表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳と現実のクロム  作者: 綾瀬 凪
4/4

四話「ドレッドノート」

もさもさしたMOBやらを狩り続けてはや数時間。


クロム:アルカ・フォシル Lv120

スゥ:エインセル Lv118

クレアリム:エア・イグレット Lv128

ナノン:セイクリッド・フリューゲル Lv132


誰でも分かる位の成長っぷり。

あの後、レアドロップの蜘蛛の触手が有り余るほど蜘蛛を倒したり。

魔法連打する人間型の変な植物の群れを倒したり。


スゥに燃やされたり。


スゥに凍らされたり。


スゥに爆散されたり。


いや、違うんだよスゥは悪くないんだ。

EFOの時はMOBロックシステムって言うスキル対象が複数選択できるスキルの場合、マウスを左クリックカチカチするだけで狙いたい敵を狙えた訳で。

突如、シュミレーションMMOになってしまったからターゲッティングするシステムが分からなくて全部俺と奈菜さんに当たるんだよね。


そもそも、MOBロックシステムあるのかな・・・


まぁ、その甲斐と言うか弊害と言うか…もあってPTメンバーの攻撃で死んでもデスペナは付かないでリスポーンできるよ!やったね!

まず、PTメンバーに攻撃当たる時点でおかしいんだけどね!

クレアリム「なんとか、着いたわね…」

ナノン「長かったねー」


本当に長かった…というのも現時刻、AM3:16

そうです大体5時間歩きながら狩りをしてました。


スゥ「ねむぃ…」

スゥが、眠そうに目をくしくしっとする。

ゲームとはいえ、ずっと狩りしながら歩いてたんだしそりゃ疲れるよな…

ともあれ、何とか町を見つけた訳で宿屋なり食堂なりあるだろう。


クロム「とりあえず宿屋探しましょう」

クレアリム「そうね、宿屋で今日はログアウトしましょ」

ナノン「だね~けど夜だけの接続って言ってたけどログアウトできるのかな」


確かに。


スゥ「ねむぅぃぃ…」

いかん、ましろがもうダメだ。

クロム「ほら、おぶってやるから」

スゥ「ん…」

言われるがままに、へにゃっと俺の背中に身体を預ける。

ほのかに当たるスゥの胸が…ゲフンゲフン。

まぁ考えてても仕方ない。


クロム「何にせよ、スゥがもうこんなんですし宿屋行きましょ」

クレアリム「そうね」

背負うスゥの感触を気持ちよく感じながら宿屋を探す。



††††††††††



宿屋を探して、約10分…うん。

ヤドヤガミツカラナーイィィィ。

言うほど大きな町でも無いし、もう町全体を探索したんだけどさ…


クロム「ナゼナインダァァァァ」

気が付けば心の叫びが口に出てた。


スゥ「んっ…にゃむ」

そんな中、すやすやと俺の背中で寝てるスゥ。

どうやらサリシクイネ側で寝ても強制ログアウトはさせられないらしい。


ナノン「この町には無いのかもしれないねー…」

MMOで稀によくある、不親切極まりない町だ。

宿屋だけならまだしも…露店商とかも無いんだよ。


クロム「どうしましょうか…」

正直、言って俺も疲れた。

かと言ってこの場で皆でログアウトして…万一、次に個々でログインしたらどんな危険が付きまとうやら。


考えたくもない。


「そこの、お兄さん達」


!?


何か知らないおじさんが声かけて来た。


「良い場所あるけど紹介しようか?」

悲報:俺達、明らか怪しいおじさまに危ない勧誘される。

黒いフード付きのローブとか、あれだネクロマンサーとかそういう…

あれ、やばいんじゃない?魂持ってかれるんじゃない?

某、おまえの魂いただくよ!みたいな、そんな優しそうには見えないね。


クロム「えっと、間に合ってます」

「おや、お兄さん達は宿屋探してるんじゃないのかね?

