#4「魔法という概念」
香を炊く前に一つだけ気になったことがある
外部的損傷による身体能力の減少を調べるつもりだ、簡単に言えばあいつらは出血デバフは適応されるのか、ということ
鼻血を出しすぎると貧血でくらくらするように血を出しすぎたらあいつらも身体能力が下がるんじゃないかってこと・・・そもそもそこまで鼻血出したことない?うそでしょ?
安全を考慮し一階層目で検証をすることにした
早速一体目のゴブと遭遇した、ボロイ剣を持っているが動きにさえ気を付けてやればこちらがけがをすることは無いだろう
がむしゃらに振り回す剣ゴブを見定め振り下ろした瞬間に剣を奪い取り腕を持ち上げ脇をナイフで切り裂く、反対側の脇も無理やりこじ開け切り裂いたそして即座に離れ観察を開始する
攻撃されたことに怒り狂って剣を振り回しながら血もスプラッシュしていく様は本能で動く獣のように見えた、知能がさほど高くはないのだろう
五分も経たないうちに剣ゴブは貧血と思われる症状を起こし動きが鈍る
最終的には剣を握ることもままならずそのまま顔から突っ込んで砂のように消滅した
結論、出血デバフは存在する。長期戦にもなんとか対応できそうだ
二階層目、香を炊く。
この香の不思議なところは炊いた瞬間に効果が発動されるところだ、実は一階層目で二回目の香を炊いた時のことだった。
火をつけ炊いた瞬間にゴブリンとの戦闘が始まったのだ
今回もまたすぐにゴブリンたちの群れが現れた、二体や三体のスポーンじゃない、十数体のゴブリンの群れの集団だ。正直一体一体の戦力はからっきしだが相手は群れで狩りを俺に仕掛けている。
ゴブリンたちは俺のことを強者と認めてくれているはずだ、そう易々と攻撃は来ないだろう。
上等だ、やってやる
こっちには石ころも十分スタックもある、お前らの頭を百発百中で射貫いてやるから覚悟しておけ
石ころを手に握り大きく振りかぶって・・・投げた
「はぁ、すっげぇ疲れる・・・あと時間的には半分か・・・」
戦闘回数的いえば三回ほどだろうがハジメはすでに50体以上のゴブリンたちと戦闘をしている、すべての魔物がハジメによる渾身の投球で倒れたわけではない、流石に物量で攻められればすべてを石ころで倒せれるわけでもない、何回か深くはないが傷を負ってしまっているハジメには初めて死の危険を感じているだろう、この時初めて香の効果を実感したのではないのだろうか
「はぁ・・・もうひと踏ん張り・・・熱っ!?」
足元に火の玉が飛んできて足元が焦げている、目の前にいるのは杖を持ちほかのゴブリンにかばわれながらこちらに攻撃を仕掛けていた、間違いないだろう。
この世界にまた新たな法則が誕生した、魔法だ
ハジメは曲りなりにも男の子だった、ヒーローに憧れて、超人的な英雄に憧れた。当然魔法にもだ
ハジメはこの時の感動を今後忘れることは無いだろう、何せこのできたばかりの概念|≪ダンジョン≫にこうもすぐ新しい法則|≪マホウ≫が生まれたのだから、心が男の子なら誰だって興奮するだろう
ハジメは興奮を隠しきれていない、むしろ隠すなどとんでもないと思っていた、憧れた魔法だ興奮せざる負えないだろう
渇望した魔法、望んだが手に入らなかった魔法、空想を捨て現実に生きていた俺がまさかまた空想|≪ファンタジー≫に生きられるなんて、思いもしなかった。
くれよ、なぁその力お前のだけじゃないだろ?なぁ?
