか。


そして、君を思い続ける歌を歌っていいのだろうか






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