「え?」

「この町には宿屋が1つしか無くてね」

「場所も場所だから、教えてやろうと思ったんだが」

「その背中の子も早く横にしてあげたいだろう」

あれ、意外と良い人なのかもしれないぞこの人。

そういうと、おじさんは有無を言わさずそのまま背を向け歩き出す。


「ついておいで」

ナノン「とうくん、知らない人に付いていくのは危ないよ」

こっそりと奈菜さんが耳元で呟く。

うん、小学生の頃に凄い言われた奴。


クロム「けど、宿屋の場所分からないし…」

クレアリム「あたしも早く休みたいし、とりあえずついてったら?」

さすがの紗癒さんも疲れてるらしく、面倒くさそうに促すような言葉を掛けられた。


スゥ「にゃ…ぅ」

ナノン「んー…気が進まないけど、スゥちゃんの為にもついていこっか」

ため息交じりに奈菜さんが言う。




††††††††††



そんなこんなで謎のおじさんに連れ込まれた、とある町陰の路地。

あきらかーに、ダークサイドにいますって感じのオーラの人がいっぱいいるんだけどさ。


クロム「あの、結構遠いんですか?」

ゆっくり歩く路地で周りからの金目の奴が来たぞ、みたいな視線が怖い。


「あぁもうすぐさ」

「そういえば、あんたら金はちゃんと持ってるかい」

クロム「少しならありますけど」

「そうかいそうかい、なら大丈夫そうだ」

クロム「そういえば宿屋ってこの町だといくらくらいなんです?」


「大体30位だな」

おぉ、30kなら普通の宿屋と同じ位だな。


クロム「ふむふむ、意外と安いんですね」

いやこういう路地に連れてこられるって事はさ、大体ぼったくり多そうじゃん。

しかも今言うほどそんなに金ないし。


「そうだろう?」

「騙されない方がいいよ」

突如、声が遮ると、俺たちの行く手を路地隅にいた明らかにこの通りに似つかわしくない1人の少年が遮った。


「なんだ、お前」

「いや、見ちゃいられないと思ってね」

「お兄さん達が、行こうとしてる宿屋って1人30Mだよ」

クロム「ふぁっ」

デスヨネー何かそんな気はしてたよ。


「ちなみに、表にもちゃんと普通価格の宿屋あるし」

「おいチビ、俺の客商売の邪魔すんじゃねぇよ」

否、突如として少年の周囲に似たような黒ローブを着た術師?が現れた。


「何?やるの?」

「別に、ここでなら文句言われないだろうしやるなら買うけど?」

そういうと、少年は腰の鞄からナイフを両手に構える。

「一瞬で終わらせてあげるよ」

「調子に乗るなよチビ」

紫色の魔方陣と共に詠唱を始める魔術師達。

否、視界から一瞬少年の姿が消えると、術師達の足元へ出現。


「な…っ!?」

「-命鐐-《めいりょう》」

唖然とした術師達の周囲の空間が歪むと、術師達の全身が掻き切れる。

「がぁぁぁはっ…」

「はい、おしまい」

「お兄さん達、表に連れてってあげるからついてきなよ」

「舐めんじゃねぇ!」

倒れこんでいた血まみれの魔術師の杖から魔法が放たれる。


「っ!」

「ははははは!死ねよ!」

だが魔法は、当たる直前でスッと消え去った。

「な!?」

「……」

突如、魔法を消えると共に少年と俺達との間に1人の男が現れた。


刹那。


「うううぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

突如、魔法を放った術師は大量のデバフマークが付きそのまま死亡した。


「まったく、遅いよ」

「すまん」


クロム「えっと…」

「あ、ごめん」

「一応ボクも、この人も味方だから安心してよ」


黒の短髪にパンクロックシャツに短パンの少年。

銀の長髪に着物、袴、羽織・・・そして長身な太刀を携える侍男。

何だよ!この異端ペア!

安心の、あの字すら感じないんですがこれ如何に。


「さて、とりあえずここは危ないし表に出ようか」

言い回しが殺されるフラグびんびんなんだけど大丈夫だよね。


クロム「お、お願いします」



††††††††††



裏路地から出て、数分。

少年と銀髪侍によって何事も無く表通りの宿屋に辿り着いた。

何か凄く色んな所、巡った気がする…観光ツアー何てレベルじゃないよ。

「ほら、ここだよ」

クロム「あ、ありがとう」

「いいよ、どうせ通りかかっただけだし」

「今度は、あんな勧誘についてったらダメだよ」


クロム「は、はい…」

何かお菓子上げるからおいでーって定番の勧誘に捕まった感じで物凄く恥ずかしい。

「あ、そういえばさお兄さん達って」

「プレイヤーだよね?」


!?


「いや、驚かせるつもりは無かったんだけどね」

「この世界にいるNPCは大体テンプレの動きしかしないからさ」

クロム「えっと、って事は・・・お2人は」

「うん、僕達も元EFOプレイヤーだよ」


あれ?けど、サリシクイネに招待されたのって7人だった気が・・・


「何か腑に落ちなそうな顔してるね」

クロム「あ、いや俺たちがここに来たとき7人だったんですけどその中にお2人はいなかったなって」

「あー今回は7人増えたんだ」


今回は…?