ずるいぞ俺より先に魔法使いやがって、ふざけるな!俺がどれほど望んだ力か分かってないだろ?あの約束を果たせるんだ、頼むよ・・・俺に約束を果たせるその力
「俺にくれよ!」
そこからはがむしゃらだった、ゴブリンたちの攻撃の要であるゴブリンメイジを守るために構える雑魚どもを獣のように千切って投げた、一度だけ魔ゴブの火の玉にあたりそうになるが手に持っていたナイフで火の玉を両断し、その時に熱を帯びたナイフでそのあたりにいるゴブリンを切ると少しだけ焦げた匂いしその時にも魔法を物理で破った興奮が押し寄せてくる。
まるでクリームパンにエナジードリンクを付け加えて摂取したような感覚に陥った。
雑魚どもを倒し残るは魔ゴブだけになった、ゴブリンメイジは一目散と逃げようとするがハジメがそれを許すはずもなく片手で鷲掴みにし思い切りよくゴブリンの頭を地面にぶつける。案の定即死だ。
ハジメはこの階層、なんならこの三つほど下の階層を苦戦はするだろうが攻略できるほどの経験、レベルを積んでいるのだ、二階層に毛が生えた程度の敵であれば何なく葬り去ることができるはずだが攻略を進めないのはハジメの性格故だろうか、慎重なのだ
香の効果が終わるとともにドーパミンの分泌が収まる、ハジメは自分のしたことに驚きながらも自分の力を実感し始めていた、着実に強くなり始めていると
木箱の中身は至って変わらなかった戦斧、片手剣両手剣、槍にナイフ。
変わったものといえば回復小瓶とはまた違った色のした小瓶だろうか、それと小さな透明な石だ。
小瓶と石を壊れないように丁寧に広い優先的に広い先にセーフルームに戻ることにした。
レベルはいつの間にか11になっていた、最近レベルの上り幅が低い、適正帯がとっくに過ぎているのだろう捜索も早めに打ち切ることにし下にもぐることに専念したほうが良いのだろうか?いや、今よりももう少しだけ早いスピードで攻略を進めれば問題ないだろう、多分、きっと
机に置いた瞬間にこの二つの正体が分かった、魔石とMP回復薬だった
いままで拾ってきた物の中で圧倒的に価値があった、正式には魔力回復小瓶だが説明文にはまほうの聖水みたいな効果が書いてあったからMP回復薬なのだろう
魔石のほうも現在使い道はないがきっと使い道がすぐに見つかるはずだ、大事にしまっておこう
三階層目にもぐる前にまた検証する羽目になった
その理由はMP回復薬による、これはわずかながらに魔力が増幅すると説明文に書いてあったのだ。
もしかしたら、俺も使えるようになるのでないかと思いセーフルーム内で小瓶を開け中身を飲む
「・・・?!マズい・・・もう一杯・・・じゃねぇ!!まじめに飲めた味じゃねぇ!!」
この回復薬、まずいようだ、だがハジメは飲んだ瞬間に自身の体の変化に気づく
「・・・なんだこの妙なやる気というか気力とはまた違った力に溢れる感じは・・・!!」
この瞬間に理解した、すぐに一階層目にもぐる
標的のゴブリンを見つけゴブリンを標的にとらえるように手を伸ばす、そしてゴブリンがこちらを屠ろうと近づいてきた・・・
「まだ、まだだ・・・想像するのはあんなちんけな炎じゃない、火炎放射だ・・・」
まだ粘る、粘る・・・いま
ゴブリンの体が手に触れるぎりぎりのところで手のひらから炎を放出させるイメージを展開させると先ほど感じていた力少しずつ抜けていく代わりに手のひらからは火炎が放出されゴブリンを焼け焦がしていく
ゴブリンは息をひきとり消滅したところで炎も消える
現代世界で初めて法則|≪魔法≫を理解し執行した、新たに魔法使いがここに誕生した瞬間である。
異世界の魔法使いはそもそも素質が無ければ使用できない
そもそも回復小瓶から上昇できる魔力量は微量であり飲んですぐ一発魔法を放てる量が上がるほど魔力量は本来ならありえない
が、ハジメのいる世界と異世界では別の法則が働いているため飲めば飲んだ分だけ魔法を行使する力が強くなる
以前に一回飲んで魔法を行使すればするほど魔力量も必然的に増えていくため何回も飲む必要は断じて無いのである