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煉獄記  作者: 空蝉ゆあん
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怒号は部屋中に響き渡り、独尊様を夢の中から揺り起こす。


『……うるさい、唯我』

『うるさいとはなんだ、独尊。女の所に上がって、いい身分だな』

『別にお前に関係ないだろう』

『黙れ』


相変わらず、私を抱きしめる手を緩める事はない、そのままの体勢で唯我様をヒラリとかわしていく。言葉の刃にも近い、彼の感情を……。


「落ち着きましょう、きちんとお話をすれば……』


諭すように提案すると、唯我様は黙れの一点張り、独尊様は私を守るように、より強く抱きしめる。まるで唯我様には渡さないという意思のように。


『いつまで抱きしめている、その手を離せ』

『嫌だね』

『なんだと』


逆なでるような態度にハラハラしていると、それを察知したように、耳元に独尊様の声が降りかかる。


『大丈夫だから安心しろ』


優しい口調と、耳元にかかる息に頬が赤くなり、硬直してしまう。


(私はどうすればいいのでしょうか)


心の声は身体の中で消化され、いつの間にか消えて行った。




体と精神は繋がっていて、心の乱れは鍛錬にまで影響を及ぼす。話の通じない唯我様は痺れを切らしたように、私の部屋から出ていき、二人取り残された。まだ眠たい独尊様は、少しの間、私の身体に身を寄せ、眠りに堕ちていった。


「もう起きませんと、鍛錬に遅れてしまいますよ?」

『……ああ』


クスッと、笑っていると子供の頃をふと思い出した。


(昔から変わりませんね、本当に可愛らしいのですから)


先ほどまでの緊迫した空気は薄れて、穏やかさだけが(たたず)んでいた。


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