「いやね、このサリシクイネは定期的にEFOから人を引っこ抜いてるらしくてね」

「だから最近プレイヤーが増えて来たなーって話してたんだよね」

クロム「そうなんですね」

「あぁっとごめん、自己紹介してなかったね」

「ボクの名前はシオン、彼はうただよ」

「……」

その長身から睨みとも、見下してるとも取れる様な眼差しを向けられる。


クロム「あ、俺はクロムです背中に寝てるのはスゥ」

クレアリム「…クレアリムよ」

ナノン「ナノンです」

シオン「よろしくね」


シオンが言い終えると、嘔の姿が消えた。


シオン「あぁ彼は気にしないで、悪気はないんだよ」

シオン「ちょっと無口なんだよね」

ちょっと…かなぁ…?

何か哘さんとも違う、殺意を感じました。まる。

シオン「なんにせよ4人とも疲れてるみたいだし今日は宿屋で休んだ方が良いよ」

クロム「あ、色々ありがとう」


シオン「いや、こちらこそ」

クロム「え?」

シオン「いや、何でもないよ」

シオン「嘔を追わないといけないからボクもこの辺で失礼するね」

シオン「それじゃね、クロム君達もこの先の敵も強いから気を付けてね」

意味深な言葉を残して彼の姿も消えた。


クレアリム「…」

無言のまま、紗癒さんは宿屋に消えた。


クロム「紗癒さん?」

ナノン「ねぇ、とうくん」

クロム「はい?」

ナノン「スゥちゃんをベッドに寝かせたら2人で話せる?」

唐突なお誘いが来た。


クロム「えっと大丈夫ですけど」

ナノン「それじゃ、少ししたら宿屋の2階のバルコニーに来てね」

そう残して、奈菜さんも消える。

何だろう…何か凄い嫌な予感と言うか…変な感じ。

けど行かないわけにはいかないし。


††††††††††


個室のベッドにスゥを寝かせた後の事。

寝かせた後、紗癒さんにも声かけたんだけど…

「今日は疲れたので、ログアウトします」

と言う短文の書置きだけを残して紗癒さんはいなくなっていた。

謎の不安を浮かべながらも、呼び出されたバルコニーに向かう。


クロム「すみません、お待たせしました」

ナノン「ううん、大丈夫だよ」

バルコニーへ出ると奈菜さんが待っていた。


クロム「どうしたんですか?」

ナノン「とうくん、さっきの2人組の事なんだけどね」

さっきの2人、シオンと嘔の事だろうか。


クロム「助けてくれた2人の事ですか?」

ナノン「うん」

ナノン「どう思う?」

クロム「どう思うって言われても…」

初対面だし、何も思うとこ何てないんだけど…

ナノン「あの2人、多分PKだよ」

クロム「え?」

PKとはプレイヤーキラーなどと呼び、MMOなどでプレイヤーを殺すことで生計や物資を確保する奴らの事だ。


クロム「なにを…」

ナノン「私も長くMMOしてるから何となくだけど分かるの」

ナノン「人を獲物として見てる感じがね」

クロム「ちょっと待ってください!彼らが仮にPKだったとしたらあの場で狙われてたはずじゃないですか!」

あんな裏路地に4人も獲物がいたんだ、狙わないはずがない。


ナノン「4人だったからって言うのは考えられない?」

クロム「どういう事ですか?」

ナノン「プレイヤーが4人だったから確実性が無いから狙わなかった」

ナノン「NPCはテンプレの動きしかしないから」

ナノン「それに彼は言ってたでしょう…今回は7人も増えたんだ?って」

クロム「あっ…」

ナノン「私達プレイヤーは自己の判断で動くから」

ナノン「たとえ、とうくんがスゥちゃんを背負ってたとしてもね」

彼らは意図的に俺らを逃がした?


