#12
睡眠から目を覚めるとき、たまにではあるが人間は本能でいつもより睡眠をとっていることが分かると思う。
あの時の焦燥からの行動はなんでもできるといっても過言ではないだろう。
だが、大概の人間は物事をあきらめて二度寝をするしなんならそのまま昼間まで寝てしまうことも多いだろう。
「……やっべ」
ハジメは寝過ごした。
とりあえずリビングに戻り時間を確認する……夜の12時を少しだけ回っており腹もすかしていたため冷蔵庫を開けるが何も入っていない……というよりは賞味期限を大半が切らしていたのである。
ここ数日、自宅にマンションが出来てからというもの自炊をほぼしてきていなかったせいもあるだろうが、そもそもハジメは料理が苦手である。
肉を焼けば生焼けになる、再度フライパンで焼くのもめんどくさいためそのまま食すことが大半だがたまに腹を下す、いや生焼けの日は毎回おなかを下す。気の毒なくらいには。
とりあえずコンビニに昼飯を買いに、あとはトイレのロールが切れかけていたのを思い出しついでにそれも買いに行く。
……何か忘れているような、まぁいいだろう。
コンビニの目の前、しゃがみながら放心状態の少年が自分の方を見つめていた、というよりレジ袋の方に目をやっていた。
見た目はおおよそ十代後半ほどだろうか。
少年は俺の目線に気付いたのか一瞬で目をそらす。
ハジメもとにかく腹が減っていたので気にせず帰ろうとするが後ろの方からドがつくほどのおなかの音が聞こえてきた。
「...弁当たべる?」
ハジメから弁当を受け取った少年はすぐに弁当1つを平らげてしまった。よっぽどおなかがすいていたのだろう。
ハジメはまた追加で弁当をコンビニで買うために店の中に戻る、飲み物もついでに購入し少年へと渡した。
「すみません、ありがとうございます。」
「大丈夫大丈夫、顔色よくなったね。そんなに食べてなかったの?」
「はい、...どうして自分なんかのために?」
「まぁ気まぐれ?俺さ、人の笑顔が好きなんだよ。」
「笑顔ですか?」
「まあね、自分がした行動で相手が笑顔になるなら俺はそれで満足かな?
ほかの人が聞いたらエゴだとか偽善だとかいうかも知れないけど、俺は偽善に誇りを持ってる。」
そう言い終えるとハジメは立ち上がり帰ろうとする。
「あの!お礼がしたいのでお名前教えてもらってもいいですか?」
「小林ハジメ、漢数字の1でハジメ、別に自分にお礼しようとしなくていいよ、その気持ちを誰かに伝えてあげて」
そう言い残してハジメはそそくさと帰路につく。
「そういえばねぇちゃん大丈夫かな?ちょっと怖いし電話しとくか」
いまだに自宅以外でのダンジョン化はしていないものの、心配することに越したことはないので早速姉に電話する。
「もしもし、たちばなですが」
「あ、巴ちゃん?」
「あ!いちにぃ!どうしたの?」
「うん、ちょっとお母さんと変わってくれるかな、大事な話があるんだ」
「わかった!おかあさーん!!いちにぃからでんわー!」
電話越しでもわかる大きな声に思わず苦笑いが出る、確か六歳だっただろうか元気でよろしいことだ
「あ、久しぶり。うん、大丈夫何とか生活できてる。うん、義兄さんにもよろしくって伝えといて。それでさ、うん…あのさ、不審者とか大丈夫?最近物騒だからさクマとか大丈夫?
なら良かった、なんかあったら実家に戻ってきてもいいしさ、俺だけだと部屋が余って持て余してるからさ、うん……じゃ」
とりあえず問題なさそう、ということで4階層目に戻り香を焚いて将軍ゴブを呼ぶことにした。