クロム「つまり…」

ナノン「私達は彼らにマークされた可能性があるって事だね」


・・・・・・


ナノン「多分だけど、あの勧誘してきた術師達の行動も計算してたんだと思う」

クロム「つまり街に入った時から…マークされていた…?」

ナノン「そう言う事だね」

クロム「けど何でそんな…」

ナノン「理由は分からない…けど」

神妙な顔つきで奈菜さんは、俺の方を見ると両肩を掴む。

ナノン「今の話は憶測だけど、ただ理解しておいて欲しいの」

ナノン「私達の7人以外にもここにはプレイヤーがいるって言う事」

ナノン「彼らがPKかもしれないということ」

クロム「すみません…」

ナノン「あ、いや…違うの!とうくんが悪いわけじゃ無くって」

クロム「いや、俺がろくに考えて判断しなかったからです…」

俺は深く、奈菜さんに頭を下げる。

それに対し、奈菜さんはうーんっと悩んだ素振りをする。

ナノン「多分、紗癒ちゃんも私と同じ事を思ったんじゃないかな」

紗癒さんは、だから無言で落ちたのかな…


ナノン「だから今後は、皆で時間を合わせてログインした方が良いと思うんだ」

ナノン「もし私がPKだったら、1人の時を狙うだろうし」

確かに、1人を仕留めるくらい慣れてるPKなら容易い。

ましてや、この世界に慣れてない俺達だ。

クロム「そうですね」

ナノン「以上っお姉さんからの真面目な話は終わりっ」


ナノン「年下とは言え、お姉さんは君に期待してるんだぞっと」



††††††††††



休日の早朝は、快適だ。

だって焦らないで飯を食ったりテレビ見てられるじゃん?


そう本日は…<<<日曜日>>>。

日曜日の7時30分!。

sundayですよsundey!祝日の次に嬉しい曜日。


毎日が日曜日ならいいのにね。


「そういえば、今日はレイヴスレイヤーズの最終話やるんだっけな」

少しグロテスクなシーンもあるが、廃園を舞台としたゾンビサバイバルアニメだ。


「えっと、何チャンネルだったかなぁ」

ピッピッとチャンネルを変えて行く。

「続いてのニュースをお伝え致します」

「ん?」


「本日、早朝7時20分 明星区にお住いの白鷺 紗癒さんが自宅で意識を失っているのが発見されました」


「えっ」

「白鷺さんの身体に外傷は無く、警察では原因を究明と共に事件の可能性を探っています」


ピリリリリリ。


唐突に電話が鳴った。

「もしもし!?えっと…奈菜お姉さんだけど!」

電話でもお姉さんって自分で言ってる。


「は、はい」

「とうくんニュース見た?!」

どうやら奈菜さんもニュースを見ていたようだ。


「はい、えっとこれはどういう…」

「詳しい話は、直接したいから!すぐに明星駅に集合して!スゥちゃんも呼んで!」

そういうと、プツッと電話が切られた。


「奈菜さん!」

支度を終え、ましろと共に着くと、改札に奈菜さんがいた。


「2人とも早く!」

そういうと切符を渡される。


「えっとどこ行くんですか?」

「いいから!」


言われるがままに俺たちは電車に乗って2つ隣の神想しんそう駅へと向かった。



††††††††††



そこから、全力で走って5分。

俺達は病院にいた。

神想病院しんそうびょういん

全く来たことも無い病院だが規模だけで言えば高層マンション1つ分位にでかい。


「すみません、北杜 奈菜と言います」

「はい、ご用件は何でしょうか?」

引っ張って来た奈菜さんが受付で会話をしている。

どうやらここは紗癒さんが入院してる病院のようだ。


「運ばれてきた、白鷺 紗癒さんと…」

「申し訳ありません、白鷺様は面会謝絶ですので…」

面会謝絶!?そんなに酷いのか…


「あ、いえ本日は白鷺さんのご両親はお見えになってますか?」

「はい、白鷺様のご家族の方でしたら4階にいらっしゃると思います」

「わかりました、ありがとうございます」


会話を終えると急ぎ足で奈菜さんに引かれ4階へ向かった。



††††††††††



「あの…奈菜さんこれはどういう…」

「しっ!」

明かされないまま4階へ着くと、すぐ目の前のベンチでスーツ姿の男性と華やかな薄紅色のドレスを着た女性が項垂れていた。


「あのすみません、白鷺 紗癒さんのご両親の方でしょうか」

「そうだが…君たちは?」

「私、紗癒さんの友達の北杜 奈菜と言います」

「叶植 刀です」

「…白戸 ましろです」

何かを感じるのか、ましろが俺にしがみ付いてくる。


「そうか…紗癒の友達か」

悲しそうに、紗癒さんのお父さんは言った。


「残念ながら、紗癒は面会謝絶らしくてね」

「家族の我々でも合わせてもらえないんだ」

「紗癒さんに何があったんですか?」

「分からない…今朝、私が朝食に呼びに行ったら部屋で倒れていたんだ」

外傷は無いってテレビでは言ってたしな…


「何か思い当たる事とか無いですか?」

「っ…どうしてそんな事聞くんだい?」

「いえ…ニュースで見て外傷も内傷も無いって言ってたので気になって…」

「思い当たる事か…」

うーん…っと深々に紗癒さんのお父さんは考え込む。

「…そういえば、いつもの事だが紗癒のパソコンが点いていたな」


パソコンが…


「何かゲームをやっていたようだったが…」


っ!


「やっぱり…」

「うん?」


「あ、いえ何でもないんです」

「もしご迷惑でなかったらなのですが、紗癒さんの部屋を見せて頂けませんか?」「な、奈菜さんそこまでは…」

「いいわよ」


え?


それまでずっと俯いていた紗癒さんのお母さんが声を上げた。


「貴方たちはあの子の為に、原因を探してくれてるのでしょう?」

「ごめんなさい、不躾ぶしつけな事言って」

「いいのよ、私たちにもどうにも出来ないもの」

「ねぇ、あなた少しでもあの子の…紗癒の為になるならこの子達にお願いしましょうよ」

「…そうだな」

少しの間を作りながらも、お父さんが返事をする。


「下に車がある、一緒に我が家に来てくれ」

「ありがとうございます」



††††††††††



午前8時半過ぎの事、転々と移動を繰り返しながらも紗癒さんの自宅へ着いた。


「うはー…でっか…」

あの上品な風貌から察せると思うけど。

案の定、豪邸でした!

薔薇のゲートに、対照的に美しく並ぶ噴水に数々の花々。

西洋風の純白の豪邸が横に広がっていた。


「着いたよ」

薔薇のゲートを超えると、大きな門が視界に入る。


そして…


「おかえりなさいませ、旦那様」

おかえりになりました、メイド様。

それを迎える、メイド達。

金持ちって羨ましい。


「我々は、自室にいるから何かあったら呼んでくれ」

「はい」


「娘の部屋は2階に上がって右の一番奥の部屋だ」

「頼んだ…」

そういうと少し悲しそうな顔を浮かべながら、紗癒さんのご両親は去って行った。


「廊下ひっろ」

奥行だけで何mあるんだろう。


「っ…」

スゥが先ほどと同じように、再びしがみ付いて来る」


「さっきからどうしたんだよ、ましろ」

「…なんでもない」

ふるふるっと首を横に振る。


「スゥちゃん…」

何か2人は俺には分からない事を知っている様だ。


「ここだね」

廊下の一番右奥の部屋。

紗癒と書かれた可愛らしい羽型の標識がドアにつけられていた。

そのままおそるおそる中へと入る。


「お邪魔します…」

室内は殊の外、紗癒さんのイメージとは思えない位に可愛い熊やペンギンなどのぬいぐるみが溢れていた。

その中でも一点、主張し輝いてる物があった。


「パソコン…」


紗癒さんのパソコンだ。

どうやら、サリシクイネのプレイヤーのゲーム内情報等は普通のMMOと同じくPC 画面に表示されているらしく画面にはプレイ中の紗癒さんのステータスなどが表示されていた。

その中でもPC画面の中心に表示されてるステータスがあった。

次のリスポーンまで4,300分。


!?


「なんだよこれ…」

再復活リスポーンまで約3日。


「…っ」

俺より察しが良い2人は既に分かっていた様に口を噤んだ。


「おかしいだろ…3日って…だってMOBに殺されても俺ら1分以内に復活したじゃん」

昨日の狩り中、誤ってデッドスパイダーの山にやられた際にプレイ中の俺にはリスポーンまで1分と表示されそのまま復活できた。

サリシクイネの場合、ゲームプレイしてるプレイヤーは死亡すると復活時間のみ表示される。

ただそれだけ、表示されるだけで何も出来ないんだ。


「とうくん、これみて」

そういうとリスポーンアイコンから左上にあったクレアリムのHP、MP、バフ、デバフステータス表示を奈菜さんは指さした。



!?



「わかった…?」

「っ…」

そこには、MOBからでは絶対に入らないデバフの山が表示されていた。


「紗癒ちゃんはPKされたんだよ」

そう、EFOでも見た事あるデバフだそれも特殊なジョブのみが扱える。


「これって…ドレッドノートが使えるデバフですよね・・・?」

EFOの上位ジョブの一つにドレッドノートと言う職がある、主に太刀をメインとするがスキルが特殊で自身を対象にしたプレイヤーに膨大なデバフを与えて確殺するという暗殺職だ。


あまりにもスキルが強くPVPフィールドでも、その対応が出来る職として調整の後にセイクリッド・フリューゲルが作られた。


「つい最近、ドレッドノートらしきプレイヤー見かけなかった…?」

「…まさか!?」


そう【うた】だ。


彼は全貌を見せない様にしていたが、確かに太刀なものを背に携えていた。

昨晩、奈菜さんが言ってた事はあっていたんだ。


「それじゃ昨日襲わなかったのは…」

「確証は無いけど…多分、私がセイクリッド・フリューゲルだったからなのかも

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